潔くグラウンドから去ったケーン。しかし、試合後には「つらい」と本音を漏らした。(C)Getty Images 現地10月28日、ラグビーワールドカップ・フランス大会の決勝が行なわれ、南アフリカが12-11でニュージーランドを撃破。大…

潔くグラウンドから去ったケーン。しかし、試合後には「つらい」と本音を漏らした。(C)Getty Images

 現地10月28日、ラグビーワールドカップ・フランス大会の決勝が行なわれ、南アフリカが12-11でニュージーランドを撃破。大会最多4度目の世界制覇を飾った。

 大接戦を制したアフリカの精鋭たちが連覇を達成した一戦に小さくない影響をもたらしたのは、29分にニュージーランド代表の主将サム・ケーンが披露した守備だ。

【画像】本当に退場か? ラグビーNZ主将のレッドカードシーン

 3-9とチームが6点を追っていたなかで、FLのケーンは南アフリカのジェシー・クリエルにタックルを炸裂。これが頭部付近へのチャージと判断されると、主審のウェイン・バーンズ氏はシンビン(10分間の一時的退場)を命じた。しかし、直後に専任の審判員が映像などで検証して判断する「バンカーシステム」の対象に。分析の結果、ケーンのタックルは頭部への危険なプレーと判断され、レッドカードに変更されたのだ。

 最終的に1点差にまでにじり寄ったオールブラックス(ラグビーニュージーランド代表の愛称)だったが、精神的支柱を失った影響は大きかった。

 試合後に「僕は一生引きずることになる」とケーンは肩を落とした。それだけの一人の退場が大きく響く接戦だった。ゆえに「もしも主将が退場していなければ――」と思わずにはいられないワンプレーであった。

 いわゆるタラレバはスポーツに付き物だが、31歳の闘将が見舞ったタックルは識者やメディアの間で議論の対象となっている。

 もっとも、近年のラグビー界では、肩から上への「ハイタックル」を厳しく取り締まっている。退場処分に変わったのには、そうした背景もある。だが、試合を通して3枚のイエローカードと1枚のレッドカードを提示したバーンズ氏のレフェリングに疑問を呈する声もある。

 元イングランド代表のマーティン・ジョンソン氏は英公共放送『BBC』で「確かにタックルの位置は高いが、私はレッドに値しないと思う。こういうプレーは南アフリカもやっていたし、起こり得ることだ」と指摘。また、元オールブラックスのイスラエル・ダッグ氏は、英衛星放送『Sky Sports』で、次のように解説した。

「これは選手たちにとって目玉の大イベントだ。しかし、選手たちから栄光と輝きを奪い去ろうとする人々のせいで影が薄くなってしまった感じがするよ。正直言って、うんざりしているよ。彼らは選手たちの心に不安を与えているからね。ケーンのタックルに悪意はなかったし、クリエルも無事だったじゃないか」

 試合展開に影響を与えた退場劇。その波紋はしばらく続きそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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