ラグビー日本代表は2勝2敗で残念ながら予選プール敗退に終わったが、フランスで開催されたラグビーワールドカップでは若き選手たちの躍動するプレーも多く見ることができた。 2020年に早稲田大を卒業したSH齋藤直人は中軸のひとりとして存在感を示…

 ラグビー日本代表は2勝2敗で残念ながら予選プール敗退に終わったが、フランスで開催されたラグビーワールドカップでは若き選手たちの躍動するプレーも多く見ることができた。

 2020年に早稲田大を卒業したSH齋藤直人は中軸のひとりとして存在感を示し、社会人2~3年目のCTB長田智希(早稲田大卒)やWTBシオサイア・フィフィタ(天理大卒)も大きな経験を掴んで帰ってきた。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)


明治大1年時からレギュラーを張る廣瀬雄也

 photo by Saito Kenji

 現在は代表歴のない大学生でも、今後の活躍次第では桜のジャージーを身にまとって2027年ワールドカップに出場する可能性は十分にある。そこで今回は、4年後に間に合いそうな「未来の日本代表」たちを大学ラグビー界からピックアップしてみた。

 まず、遠い未来ではなく日本代表の次なる「12番」を背負いそうなのは、今年創部100周年を迎える明治大でキャプテンを務めるCTB廣瀬雄也(4年)だ。

 父はサニックスの元ラグビー選手。福岡県宗像市出身で小学1年生からラグビーを始め、東福岡を経て明治大に進学。高校時代からパスやランに長けていたが、田中澄憲監督(現・東京サントリーサンゴリアス監督)のもとでタックルを強化し、大学1年時からレギュラーの座を確保した。

 大学入学時は87kgだった体重も現在95kgまで増やし、身長179cmの上背もあって見事な体躯となった。将来のリーグワンでのプレーを見据えて100kgまで増やす予定だという。将来の目標は「(日本代表の)桜のジャージーを着たい。同じポジションに自分よりうまい選手や、評価されている選手がいるのは嫌」と貪欲な姿勢を貫いている。

 今季は創部100周年を迎えている明治大をキャプテンとして優勝に導けるか。廣瀬は10番でのプレーも可能なスキルを擁する選手だが、個人的にはフィジカルも併せ持つ12番として大きく飛躍してほしい。

【先輩・福岡堅樹に憧れて五輪もW杯も目指す】

 次に紹介したい選手は、3連覇を目指す帝京大でキャプテンを務めるHO江良颯(はやて/4年)。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)もその能力を認めていた若手のひとりだ。

 父も兄も大阪桐蔭出身という江良は、ワールドカップに4度出場したHO堀江翔太に憧れて、高校時代にBKからFWに転向。2年時はPRとして同校初の花園優勝に大きく寄与し、高校3年時からHOとしてポジションを確立した。

 身長170cm、体重106kgと、HOとしては決して大きな体躯ではない。しかしながら、身のこなし、スクラムワーク、ラインアウト、さらにはリーダーシップに長けており、常に考えてプレーするクレバーさを併せ持つ。

 大学1年時から2番を背負い続けて、帝京大の力強いセットプレーを支えてきた。江良は「大学生のなかで敵がいない『圧倒的な2番』になる。次のステージを見据えて、考えやスキルをいろいろ身につけていきたい」と将来の日本代表を視野に入れて語る。

 前監督の岩出雅之氏(現・帝京大スポーツ局局長)からは「グラウンドに立ち続けろ。仲間を絶対に裏切るな」と言われ続けてきた。その言葉を胸に、江良はキャプテンとして3連覇を達成し、次のステージに進むことができるか。

 3人目は、昨季の対抗戦で5位ながら大学選手権でベスト4に進んだ筑波大のキャプテン谷山隼大(はやた/4年)だ。身長184cm、体重95kgで、今季はチーム事情でNo.8を務めているが、CTBやWTBでもプレーできるアスリート能力の高い選手である。

 谷山は4人きょうだいの長男で、父はもちろん姉、妹、伯父、従兄弟もラグビーを経験している、福岡では知られたラグビー一家に育った。ラグビースクールの先輩で憧れていた元日本代表WTB福岡堅樹さんの母校・福岡高に進学。全国の舞台に立つことはできなかったが、国体では東福岡の選手に交じって優勝を経験し、FLとして高校日本代表に選出された経歴を持つ。

 一般入試では早稲田大に合格できなかったが、ラグビーと陸上の能力を生かして筑波大・体育専門学群に合格。50メートルを6秒3で走り、立ち幅跳びでは290cmを記録している。

【史上最高身長212cmを誇る南アフリカ出身の21歳】

 今季はNo.8でプレーしているが、将来はフットワークやハイボールキャッチが活きるBKに戻る予定とのこと。「(日本代表として)両方に出場したい!」と、憧れの先輩・福岡堅樹氏のように7人制で夏季オリンピック、15人制でワールドカップ出場を目標に掲げる。

「ハイパント(キャッチ)は大学で1番になる。接点でガツガツと行って、誰よりも体を張る選手になりたい!」と語る谷山は、プレーで筑波大を引っ張る。

 最後に紹介する4人目は、身長212cm、体重130kgを誇る南アフリカ出身の東洋大LOジュアン・ウーストハイゼン(2年)だ。

 日本ラグビーに登録された選手のなかで、212cmはおそらく史上最高身長。ワールドカップに出場している南アフリカ代表やニュージーランド代表など、世界の強豪プレーヤーと比べても一番高い。

 ウーストハイゼンは来日する前、強豪ブルズのアカデミーに所属していた。しかし、高校3年時にプロチームとの契約がうまくまとまらず、「海外でラグビーと勉強がしたかった」と代理人が紹介してくれたのが、日本の東洋大だったという。

 大学では健康スポーツ科学部でスポーツサイエンスを専攻。うどんや唐揚げといった日本食もお気に入りになるなど、すっかり日本に馴染んでいる。ただ、大学の寮のベッドには高身長で入りきらなかったため、大きなマットレスの上で寝ているという。

「身長はもう止まりました(苦笑)。日本のラグビーはスピードがありますし、フィジカルも強い。生活はだいぶ慣れました。ただ、まだ言葉が話せないので、日本語の勉強をしています」

 ウーストハイゼンは昨季オフ、東洋大と提携している埼玉パナソニックワイルドナイツの練習に参加した。所属する南アフリカ代表LOルード・デヤハーの研鑽を受けたことで、ラインアウトはもちろんのこと、タックルやボールキャリーの技術も向上したという。

 外国人選手は日本で5年間プレー(1年のうち10カ月の居住が必要)すれば、日本代表としてプレーできる。2027年大会には間に合う計算である。

【日本代表の新ヘッドコーチの目に留まるのは?】

 将来について聞くと、ウーストハイゼンは「できれば日本でプロのラグビー選手になりたい。ただ、南アフリカのチームから声がかかったら帰りたいという気持ちもあるので、非常に悩みます。まずは日本で4年間勉強するので、今の時点ではわからない」と明言を避けた。

 身長212cmの選手をリーグワンの強豪チームが放っておくはずはないだろう。新しく日本代表のHCになる指揮官も、ウーストハイゼンが代表資格を得ればピックアップするはずだ。

 今回紹介した4人以外にも、SO/CTB伊藤大祐(早稲田大4年)、HO佐藤健次(早稲田大3年)、FL青木恵斗(帝京大3年)、PRヴェア・タモエフォラウ(京都産業大4年/ニュージーランド出身)、No.8シオネ・ポルテレ(京都産業大2年/トンガ出身)など、ポテンシャルの高い選手は多い。

 ワールドカップを終えたあと、日本では11月から大学ラグビーがシーズン本番を迎えて盛り上がっていく。若きラガーマンのプレーをいち早くチェックし、2027年の活躍に思いを馳せて楽しんでほしい。