五郎丸歩がフランス・トゥーロンから2季ぶりに復帰したヤマハで、今季から新副将となったのは西内勇人。入部3年目の24歳だ。2年目だった昨季は、国内最高峰のトップリーグ、日本選手権とも出番なしに終わっていた。「そろそろやらないと。周りからも『…

 五郎丸歩がフランス・トゥーロンから2季ぶりに復帰したヤマハで、今季から新副将となったのは西内勇人。入部3年目の24歳だ。2年目だった昨季は、国内最高峰のトップリーグ、日本選手権とも出番なしに終わっていた。

「そろそろやらないと。周りからも『いま、何しているの?』と連絡が来たりもしていたので」

 身長182センチ、体重103キロのFL。インパクトのある突破とタックル、ひたむきな気質で信頼を集めてきた。

 20歳以下日本代表では主将を務めるなど実績を積んだが、法大主将だった大学4年目に首を痛める。「大学の時は腰の骨を移植して、社会人1年目の時にそこへプレートを入れて…」と患部に二度もメスを入れ、長期離脱を余儀なくされた。ルーキーイヤーは、トップリーグ計4試合の出場に止まった。

 ジャンプアップを期した2季目も、チーム始動時に下半身などの「小さな怪我」を重ねる。ポジション争いへのアピール機会を逸し、開幕12連勝に沸くチームをスタンドから見守ることとなった。

「(指導者から見て)春に活躍しない選手は、使いたくないと思うんです。情けない。やっぱり怪我が続くと、パフォーマンスが悪くなる。もともと自分は『やり続けるタイプ』のプレーヤーなのですが、それもできなくなっていて…」

 副将を打診されたのは、そんな失意のシーズンを終えた直後だった。清宮克幸監督から正式に打診された時は「自分でいいんですか」と驚いたが、最後は「言われたからにはしっかり頑張りたい」と覚悟を固めた。

 ランニングの量を増やし、体重を減らさずとも「動ける身体」を構築。前年度までは激しいコンタクト時に首の違和感を覚えていたが、今年は7月上旬までの地点では「感じなくなっている」。あとは、本番で暴れるだけだ。

 チームは7月15日から27日まで北海道で合宿を張る。8月18日には愛知・豊田スタジアムで、トヨタ自動車との国内トップリーグ初戦を迎える。

 今季から弟の勇ニもヤマハ入りした西内は、6月下旬のオフ明け時にこう意気込んでいた。

「ここまで怪我なくやってこられた。まだ自分に実力がないのが辛いところですが、『やり続けられた』のは大きい。自分は、身体を張るしかできない。ただ、それが自分のできることでもある…。今年は副将にもなったので、しっかりとやっていきたいです」

 かつての仲間たちからも、刺激を受ける。高校日本一になった東福岡高の同級生である布巻峻介、当時の県大会や全国大会で戦った福岡高の福岡堅樹(以上パナソニック)は、いずれも日本代表入りを果たしているのだ。

 他にも国際的に活躍する同世代は多く、ヤマハの前年度主将で日本代表経験者の三村勇飛丸は自身と同じオープンサイドFL(7番)。置かれた立場を踏まえ、西内はさらなるステージアップも目指す。

「ヤマハにはいい7番の選手がいっぱいいる。そこでどれだけ強みを出して、必要とされる選手になれるか…。ヤマハのスタメンを張るということは、そういう舞台にいかなきゃいけないと思っている」

 ここでの「そういう舞台」とはもちろん、日本代表のことだ。「まずは自分の実力を伸ばさなきゃいけないですが」とやや控えめに、大ブレイクを期す。(文:向 風見也)