元日本代表FWでフランスでのプレー経験がある日野剛志選手(静岡ブルーレヴズ)が、当地のラグビー事情や日本代表の選手について語ります。 日本の先発FWは、2戦目のイングランド戦から同じ8人が起用されています。6日に発表されたアルゼンチン戦の…

 元日本代表FWでフランスでのプレー経験がある日野剛志選手(静岡ブルーレヴズ)が、当地のラグビー事情や日本代表の選手について語ります。

 日本の先発FWは、2戦目のイングランド戦から同じ8人が起用されています。6日に発表されたアルゼンチン戦の先発でも変更がありませんでした。

 ここ2戦はスクラムが好調ですし、3戦目のサモア戦は勝利を収めました。勝っている時にあまりメンバーをいじる必要はありません。選手たちも自信を持って臨めると思います。

 世界の強豪チームはメンバーを入れ替えながらW杯を戦っています。メンバーをここまで固定しているのは、日本くらいではないでしょうか。それでもコンディションに問題が起きないのは、十分な試合間隔があるからだと考えられます。

 イングランド戦からサモア戦まで中10日、サモア戦からアルゼンチン戦までが中9日。過去のW杯にはない長さです。試合を楽しみたいファンの中には間延びすると感じる方もいるかと思いますが、選手の立場で言えば、リカバリーにしっかり時間を使えてとても助かります。

 8日の試合までの間隔は、日本がアルゼンチンより2日長い。この2日の差が結構大きい。例えば、各自で相手の分析をするにしても、よりリラックスした状態で行えます。肉体的な面に加えて、精神的な面で有利に働きます。

 本番に合わせて心身ともに最高の状態を作る「ピーキング」がうまくいっていることも見逃せません。6月からのハードな合宿で想定以上に多くのけが人が出てしまいましたが、それでも生き残ったのが今の選手たち。厳しい練習に耐え切れたからこそ、W杯が進むにつれてパフォーマンスを上げることができていると感じます。

 組織力やチームの絆みたいな部分でも、ここ1年、いや、ひょっとするとこの4年間で一番良いのではないでしょうか。選手のみんなの表情を見ていると、その場にいなくても想像がつきます。

 アルゼンチンは元々FWが強いチームです。ただ、近年の躍進には優秀なバックスの存在があります。

 日本はサモア戦の後半、ラック近くを突破してくる相手に苦しめられました。アルゼンチンも似たようなことをやってくるでしょう。ただ、それ自体は、ゴール目前でなければ、対策を講じて止められます。

 アルゼンチンが考えているのは、その先。中央突破で相手防御を集中させておいて、そこからのバックス展開です。日本はまず、FWが接点で後手に回らないこと。さらにそこから、いかに良いボールを相手バックスに回させないか。それが試合の大きな鍵になります。

 控えにFWサウマキ・アマナキ選手を入れたのも、終盤に相手がパワーで押してきた時に備えてでしょう。W杯初出場となるWTBシオサイア・フィフィタ選手はおそらく、首脳陣がアルゼンチン戦に照準を合わせて取っておいたはず。代表に帰ってきたFB山中亮平選手が控えにいるのも心強い。

 1次リーグ最終戦を前にして、けがなどでもっとメンバーが削られる事態も十分あり得ました。SH流(ながれ)大選手の欠場こそありますが、肝となる選手はしっかりそろっています。このメンバーで負けたらしょうがない。そう思えるくらい、充実した状態で日本は決戦に挑めます。(構成・松本龍三郎)