プロリーグができてわずか30年ということを考えれば、日本サッカー界の成長は目覚ましいものがある。だが、サッカージャーナ…
プロリーグができてわずか30年ということを考えれば、日本サッカー界の成長は目覚ましいものがある。だが、サッカージャーナリスト・大住良之の目には、ある重要な欠落が映っている。それは、日本代表のワールドカップ優勝へのラストピースになるかもしれないのだ。
■日本サッカーの改善点
親善試合とはいえアウェーでドイツに4-1の勝利を収めたことで、日本代表は大きくポイントを稼ぎ、FIFAランキングで19位に上がった。2018年7月に森保一監督が就任したときには55位だったことを考慮に入れなくても、中国・杭州でのアジア大会での男女代表チームのはつらつとしたプレーぶりなどを含め、この5年間で日本のサッカーの成長が目覚ましかったことは誰の目にも明らかだ。しかしそうしたなかで一向に改善されない技術がある。ヘディングである。
あるJリーグ(J1)の試合で、90分間でヘディングが何回行われ、何回成功したかを数えてみた。ここで「成功」とは、ヘディングしたボールが味方に渡る、あるいはヘディングシュートがゴールにはいることを意味する。もちろん、1試合ではサンプルは足りない。少なくともJ1のひとつの節の全試合(9試合)のデータがなければ、結論じみたことは言えないだろう。だが、わずか1試合のサンプルでも、ヘディングの改善が急務という私の主張を十分裏付けてくれるのではないかと思う。
この試合では、ホームのAチームは90分間(私の計測では、アディショナルタイムを入れて97分26秒間だった)で通算53回のヘディングをし、21回「成功」した。アウェーのBチームは、36回のうち14回だった。両チーム合わせて1試合で89回のヘディングがあり、成功はそのうち35回。「成功率」は39.3%であった。Aチームの成功率は39.6%、Bチームは38.9%。ともに「4割弱」という数字である。
■考察に値する事実
考えてみてほしい。ピッチに立っているのは22人である。ヘディングをする選手には、10人の味方選手と11人の相手選手がいる。「失敗」には、タッチラインやゴールラインを割ってしまうというケースもあるから、ヘディングしたボールが行く先は、厳密には「味方か相手か五分五分」ではないが、それを考慮外に置けば、仮にヘディングがただ頭でボールを打つだけで「どこに行くかはボールに聞いてくれ」というものであっても、21回のうち10回は味方に行くはずである。すなわち、「成功率」は、「無目的なヘディング」であっても47.6%にはなるはずなのである。それが40%を切るとは…。
もちろん、プレーの状況でさまざまなヘディングがある、相手の鋭いクロスに対し、相手と競りながらかろうじてはね返すものもあれば、小さく浮いてきたボールをフリーの状態でスタンディングのままできるものもある。「クリア」の状況では、とにかく自ゴールからボールを遠ざけることが優先され、ボールの先にいるのが味方か相手かなど、あまり問題でない状況もある。しかしそれにしても、日本のトップクラスの試合で「ヘディングパス成功率が40%を切る」という事実は、十分考察に値するのではないか。