ジャパンオープンで2位に約10点の差をつける149.59点で1位となった坂本花織 世界選手権2連覇中の坂本花織が、今季も期待に応える活躍を見せてくれそうだ。10月7日、ジャパンオープン2023で、新フリー『Wild is the Wind/…



ジャパンオープンで2位に約10点の差をつける149.59点で1位となった坂本花織

 世界選手権2連覇中の坂本花織が、今季も期待に応える活躍を見せてくれそうだ。10月7日、ジャパンオープン2023で、新フリー『Wild is the Wind/Feeling good』を披露。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら今季世界最高得点となる149.59点で1位につけた。

 冒頭からエンジン全開だった。代名詞の2回転アクセルは幅も距離もあるダイナミックなジャンプで見る者を引きつけ、スピードに乗ったまま3回転ルッツ、3回転サルコウと次々と着氷。後半のフリップ+トーループの連続3回転ジャンプ、2回転アクセルからの3連続ジャンプを軽快に決めるなど、全てのジャンプでGOE加点がついた。質の高いジャンプを武器に安定した演技には、さらに磨きがかかっているようだ。
 
「初めてジャパンオープンで大きなミスなくできたのでほっとしています。今日のフリーは、今、自分ができる精いっぱいを出しきれたので、演技に満足しています。これからもっと振り付けやスピン、細かい部分をブラッシュアップしていって、150点を超えられるようにしたいと思っています。

 今シーズンは1試合1試合、前の試合の自分に勝っていけるようにちょっとずつでも成長して、今年最後の全日本選手権だったり、その後の世界選手権だったりで、もっといいものができるように、1試合1試合を大事にしていけたらいいなと思います」

 フリーの自己ベストは、2022年3月25日に世界選手権でマークした155.77点。常にトップを狙っていくためには150点が得点の目安になることは間違いない。

 坂本は、北京五輪で銅メダルを獲得した後の2022-2023シーズンから新たな挑戦を掲げている。振付師を変更してさらなるステップアップを図った坂本が今季、選んだフリーのテーマは「ミステリアスな女性」を表現するプログラムだという。

「これまでやったことのないジャンルだったので、まだ表現面で苦戦していますが、シーズン終盤に向けてどんどんよくなっていければいいなと思っています。

 このプログラムは最初のつかみが大事なので、目線をジャッジさんから動かさないとか、フリーレッグや腕の使い方に気をつけることを意識しながらやっています。今はまだそんな感じですが、これからどんどんよくなっていくところを見てもらえればいいなと思います」

【スケートと向き合える時間が増えていく】

 元気はつらつ、明るい23歳が、どんなミステリアスな女性を演じるのか。この日は「ファム・ファタール」(フランス語で「運命の女」)を彷彿とさせる黒のロング手袋をつけ、銀色のスパンコールをふんだんにちりばめた黒のドレス風のコスチュームをまとい、濃い目のメイクを施した。外見はまさにミステリアスな装いだったが、演技については本人も自覚していたように、まだ「初心者マーク」をつけているような状態だったことは否めない。今後、滑り込んでいくことで、どんな表現を見せてくれるのか。

 ちなみに、このプログラムは全身を使って激しい動きを組み込んでいることもあるのか、演技後のフィニッシュポーズでは、引きつった笑みを見せて、ミステリアスはどこへやら、よろけながらリンクを引き上げる姿が観客の笑いを誘っていた。

「ただただ体力がきつくて、もう最後のポーズをしたときに足がパンパンで、挨拶もよれるくらいきつかったので、あの顔になっていました(笑)」

 このジャパンオープンを機に本格的に始まる今季。坂本が出場するグランプリ(GP)シリーズは、10月27-29日のスケートカナダ(バンクーバー)と11月17-19日のフィンランド杯(エスポ-)の2戦。そして、この2試合の結果を受けて、ポイント上位6人が出場するGPファイナルは12月7-10日に中国・北京で行なわれる。

 強豪ロシア勢が不在のフィギュアスケート界にあって、日本勢はシニアでもジュニアでも世界をけん引する存在だ。その筆頭に立つ坂本の今季の目標は、「全日本選手権と世界選手権で3連覇をすること」。坂本にしか言えない目標設定に、ジャパンオープンに出場していた友野一希は「かっこいい」とうらやましがっていた。

「昨季はグランプリシリーズがあまりうまくいかず、何とか全日本選手権から本調子に戻った。今季はジャパンオープンも自分なりにうまくできたと思っているので、この流れでグランプリシリーズ2戦とグランプリファイナルも、しっかりベストコンディションでベストな演技ができればいいなと思っています。そこがうまくいけば、全日本選手権もうまくいくと思うので、徐々にちょっとずつでも上げていけたらいいと思っています」

 今年9月には、神戸学院大学を半年遅れで無事に卒業。これまで学業との両立に苦労していたが、それから解放された今季はシーズン序盤から結果を出している。チャレンジャーシリーズのオータムクラシックでシリーズ初優勝を遂げ、モチベーション向上のきっかけをつかんだという。

「そこから毎日練習を積んで前向きに取り組んでいます。これからもっとスケートと向き合える時間が増えていくと思っています。朝晩の(スケートリンクの)貸し切りだけではなくて一般営業時間も利用して、時間をかけて基礎の練習をたくさんやることができるので、その時間を有効活用していけるようにしたいです。

 一般営業での練習では、自分が納得するところまでできる。その日の体調やコンディションにもよりますけど、貸し切りだけよりは練習時間は増えると思うので、今後にとってはいい(練習)環境になると思います」

 今回のジャパンオープンでは、久しぶりに競技会に復帰し、すばらしい演技を披露した宮原知子に「心揺さぶられた」と、大きな刺激を受けていた坂本。今季の目標をどんな演技でクリアしていくのか。新プログラムの完成度の行方とともに期待していきたい。