10月8日、ラグビーワールドカップ・フランス大会に出場していたラグビー日本代表は、ナントの「スタッド・ドゥ・ラ・ボージョワール」で決勝トーナメント進出をかけて、アルゼンチン代表と予選プール最終戦で激突した。 残念ながら日本代表は27-39…

 10月8日、ラグビーワールドカップ・フランス大会に出場していたラグビー日本代表は、ナントの「スタッド・ドゥ・ラ・ボージョワール」で決勝トーナメント進出をかけて、アルゼンチン代表と予選プール最終戦で激突した。

 残念ながら日本代表は27-39で敗戦したが、ベスト8を賭けた"大一番"ということもあり、現地ナントでは朝から「ラグビーの祭典」という名にふさわしい盛り上がりを見せていた。

 スタジアムはナントの中心部からトラムで20分ほど。キックオフ4時間くらい前に現地に着くと、熱心なラグビーファンはすでに日本代表チームの「入り待ち」をしていた。「日本代表の箱推しです!」という日本から来たという4人の女性ファンは、顔に国旗などのペイティングを施し、高揚した気分を抑えきれずに笑顔をこぼした。

 試合開始まで2時間を切ると、スタジアム周辺はビールを飲みながら話し込むラグビーファンの熱気に一気に包まれる。

 ナントに集まった日本人ファンもさまざまだ。日本からやって来たファンもいれば、フランス在住の日本人、あるいはイギリスから足を運んできた日本人の方も......。さらには日本人のみなならず、現地のフランス人やスイスから来た外国人ファンも、日本代表のジャージーを着て応援していた。

 日本代表が好きだという外国人ファンに話しかけてみた。

「なぜ日本代表を応援してくれるの?」と尋ねると、「2019年のワールドカップで日本のプレーを見て好きになったんだ!」「熱心な日本代表のファンなんだ!(日本代表の)ジャージー(の中心)にあるユリのマークもいいね!」とのこと。

 もちろん、ナントにはアルゼンチン代表のファンも数多く来ていた。彼らは朝から、常に陽気だった。

 アルゼンチンからやって来た人もいれば、欧州在住のアルゼンチン人も......サッカーも強いお国柄だけに、水色と白の縦縞が特徴的なサッカー代表のジャージーを着たファンも目立っていた。2020年に亡くなったサッカーの英雄ディエゴ・マラドーナも、よくラグビーワールドカップに姿を見せていたことを思い出した。今大会は見られず残念。

 キックオフ前に日本のファン、アルゼンチンのファン、フランスのラグビーファンも、ビールを片手に分け隔てなく談笑するのは、ラグビー文化のひとつだ。

 現地のファンは試合中も、試合後も、ビールを飲みながらラグビー談義に花を咲かせる。そうして交流を深めながら現地の雰囲気を味わうのも「ラグビーの祭典」の楽しいところ。

 3万3000人を超える観客のうち、日本代表のファンとアルゼンチン代表のファンの比率は同じくらいだったように見えた。試合が少し停滞すれば、「ウェーブ」が起きたり、フランス国家「ラ・マルセイエーズ」が歌われたりするも現地ならでは。

 ただ、アルゼンチン代表のファンはワンプレー、ワンプレーに声を出し続け、常に会場を盛り上げていた。空気感は、少しアルゼンチン寄り、だったかな。勝利したあとにアルゼンチン代表のファンがみんなで歌を歌っていたように、日本代表のファンも敵地のワールドカップで一体となるような、日本代表の背中を押せる歌やチャントがあってもいいかもしれない。

 そういえば、試合後のミックスゾーンで、日本代表FL(フランカー)リーチ マイケル選手は「6番」のジャージーを着たままで出てきた。理由は「シャワーを浴びる時間がなかった」からだが、それは試合後にずっとファンサービスをしていたためだろう。

 スタジアムを出たあとも、リーチは出待ちしていたファンにサインを書いたり、写真を撮ったり。

「このまま街に出ます! 見つけてください。『ウォーリーをさがせ!』ですね(笑)」

 その言葉どおり、リーチは本当に試合後の夜、ジャージーのまま街に出たそう。出会えたファンはラッキー! リーチがファンに愛される理由である。