石川祐希のAttack The World vol.8(vol.7:完全アウェーでのイラン戦の圧勝を振り返る 日本の成長を実感>>) バレーボール男子日本代表は、9月30日から国立代々木競技場で開幕するパリ五輪予選(OQT)に臨む。今季は主…

石川祐希のAttack The World vol.8

(vol.7:完全アウェーでのイラン戦の圧勝を振り返る 日本の成長を実感>>)

 バレーボール男子日本代表は、9月30日から国立代々木競技場で開幕するパリ五輪予選(OQT)に臨む。今季は主要国際大会で46年ぶりに銅メダルを獲得し、8月のアジア選手権で優勝と破竹の勢いは止まらない。そして今季最大の目標は、この大会でのパリ行きの切符獲得。主将としてチームを率いる石川祐希(ミラノ)は、どう挑むのか。



男子バレー日本代表の主将としてチームをけん引する石川祐希

【OQTはそんなに甘くない】

――9月中旬までの沖縄合宿はスキルアップをテーマにされていました。充実した内容になりましたか?

「僕自身は腰の状態があまりよくなく、練習を半分以上やっていません。なので、個人的には沖縄合宿での収穫はあまりないです。

 チームとしては、ダミーのブロックを置いてハイボールのスパイクの打ち方をかなり練習しました。レセプションが少し乱れた時や、Cパス(セッターが大きく動く必要があるレシーブ)になったところからでもコンビを合わせる練習もしたので、攻撃の精度は上がっていると思います。特に、Cパスの時のスパイク効果率があまりよくなかったので、そこを上げていればと考えていました」

――チームとして状態が上がっている手応えはありますか?

「間違いなく上がってきています。AチームとBチームに分かれて6対6で練習しても、どちらもいいディフェンスをしてボールを拾いますし、充実した練習ができています。スタッフを含めたチーム全体が、ひとつの目標に向かって取り組めています。これまでで一番いいグループになっていると思います」

――ネーションズリーグで3位、アジア選手権で優勝し、チームとして自信は深まっていますか?

「自分たちのバレーボールをすれば、自分たちの土俵で戦うことができればいけるとは思っています。ただ、OQTはそんなに甘くない大会です。自分たちのバレーができなくなった時にどうするかを考えておかないといけません」

――前回のOQTは2016年。当時、石川選手は大学生ながら出場しました。雰囲気や緊張感を思い出すことはありますか?

「ありますね。独特の雰囲気がありましたが、当時は当時の雰囲気が、今は今のものがある。今のままでいきたいと思っています。やる準備はいつもとそれほど変わりませんが、心構えは違います。相手も今までよりギアを上げてくるので、それに対応できるようにしないといけないと思っています」

――OQTの経験があるのは石川選手と山内晶大選手(パナソニック)と関田誠大選手(ジェイテクト)の3人です。若い選手に経験を話すことはあるのでしょうか。

「する必要がないと思っているので、一切していません。『どこのチームもこのOQTを目標にやっているから、それに対応できる準備をしよう』という話はシーズンの最初からしています。なので、あえて話をする必要はないのかな、と。僕たちはこのOQTでベストを尽くす。そのことを全員が理解できていれば問題ないと思っています」

【大会の「一番のヤマ場」となる試合は?】

――大会のヤマ場はどこだと考えますか?

「アメリカは最も強い相手です。ですが、当たるのは最後なので、それまでのセルビアとスロベニアが重要だと思っています。セルビアは欧州選手権を見ても、誰がスタメンで出てくるかが読めない。誰が出てきても対応できるように準備しておきたいです。スロベニアは非常に仕上がりがいい。ネーションズリーグで戦ったチームとはまったくの別物だと思います。スロベニア戦が一番のヤマ場になるでしょう」

――スロベニアが仕上がっていると感じるのはどのあたりでしょうか。

「ネーションズリーグではオポジットに(クレメン・)チェブリをメインで入れていましたが、欧州選手権では(ロク・)モジッチが入っていて、そちらのほうがチームとしてうまく回っている印象です。ここにきて最良の戦い方を見つけてきたなと。ネーションズリーグは探り探りな感じがありましたが、OQTに向けてしっかり固めてきました。チーム力も大きく変わっていると思います」

――セルビア、スロベニア、アメリカとの3連戦では、何がカギになりそうですか?

「サイドアウトが大事です。僕たちのキーポイントは、サーブとレセプション。その基本的なところをしっかりやりたい。あとはブロックフォロー。今までできていたことができなくなるのが一番危ないので、やってきたことを最後まで貫き通せるかがカギになると思います。

 間違いなく、自分たちの想像以上のプレーを相手はしてくるでしょう。そうなった時も焦らずに、自分たちは自分たちのバレーをするということを理解して、それを体現できるメンタルを持っておくこと。スキルは持っていると思うので、心の持ちようだけは気をつけたいですね」

――自分たちのバレーができなくなったときに、いかにしのげるかが大切ということですね。

「ネーションズリーグの中国戦や、アジア選手権のカタール戦がそんな状況でした。そういう状況になった時には、僕が何かを変えるきっかけを作れる自信はあります。なので、あとは自分のコンディションを整えるだけ。ベストパフォーマンスが出せる状態で戦わないと苦しいので、しっかり調整したいと思います」

――会場は1万人を超える観客で埋まると予想されます。どんな後押しをしてほしいですか?

「楽しんで盛り上がってほしいです。あとは、あえて言うなら、行儀はよくなくていい。ホームなので、相手へのブーイングもあっていいと思うし、立ってもいいし、叫んでもいい。そうしたいと思われるくらい熱い試合をしたいです。賛否が出るかもしれませんが、ホームだからホームのよさを作ってもらえると面白いと思います。選手が観客を煽ることがあったら、それに乗っかってくれるような会場だと助かるし、相手も嫌だと思うでしょうね」

――どんな姿を見せたいですか?

「やっぱり勝っているところを見せたい。『僕たちが今まで出してきた結果は本物だぞ、偶然じゃないぞ』ということを証明したい。みなさんの期待に応えたいという思いもありますが、自分たちの強さを証明したい、という思いが強いですね」

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