ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会に臨んだ日本は、初出場のチリや過去2大会の対戦で勝利したサモアから白星を挙げた。しかし、格上のイングランドとアルゼンチンには地力の差を見せつけられた。 選手たちは口々に「優勝」を公言してW杯に挑…

 ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会に臨んだ日本は、初出場のチリや過去2大会の対戦で勝利したサモアから白星を挙げた。しかし、格上のイングランドとアルゼンチンには地力の差を見せつけられた。

 選手たちは口々に「優勝」を公言してW杯に挑んだが、自国開催だった4年前の8強にすら届かなかった。敗れた2試合からは、日本が抱えてきた積年の課題が改めて浮き彫りになった。

 《3―21》

 《13―24》

 イングランド、アルゼンチン戦の後半のスコアだ。

 強豪相手に前半は善戦しながら、後半は劣勢を強いられた。

 アルゼンチン戦後、W杯4大会連続出場のFWリーチ・マイケルは「全部出し切った。(力を)出し切って、この結果」と言った。

 その上で、課題を明言した。

 「日本代表の弱点はラスト20分の戦い。60分(後半20分)までは接戦できる力はあっても、最後の20分をどうコントロールしていくか。(埋めるべき)最後のピースですね。(格上を倒す上で)そこが一番の壁かなと思います」

 個々の選手が、1試合のみならず、W杯の期間中ずっと最高のパフォーマンスを発揮し続けるのは理想だが、体と体をぶつけ合うラグビーは、体力を激しく消耗する。けがとも背中合わせだ。

 だからこそ、選手の途中交代や試合ごとの入れ替えは、W杯を勝ち抜くうえで大事な要素になる。

 そこで、日本とイングランド、アルゼンチンの選手ごとの出場試合数を比較してみた。

 1次リーグの4試合すべてに出場した選手が、日本は登録メンバー33人のうち18人いた。イングランドは8人、アルゼンチンは11人だった。さらに、イングランドとアルゼンチンは登録メンバー33人が全員試合を経験したが、日本は未出場の選手が5人いた。

 イングランドとアルゼンチンは、先発メンバーを試合ごとに入れ替えながらでも戦えるほど選手層が分厚いと読み解ける。だからこそ、後半から投入される控え選手の質も先発と遜色がなかった。

 対する日本は、33人の中でも力の差があったため、先発起用は一部の選手に偏らざるを得なかった。控え選手が全員交代を終える後半20分ごろからチーム力が落ちたのはある意味必然だろう。

 選手層を厚くできなかった要因として、新型コロナウイルス流行後の代表活動再開の遅れや、スーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」の撤退を挙げる声がある。影響が無かったとは言い切れないが、果たしてそうなのだろうか。

 コロナによる制限はもちろんなく、サンウルブズが4シーズンの活動を経て迎えた2019年W杯ですら、日本は登録メンバー31人中5人が未出場に終わった。少なくともジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が「使える」と思える選手の数は、当時も今も、ほぼ変わっていないということだ。

 「今いるメンバーを強化して、どうやって勝つかというのがHCの仕事。どうやって代表に良い選手を送り込むかというのは、やはり日本協会が考えないといけない」。代表の強化責任者、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは敗退から一夜明けた会見でそう指摘した。

 根本的には、代表選手全員がプレーする国内リーグ「リーグワン」の試合強度を高めていくしかない。他にあるとすれば、フランスのトップ14やスーパーラグビーといった海外リーグに移籍する選手を増やすことくらいか。

 いずれにせよ、これまで通りの強化策では日本がさらなる高みに到達することは難しい。

 重たい現実を突きつけられた、10回目のW杯だった。(ナント=松本龍三郎)

■■登録メンバー33人の1次リーグ出場試合数

イングランド(1位=4勝0敗)=(4)8人(3)15人(2)4人(1)6人⓪なし

アルゼンチン(2位=3勝1敗)=(4)11人(3)11人(2)4人(1)7人⓪なし

日    本(3位=2勝2敗)=(4)18人(3)4人(2)2人(1)4人⓪5人

※丸数字は出場試合数。途中離脱のセミシ・マシレワと追加招集の山中亮平は合わせて1人とみなす