2023年シーズンも残り5戦となり、さらにここからアメリカ大陸での3週連続開催へと突入する。 前戦カタールGPで苦戦を強いられて無得点に終わり、コンストラクターズランキングを争うライバルたちとの差が開いてしまったアルファタウリにとっては、…

 2023年シーズンも残り5戦となり、さらにここからアメリカ大陸での3週連続開催へと突入する。

 前戦カタールGPで苦戦を強いられて無得点に終わり、コンストラクターズランキングを争うライバルたちとの差が開いてしまったアルファタウリにとっては、最下位脱出のための正念場だ。

 9位のハースとは7点差、8位のアルファロメオとは11点差、そして7位のウイリアムズは18点差と、その差は広がっている。中団勢にとって入賞のチャンスが極めて少ない今、1戦1戦を無駄にしている余裕はない。



ダニエル・リカルド(左)と笑顔で話す角田裕毅

 アルファタウリはこのアメリカGPに、今シーズン最後と言うべき大型アップデートを投入する。第11戦イギリスGP、第16戦シンガポールGPと、今シーズン4段階にわたって大幅改良を進めてきたフロアの4段階目──つまり最終形態だ。

 このアップデートには、角田裕毅も期待を寄せている。

「今週末はいくつかアップグレードを投入しますし、カタールGPよりはいいパフォーマンスを発揮できると思っています。決して小さくはない、大きな前進を期待しているアップグレードです。

 セットアップ面でもそうですし、マシン自体の改善という意味でも、まだやれることはあると思います。今年ではなく来年を待たなければならないこともありますし、コンスタントにトップ10で走れるようになるためには、もう少し前進が必要だと思います」

 サーキット特性としても、低速コーナーがひとつもなかったカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットとは違い、サーキット・オブ・ジ・アメリカズは100km/hを下回る低速コーナーがいくつもあり、アルファタウリにとっては合っているはずだ。

 その一方で、セクター1は鈴鹿やシルバーストンをイメージした高速コーナーが連続するセクションであり、鈴鹿でQ3進出を果たした角田としても期待が高まる。

【カタールはセットアップも完調と言えなかった】

 空気抵抗が大きいアルファタウリは、長いストレートでタイムロスを余儀なくされる分、コーナーで稼いで取り戻さなければならない。

「ここ数年、僕らはオースティンではとてもうまく戦えていますし、今週末も楽しみにしています。でも、どのくらいの競争力があるかを予想するのは難しいと思います。いくつかのコーナーはカタールよりもウチのクルマに合っていると思いますし、競争力は全体的にベターなはずです。

 セクター1は高速コーナーや高速シケインなど鈴鹿に似たところもあって、切り返しも多いですし、走っていてすごく楽しいです。ただし長いストレートもあって、今年僕らはこういうサーキットで苦しんでいるので、その分コーナーで稼ぐ必要があります」

 カタールではスプリント週末ゆえに、たった1時間のフリー走行のみで予選に臨む必要があり、セットアップも完調とは言えない状態だった。

 そもそも予選・決勝が行なわれる夜とは違う、日中のフリー走行ではあまりにコンディションが違ううえ、カタールでは砂や路面の問題もあって、十分な確認走行ができなかった。レース週末を迎えるまでのシミュレーションによるセットアップ準備作業も、「十分とは言えなかった」と角田は示唆している。

 サーキットのどこでタイムを稼ぐのか、どこは妥協してもいいのか──。そのアプローチがアルファタウリとは真逆のチームもあり、サーキットに対するアプローチを間違えてしまった可能性が高い。

「オンボード映像を見ると、セットアップの方向性がまったく逆のアプローチを採っていて、違うところにフォーカスしているチームもあったので、その違いが決勝で大きな差を生んだ可能性もあると思っています。チームとしては多くを学ぶことができましたし、それについてはいくつかアイデアもあるので、今後のレースや来年のカタールでそれを生かしていきたいなと思っています」

【心強いダニエル・リカルドのフィードバック】

 今回のアメリカGPでは、第14戦オランダGPで骨折を負って戦線離脱していたダニエル・リカルドが復帰する。彼の経験に基づいたフィードバックもあり、レース週末に対するアプローチという点でも心強い。

「復帰までは、思っていたよりもタフだった。ただ、弱気になっていただけで、実際にはそんなにタフじゃなかったかもね(笑)。事故の瞬間から骨折したのはわかっていたけど、最初はそんなにひどくないと言われたんだ。でも、手術をしたら思っていたよりもかなりひどくて、だから余計に長く感じてしまったんだろうね」(リカルド)

 この間にアルファタウリのマシンがどれだけ改善されたか、リカルド自身も1カ月半ぶりのドライビングを楽しみにしている。

「シンガポールGPで大きなアップデートをしてかなりポジティブだったから、僕が乗っていたときよりもよくなっているんじゃないかと期待しているよ。僕にとってはまだ今年3戦目のレースで、完全に慣れてはいない。だけど、それを言い訳にするつもりはないよ」

 今週末は前戦カタールに続きスプリントレースが行なわれるため、フリー走行は1時間しかない。そして3連戦の最後のサンパウロGPもスプリントレースとなるため、スプリント週末で3日間すべてをうまくまとめ上げられたことがないアルファタウリとしては、ここでしっかりと自分たちの仕事を果たしておきたいところだ。

 ライバルたちとのポイント差は決して小さくない。残り5戦で追いつき追い越すために、絶対にここで流れを取り戻しておかなければならない。