(写真:Getty Images) 日ごろから欧州サッカーを「チームでオレが一番見ている」と豪語する鈴木にとって、セビージャから奪った2得点は特別だったはずだ。1点目を決めたあと“クリロナポーズ”を見…


(写真:Getty Images)

 日ごろから欧州サッカーを「チームでオレが一番見ている」と豪語する鈴木にとって、セビージャから奪った2得点は特別だったはずだ。1点目を決めたあと“クリロナポーズ”を見せ、2点目を決めたあとにも右拳をグッと握り締める。このところ試合に絡めていなかった悔しさを晴らす意味でも、感慨深い2ゴールに違いなかった。

 しかし、ミックスゾーンに現れた鈴木に、満足げな表情はなかった。繰り返されるのは欧州という舞台への渇望。「成長スピードをもう1段階、2段階上げるには、この強い相手と日常的に試合をやること」という焦りだった。

日本人には珍しいギラギラした露骨な野心。それが鈴木の魅力だった。だが、若い選手の心は移ろいやすい。ギラギラ感は薄れ「試合に出るのが当然だと思った時期もあった」と現状に満足してしまう。いつの間にか出番は少なくなっていった。

 その中で決めた2得点。「おもしろくしたい」と話していたポジション争いにも一石を投じる結果を残した。しかし、大岩監督は厳しかった。

「試合が終わったあと選手たちにも言ったが、『自分たちがあのレベルにならなければならない』と。昨年、レアル・マドリーとああいうゲームをしたあと、いろいろなメディアのみなさんに評価してもらったが、今回も(相手との間に)決定的に違う差を感じた。厳しい見方をすれば、縮めるどころか広がっているのではないか、ということを選手にも話した。いまの自分たちの意識では(この差は)縮まらない」

 この言葉で目指す方向がハッキリ像を結んだのだろう。「やっぱり欧州に行かないといけないとあらためて思った」と鈴木は繰り返した。その瞳はひさびさにギラギラと光っていた。           

文・田中 滋