■9回2死二塁で篠原優が同点二塁打、梅村大和の適時打でサヨナラ勝ち  早大は7日、東京六大学野球秋季リーグの立大1回戦で、劇的な逆転サヨナラ勝ちを収めた。1点を追う9回、これまでリーグ戦無安打の篠原優捕手(4年)が代打で登場し起死回生の同…

■9回2死二塁で篠原優が同点二塁打、梅村大和の適時打でサヨナラ勝ち

 早大は7日、東京六大学野球秋季リーグの立大1回戦で、劇的な逆転サヨナラ勝ちを収めた。1点を追う9回、これまでリーグ戦無安打の篠原優捕手(4年)が代打で登場し起死回生の同点適時二塁打。続く代打・梅村大和内野手(3年)も中前適時打を放ち、5-4で勝ち切った。

「残り全勝しなければ、逆転優勝はないと思っています。『全部勝つ』を合言葉に練習してきました。今日のゲームに関しては、“執着心”が見ている方々にも伝わったのではないでしょうか」。普段はどちらかと言えば選手に手厳しい早大・小宮山悟監督も、感極まった表情を見せた。

「明大の4季連続優勝阻止」を掲げて臨んだ今季も、その明大に1勝2敗で勝ち点を奪われた。6季ぶりの優勝を狙うなら1敗もできない状況だが、この日は立大に4回表終了時点で0-4とリードされ、じわじわ挽回するも、1点ビハインドのまま9回の攻撃を迎えていた。

 場面は2死二塁で敗戦寸前。ここで小宮山監督が代打に指名した篠原は早大学院出身の4年生捕手で、昨年までリーグ戦出場はなし。1学年下ながら高校時代からその名を全国に知られていた印出太一捕手(3年)に、レギュラーの座を固められていた。今年の春に代打で出場機会を得たが4打数無安打1三振。今季はこれが初打席だった。

 左打席に立った篠原は、立大4番手の塩野目慎士投手(3年)に対し、カウント2-1から外角低めの球を一振り。打球は左翼手の頭上を越え、二塁走者が同点のホームを駆け抜ける。代走を送られた篠原はベンチに戻り、ナインから手洗い祝福を受けた。

劇的なサヨナラ勝利の歓喜に沸く早大メンバー【写真:小林靖】

「正直言って、あまり覚えていません。無我夢中で後ろにつなぐことだけを考えていました」と夢見心地の篠原。小宮山監督は「あの1本がなければ、サヨナラもなかった。追い詰められたところで、4年生がよく打ってくれたと思います」と賛辞を送る。過去リーグ戦無安打でも、篠原の代打起用には「確信めいたものがあった」そうで、「新人戦(フレッシュトーナメント)では、彼のバットで優勝した。頭の中にその時のイメージは残っているはずで、打席に入ってもジタバタした雰囲気はないですから」と説明した。

 早大は2021年の秋季フレッシュトーナメント決勝戦で法大を破り優勝。篠原は「5番・捕手」で出場し、2-2の同点で迎えた7回に決勝適時二塁打を放つなど、4打数2安打2打点の大活躍を演じている。ここぞの場面での強さは実証済みだった。

 試合後、小宮山監督、8回からリリーフしてリーグ戦初勝利を挙げた香西一希投手(1年)とともに、3人並んだ記者会見。篠原が「毎日地道に1人でコツコツ、自主練習してきたことが報われたと思います」と述懐すると、小宮山監督は「そういうのはさ、自分で言わない方がかっこいいんじゃない?」とツッコミを入れた。

 篠原は素直に「そうですね。初めての取材で頭が回っていないので、今のは取り消し、訂正させていただきます。この秋で野球を引退する身として、最後のシーズンに懸ける思いは人一倍強いという自信がある。その気持ちがあの1本につながったと思います」と言い直し、小宮山監督も「それを受けて俺が、『こいつは1人でコツコツ……』という話をするんだよ!」と重ねて、爆笑を誘った。4年間かけて築いた師弟愛がうかがえ、なんとも微笑ましい。

 篠原は卒業後、海外にも広く展開している企業に就職する予定。「将来の目標は、5年後くらいには海外で仕事ができる役職に就くことです」と明かした後、「今はまだ(今季)優勝すること」と付け加え、また周囲を笑わせた。小宮山監督は「あと何回チャンスをあげられるかわからないけれど、いいところで打席をあげたいと思います。しっかりバットを振ってほしい」とうなずいていた。