長年話し合われてきたJリーグのシーズン制で、大きな動きがあるようだ。「秋春制」への移行が近づいている、と報じられている…

 長年話し合われてきたJリーグのシーズン制で、大きな動きがあるようだ。「秋春制」への移行が近づいている、と報じられている。白黒つかざるを得ない案件ではあるが、その内容について、もっと吟味するべきではないか。シーズン制で本当に考えるべき点を、サッカージャーナリスト・後藤健生が指摘する。

■「秋春制」への動き

 Jリーグが「秋春制」に移行する方向で動いているようだ。「次回ワールドカップの後の2026年夏から新シーズン制に以降する」とも報じられている。

「Jリーグの秋春制移行」に関しては、これまでも何度も検討されてきたが、冬場の試合開催が困難な北国(雪国)のクラブの反対が強く、移行は見送られてきた。いわば、Jリーグにとっての「長年の懸案」だった。

 日本サッカー協会会長の田嶋幸三会長も熱心な秋春制移行論者だとも伝えられており、このタイミングでいよいよ移行が実現しそうだ。

 結論的に言えば、僕は秋春制への移行には反対だ。そこで、最終決定がなされる前に論点を整理しておきたい。

 秋春制移行の最大のメリットは、ヨーロッパのシーズン制に合わせられることだ。世界のサッカーの主流であり、日本人選手も数多く活躍するヨーロッパ各国リーグでは、一部の北欧諸国を除いて伝統的に秋春制が採用されてきた。

■最大のメリット

 サッカーのルーツは中世のイングランドやスコットランドで行われていた、いわゆる「モッブ・フットボール」だ。村や町を2つのチームに分けてボールを相手陣内のゴールに持ち込むという「遊び」(または「祭り」)のこと。明確なルールもなく、かなり乱暴な遊びであり、ケガ人が出るのは当たり前。時には死亡事故も起きていた。

 この「モッブ・フットボール」が、後に学校の授業に取り入れられてルールが明文化され、さらに1863年12月にはロンドン市内のクラブが話し合って協会(ザ・フットボール・アソシエーション=FA)を結成し、統一ルールを制定した。それが、サッカー(協会式フットボール)の起源だった。

「モッブ・フットボール」はキリスト教の祭日に合わせて行われており、ほとんどの地域で2月前後の冬場に行われていた。

 そして、ルールが明文化されて近代スポーツになった後も、フットボールは(サッカーも、ラグビーも)冬のスポーツと見なされていた。19世紀のイングランドでは「夏はクリケット、冬はフットボール」というようにシーズン制は明確だった。

 その後、プロ化したこともあって(試合数を増やして収入を確保するために)シーズンは長期化されていった。こうして、ヨーロッパでは冬を中心とした秋春制が確立したのだ。

 ヨーロッパの冬は寒さが厳しく、夏は日本の夏よりずっと過ごしやすいので、ヨーロッパには「春秋制への移行」を主張する人もいるが、伝統が今でも守られているのである。

■選手移籍へのメリット

 そのヨーロッパのシーズン制に合わせることによって、日本人選手がJリーグクラブからヨーロッパのクラブに移籍するのが容易になる。それが、秋春制移行の最大のメリットだ。

 現在の春秋制だと、日本人選手はJリーグのシーズンの途中の夏場に移籍する場合が多く、主力選手が急に抜けることによってJリーグクラブはチーム編成上の問題を抱えることになる。逆に、Jリーグのシーズンオフである冬に移籍すると、ヨーロッパのシーズンの途中に新チームに加わることになるので、チーム戦術やヨーロッパでの生活に馴染む時間が得られない。しかも、1年半もの間、シーズンオフなしでプレーし続けなければならなくなるのだ。

 ヨーロッパのクラブに所属している選手がJリーグクラブに移籍する場合も、同様の問題が生じる。

 だから、Jリーグクラブとヨーロッパのクラブとの間の移籍ということを考えれば、秋春制移行に大きなメリットがあることは間違いない。

 海外移籍がより活発になれば日本代表の強化につながるし、Jリーグクラブが手にする移籍金も増えるはずだ。

 その他、ヨーロッパのシーズンと合わせておけば、国際大会への参加や日本代表のマッチメークも現在より容易になるだろう(FIFAの大会も、ヨーロッパのシーズンに合わせて開催されている)。

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