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■変化球を低く、遠くへ

 セ・リーグホームランダービーのトップを快走するゲレーロ(中日)は、典型的なフライボールヒッターだ。ゲレーロの打球がフライ性の打球となる割合は63.5%で、これはここ5年の規定打席到達者の中で最も高い数字となっている(表1)。「長打を打つためにはフライの打球を数多く打つのが合理的である」という発想から、主にMLBでフライ指向の打者が増加傾向にある事象を指して“フライボールレボリューション”ということばも誕生しているが、ゲレーロもまたこの“革命”のサンプルとして格好の存在といえる。

柳田悠岐の“フライボールレボリューション”

 フライ割合の高さだけではなく、ゲレーロのバッティングにはもうひとつ大きな特徴がある。とにかく、低めに強い。上に示した本塁打の配球チャートはセンター方向から見たゾーン別の本塁打を表している(中心の9分割はストライクゾーン)。同じ外国人スラッガーのビシエド(中日)、ロペス(DeNA)と比較すると分かりやすいが、ゲレーロの場合は低めゾーンに記号が集中している。

 低めの本塁打は17本で、その割合は63.0%(表2)。リーグ平均は30.0%とその半分ほどだから、ゲレーロの本塁打傾向はかなり特殊であること分かる。低めへの投球はピッチングの基本とされているが、ゲレーロに対してそのまま実践すると強烈なアッパースイングの餌食となってしまう可能性がある。

 もしゲレーロに対して低めで勝負するのなら、はっきりとボールゾーンに外すのが賢明だ。特に三振を狙うのであればアウトローに沈むスライダーなどの曲がる系、ワンバウンドするようなチェンジアップ、フォークなどの落ちる系の球種であれば打ち損じてくれるかもしれない。さすがのゲレーロでも、バットの届かないようなボールをスタンドインさせるのは難しい。少しでもストライクゾーンをかすめると一発の可能性が跳ね上がるため、慎重に低く、遠くへ変化球を投じる必要がある。

■速球を高く、近くに

 低めの変化球とは異なるアプローチでゲレーロを攻めている球団もある。高め、内角のボールゾーンに速球を多く投じているDeNAと阪神だ。ゲレーロはストライクゾーンを含めた高めの速球に対して4本塁打を放っているが、凡打や三振もそれなりに多く、精度としては低めのそれに劣る。すくいあげるようなアッパースイングのため、ベルト付近の高さや身体に近いボールへの対処が難しいのだろう。

 結果としてDeNA、阪神はここまでゲレーロを抑えることに成功している(表5)。被本塁打はDeNAが1本、阪神は2本にとどめ、wOBAでも3割を切る水準に封じている。リーグ最多本塁打のパワーヒッターをリーグの平均打者(wOBA.328、投手除く)以下に抑えているのだから、バッテリーの勝利という評価がふさわしい。

 DeNAバッテリーのゲレーロに対する期間別の配球チャートを見ると、攻め方をより先鋭化させている様を読み取ることができる。4月は比較的バランスよく投げ分け、5月はボールゾーンへの投球を増やすなど配球を微妙に変えて探りを入れている。そして7月に入ってからは、インハイや身体に近いコースへの速球と、アウトローへの変化球に攻め手を絞りつつある。7月7日のDeNA先発・ウィーランドとゲレーロの対戦では、初球から戸柱恭孝が中腰でミットを構え、6球連続で高めにストレートを続けて空振り三振に仕留めるシーンもあった。

 巷間に流布するフライボールレボリューションが時間をかけて球界に浸透していくと、若い世代を中心にアッパースイングでフライを狙う打者が増えることも考えられる。そのすべての打者がゲレーロと同じスイング傾向、打球傾向を示すとは限らないが、この高め・近めに強いボールを投げ込む配球は、アッパースイング指向の打者に対して一定の効果を上げると考えられる。一方でこれらのコースを正確に突くのは難しく、抜けて死球、引っ掛けて甘いコースへ失投のリスクもある。事実、ゲレーロはここまで両リーグ最多の12死球を受けている“被害者”でもある。直近では7月26日のヤクルト戦で右手に死球を当てられ、翌日の試合で欠場を余儀なくされている。変化球を低めに集めるコントロールに加えて、高めや内角の際どいコースに速球を正確に投げ切るスキルも、次代の投手に求められることになりそうだ。

※データは2017年7月26日現在

文:データスタジアム株式会社 佐々木 浩哉