ラグビーワールドカップ(W杯)の1次リーグD組で、日本は8日、アルゼンチンと対戦し、27―39で敗れた。通算成績は2勝2敗でD組3位となり、2大会連続の決勝トーナメント進出はならなかった。 彼の右足なくして、日本は世界に勝負を挑めなかった…

 ラグビーワールドカップ(W杯)の1次リーグD組で、日本は8日、アルゼンチンと対戦し、27―39で敗れた。通算成績は2勝2敗でD組3位となり、2大会連続の決勝トーナメント進出はならなかった。

 彼の右足なくして、日本は世界に勝負を挑めなかっただろう。背番号10、SO松田は常々言う。「一本一本、丁寧に自分のキックをすることで、一番勝利に貢献できる」

 今大会は3戦目までにPG、トライ後とキックを計16回蹴って15回成功。8強をかけた一戦でも、計4本のキックをすべて決めた。

 2019年W杯は代表に選ばれながら、絶対的な司令塔に君臨していた田村の陰に隠れた。「チームを勝たせる10番になりたい」。悔しさから、口癖のように発言するようになった。

 この4年間で、パス・ラン・キックと3拍子がそろう選手に成長した。昨年は左ひざ靱帯(じんたい)断裂から復活。ジョセフ・ヘッドコーチ、ブラウン攻撃コーチの信頼を改めて勝ち取り、日本の背番号10をつかんだ。

 大会前、最大の武器であるキックは不調だった。松田は迷わず、準備動作に変更を加えている。普段から体作りを任せる佐藤義人トレーナーらの助言を真摯(しんし)に受け止め、計ったように本番に調子を合わせてきた。

 母校・伏見工高は「ミスターラグビー」と呼ばれた平尾誠二さん(故人)ら多くの代表選手を送り出してきた。16年、他校と統合して校名が京都工学院高に変わったため、松田は「伏見工卒」で最後のW杯選手になるかもしれない。

 同校ラグビー部で受け継がれる言葉がある。「信は力なり」。2大会連続の8強入りはならなかったが、支えてくれる人たちを信じ、自分の可能性を信じ、松田はフランスで、その言葉を体現してみせた。

 「悔しさしかない。この壁を越えるために、やり続けたい」。涙を流しながら、闘志は燃え尽きていなかった。(ナント=松本龍三郎)