2020年に東京での開催を控えたオリンピック・パラリンピックをはじめ、世界選手権やワールドカップなど、スポーツではさまざまな世界大会が開催されています。そうした大会は「世界に挑む」という背景から、トップアスリートだけに挑戦の許されたものと…

 2020年に東京での開催を控えたオリンピック・パラリンピックをはじめ、世界選手権やワールドカップなど、スポーツではさまざまな世界大会が開催されています。そうした大会は「世界に挑む」という背景から、トップアスリートだけに挑戦の許されたものとイメージされる方が多いでしょう。もちろん、ほとんどの大会はその通り、各国の精鋭が集まって競い合います。

 しかし“概ね30歳以上であること”のみを条件とし、誰でも世界各国の競技者とともに競技できる大会があることをご存知でしょうか。それが、2021年に日本・関西での開催が決定した『ワールドマスターズゲームズ2021 関西』です。今回は、大会の概要や見どころや楽しみ方などについて、関西ワールドマスターズゲームズ2021組織委員会事務局長の大西孝さんにお話を伺ってきました。

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ワールドマスターズゲームズは“誰もが楽しめる国際イベント”

 ワールドマスターズゲームズは、オリンピックと同じく4年に1回開催されます。第1回大会は1985年、カナダのトロントで開催されました。そして日本・関西での開催が決定した2021年の大会は、なんと記念すべき第10回目となります。

 これまでワールドマスターズゲームズは、アジア圏であまり馴染みのないものでした。欧米での開催が主であり、アジアでは今回が初めての開催とのこと。その開催背景について、大西さんは次のように語ります。

「そもそもの発端は2009年のこと。滋賀県がIMGA(国際マスターズゲームズ協会)に対して、第7回大会の滋賀県開催を要望したんです。しかしその際は、残念ながらシドニーでの開催となりました。すると2012年、今度はIMGA側から、2021年の第10回大会を関西圏で行いたいと声がかかったんですよ。翌年2013年のトリノ大会を視察するなど検討を重ね、結果、開催について基本合意に至りました」

 規模の大きな生涯スポーツの大会であり、スポーツのみならずツーリズムをも楽しめるイベントとも言えるワールドマスターズゲームズ。国内外から関西圏へ人々が訪れることで、地域活性化にもつながると期待されています。

 このワールドマスターズゲームズ、特に大きな特徴といえるのが“概ね30歳以上ならば誰でも競技者として参加できる”ということ。競技歴や実績など関係なく参加できる国際的なスポーツイベントなのです。競技種目は水泳やテニス、陸上競技、サッカー、柔道、ゴルフなどをはじめとした32競技55種目。さらにデモンストレーション競技として、プログラム外のスポーツも多数実施されます。

 それぞれ競技によって関西圏で開催地が異なり、1人が複数種目に出場することも可能だといいます。つまり、例えば今からトレーニングを始めて、2021年にワールドマスターズゲームズへの出場を目指すことも可能。組織委員会では、競技力に関わらず誰もがスポーツを楽しめるよう、日々検討しているようです。

「例えばレベルの合う人同士で戦えるようにクラス分けしたり、年齢ごとに記録・順位を出したり。詳細はこれから組み立てていく段階ですが、スポーツ好きなら誰でも参加でき、楽しめる大会を目指しています。30歳以上という年齢制限も、種目によって多少変わってくるかもしれません。生涯スポーツの価値を高め、できるだけ多くの方々がスポーツに取り組むきっかけになるとうれしいですね。ただワールドマスターズゲームズを開催するだけでなく、そこからスポーツ実施人口の拡大、あるいは活動的な健康長寿社会や生涯活躍社会の実現など、多くのレガシーを残していきたいと考えています」

 ワールドマスターズゲームズでは障がい者によるパラ競技も同じ会場で開催されます。競技によっては、障がい者も含めた全員が一緒に競技できる場も検討しているとのこと。また、関西圏という広域での開催は史上初であり、その特徴を活かした楽しみ方の多様性についても期待できそうです。

目指すは過去最大、150カ国・5万人からの参加

 過去に開催されたワールドマスターズゲームズでは、2009年のシドニー大会(第7回)が28,676人と最大の参加者数でした。参加国数で見ると、2013年のトリノ大会(第8回)が107カ国で最多となっています。しかし2021年の開催大会では、この実績を大きく上回る規模を目標として掲げています。

「参加人数は5万人、150カ国からの参加を目指しています。過去大会を見てみると、参加者の4割程度は自国の競技者。ざっくりとした内訳ですが、2万人は海外からの参加者を集めたいと思っています。もちろん大会時には、本人だけでなく友人・家族を連れてくることも考えられるでしょう。また、大会運営にはボランティアをはじめ、多くの方々からの支えが欠かせません。競技者だけでなく、大会に関わるすべての方々が、参加者として楽しめるものを創り上げたいですね」

 もちろん目標達成にあたっては、さまざまな課題があるようです。まず開催期間が平日を含むため、競技ごとの開催スケジュールも悩むところ。大勢が集まれば、それだけ宿泊施設も必要です。特に海外からの参加者募集では、いかに大会や関西という地域の魅力を伝え、情報発信するかがポイントとなるでしょう。

「本大会にはマスコットキャラクター『スフラ』がいます。しかしこのキャラクターも、まだまだ認知度が高くありません。多くの方々に楽しんで頂くためには、まず何よりも知ってもらうこと。まずは各競技日程や人数、会場などの詳細をできるだけ早くに決定し、広報などに取り組んでいきます。日本らしさを楽しんでいただける会場、大会を考えていますので、ぜひ楽しみにしていてください」

 大会へのエントリー開始時期は2020年2月を予定しているとのこと。いったいどのような大会になるのか、お話を伺っていて今から楽しみで仕方ありません。誰でも世界中の競技者と戦える。それだけで、すでに私は参加してみたいと感じました。これを機に、何か新しい競技に挑戦してみようかなどと考えています。

 個人種目はもちろん、テニスのダブルスやサッカーのようなチームスポーツは、友人や所属チームメンバーとの参加も可能。初心者でも参加できる大会のため、これからスポーツを始める方にとっては、競技に取り組むためのモチベーションにもなりそうです。大会はこれから詳細が組み立てられていく段階ですが、興味のある方は、ぜひ今からチェックしておいてください。

[大会開催概要]
・開催期間:2021年5月15日(土)〜30日(日):16日間
・開催競技:正式競技/32競技55種目、他デモンストレーション競技も検討
・開催場所:関西各地域
・主催:一般財団法人関西ワールドマスターズゲームズ2021組織委員会
・公式サイト:http://www.wmg2021.jp/

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[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>