女子ゴルフツアー第34戦「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」は27日、埼玉県の武蔵丘ゴルフコース(6,650ヤード、パー72)で開幕する。昨年大会は金田久美子が11年189日ぶりというツアー史上最長ブランクで優勝。2021年大会…

女子ゴルフツアー第34戦「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」は27日、埼玉県の武蔵丘ゴルフコース(6,650ヤード、パー72)で開幕する。昨年大会は金田久美子が11年189日ぶりというツアー史上最長ブランクで優勝。2021年大会は渋野日向子がぺ・ソンウとプレーオフの末、優勝した。

今年、最も熱いプレーを披露するのは誰か。先週のマスターズGCレディースで優勝した菅沼菜々や、今季初優勝から一気に4勝をあげ、好調を維持している櫻井心那も優勝候補にあがるが、日本女子オープンで復活優勝をとげた原英莉花も十分に優勝を狙える。

原は過去5勝の内4勝が秋の大会。夏以降、調子が上がる傾向にある。昨季もシーズン中盤以降調子を上げてきている。8月の北海道meijiカップまでは不調で、19戦して8回予選落ち。トップ10はたった1回だった。だが、北海道meijiカップ翌週のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントから調子を上げ、14戦して予選落ち無し。そして、トップ10に6回入るなど、11月下旬の最終戦ツアーチャンピオンシップリコーカップまで安定感あるプレーを見せた。

シーズンの終盤に強い原には、今季の残り大きな期待が持てる。

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原英莉花の優勝トーナメント

■コースとの相性良し

原は武蔵丘GCと好相性。三菱電機レディスには、プロデビュー後毎年出場し、毎回安定して上位に入っている。

13位タイ(2019年)、10位タイ(20年)、8位タイ(21年)、11位タイ(22年)。トップ10に2度入っているだけでなく、過去4年で最も下位に沈んだ年でも13位タイに入っているところに相性の良さが表れている。

同大会初出場は2018年大会。ここでは41位タイと下位だったが、初日は4位タイ。初出場の大会での好発進も好相性の表れと見て良いだろう。

原英莉花、三菱電機レディス成績

■ショット関連のスタッツが国内トップの水準

原の強みは、抜群のショット力。迫力あるスイングから繰り出されるショットは、飛距離だけでなく高い精度も誇る。今季現時点では規定ラウンド数不足のため、ランキングされていないが、ショット関連のスタッツは高水準だ。

ドライビングディスタンスは254.30ヤード。これは8位相当の記録。

さらに、飛距離を出しながら、方向の乱れを抑えられている。フェアウェイキープ率は66.8464%で41位相当。ドライビングディスタンストップ10の選手でフェアウェイキープ率トップ50に入っているのは原のみだ。

よって、ドライビングディスタンス順位とフェアウェイキープ率順位を足した値であるトータルドライビングも当然トップレベル。8位相当+41位相当=49ポイント相当。トップは51ポイントの稲見萌寧なので、原は1位相当(ポイントが低い方が上位)となる。

パーオン率は74.9476%。トップの岩井明愛が74.9559%。その差0.0083%で2位相当だ。ドライバーの精度の高さを見事にパーオン率につなげている。

ショットの総合力を示す、トータルドライビング順位とパーオン率順位を足した値であるボールストライキングは、1位相当+2位相当=3ポイント相当となる。1位の山下美夢有の9ポイントを大きく上回る1位相当だ。

また、原は今季シーズン中に、長く悩まされてきた腰痛解消のため手術に踏み切った。復帰は8月の北海道meijiカップ。

復帰してからこれまで9戦のパーオン率は77.381%(390/504)と、手術前よりもパーオン率を上げてきている。体の不安が解消されたことで、十分な量の練習をこなせているのだろう。これからより一層ショットのキレが増してくるのではないだろうか。

原英莉花の今季ショットスタッツ

■パットの成長次第で圧倒的な強さ獲得

ショットのスタッツは申し分ない原だが、パットは下位に沈んでいる。パーオンホールの平均パット数は1.8165で、45位相当。1ラウンド当たりの平均パット数は30.6038で、92位相当だ。

パーオン率が高ければ、ファーストパットが長くなりやすいため、パット数が増えやすいためやむを得ない面がある。だが、2020-21シーズンの稲見や昨シーズンの山下など、圧倒的な強さや安定感を見せていた選手は、ショットスタッツもパットスタッツも上位に入っていた。

原が更に上を目指すにはパットの成長は必須。今季の残りと、来季に向けての大きな課題だろう。

原は来季の米ツアー出場を目指して、米ツアー最終予選会の出場権を獲得するための予選会に出場した。しかしそこで圏内だったにも関わらず、まさかの‟スコア誤記で失格”となり来季米ツアーへ出場するには、TOTOジャパンクラシックでの優勝が必要になった。

これは「日本で圧倒的な強さを身にまとうべし」という導きかもしれない。

申し分ない実績がありながら、人気が高すぎるが故にいまだに‟人気先行”の感が否めない原。人気に追いつく強さを身につけていくのか、米国予選会からの帰国初戦、武蔵丘GCでのプレーに注目だ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。