第56回日本女子オープンゴルフ選手権が28日、福井県の芦原ゴルフクラブ・海コース(6528ヤード、パー72)で開幕する。2021、22年大会は今季から米ツアーを主戦場にしている勝みなみが連覇。16、17、19大会は畑岡奈紗。20年大会は今年…

第56回日本女子オープンゴルフ選手権が28日、福井県の芦原ゴルフクラブ・海コース(6528ヤード、パー72)で開幕する。2021、22年大会は今季から米ツアーを主戦場にしている勝みなみが連覇。16、17、19大会は畑岡奈紗。20年大会は今年、来季の米ツアー予選会挑戦を表明している原英莉花が優勝した。

15年は、同年の全米女子オープンを含む世界メジャー3勝のチョン・インジが優勝。18年大会は、世界メジャー2勝で元世界ランキング1位のユ・ソヨンが優勝した。

歴代優勝者にはナショナルオープンの覇者としてふさわしい名前が並ぶが、今年そこに名前を刻むのは誰だろうか。

本命は2週連続で1日も首位を譲らず完全優勝し、将来的に米ツアー挑戦の意欲がある岩井明愛だろう。

◆3週連続完全Vがかかる岩井明愛 古江彩佳が2年ぶり出場/国内メジャー第3戦

■年間女王を狙える位置

2週連続完全優勝も偉業だが、その前から安定感がとても高かった。6月のニチレイレディスから、11戦して2勝を含むトップ5が9回で、2位(タイ含む)以上が5回。今季のトップ10回数は15(26試合中)でトップだ。

開幕からの安定感でコツコツとメルセデスランキングに反映されるポイント稼いでいたところに加えて、この2連勝でメルセデスポイント計400ポイント(※)を加算し、トップを狙える位置まで来ている。その差約110ポイントで3位。

日本女子オープンは公式戦のためポイントが大きい。5位以内であればメルセデスランキングトップの申ジエや、同2位の山下美夢有の結果次第で、トップに躍り出る可能性がある。優勝すれば申ジエや山下の結果に関係なく1位となる。ちなみに、4位以下の選手は、3位の岩井と少し離れているため、日本女子オープンで優勝してもこの3人に追いつかない。

岩井本人はメディアの取材で「年間女王はいつかなれたらと思います」と控えめなコメントをしているが、たった110ポイント差の現状を意識せずにはいられないはず。

大きなタイトルを意識した途端プレーがかたくなる、ということはよくあることかもしれない。だが岩井の場合、実績を重ねることで余裕が出てきている今、年間女王争いはより良いプレーを目指す上で良い方に作用するのではないだろうか。

※3日間大会優勝:200pt、4日間大会優勝:300pt、国内公式(メジャー):400pt、海外メジャー優勝:800pt。2位以下にも大会グレードに則した形でポイントが与えられる。

■平均バーディ数、バウンスバック率が渋野日向子級

岩井のプレーを一言で表すと‟強気”や‟アグレッシブ”という言葉が思い浮かぶ。フェアウェイやラフからドライバーショットを放つ‟直ドラ”や、グリーン周りから片手打ちを選択しチップインを決めるプレーだけでなく、データからも岩井らしさが見て取れる。

岩井はバーディ数が多い。平均バーディ数は昨季も3.4667で12位と上々の結果だったが、今季は4.3558で1位と、大きく向上している。

これは、高いパーオン率と成長したパットがかみ合っていることによるもの。パーオン率が75.5283%で1位、パーオンホールの平均パット数が1.7491で4位だ。

昨季もパーオン率は高く、73.8519%で3位だったが、パーオンホールの平均パット数は悪く、1.8251で51位だった。

今季の安定感や平均バーディ数増はパットの成長による部分が大きいようだ。

そしてボギーかそれより悪いスコアとした直後のホールで、バーディかそれより良いスコアを獲得する率を示す、バウンスバック率も高い。今季は25.1497%で1位。昨季も24.4681%で2位とトップレベルを誇り、スコアを落とした時に、より前を向く岩井らしさが表れている。

ここで思い出されるのが渋野日向子。全英女子オープンを制し一躍時の人となり、さらには同年の日本ツアー賞金女王争いに加わった19年。‟バウンスバック”は渋野の代名詞だった。

19年の渋野のバウンスバック率は26.0684%で1位。2位に約4%差をつけての1位だった。平均バーディ数も4.000で1位だったが、2位との差が約0.2。スコアを落とした後の巻き返しのバーディ奪取が、最も渋野らしさを表していた。

岩井もそんな渋野に平均バーディ数とバウンスバック率で引けを取っていない。

渋野は、米ツアーで戦う海外メジャーチャンピオン。岩井も渋野に続けるだけの力はあると見て良い。日本女子オープンの歴代覇者に名を連ねても違和感がない。

岩井明愛・渋野日向子平均バーディ数とバウンスバック率

■世界ランキングも上昇

上位に迫ったのはメルセデスランキング(ポイント)だけではない。世界ランキングも上昇している。

昨年末に121位だった世界ランキングは現時点で33位まで上昇。日本勢5番手につけている。日本女子オープンは世界ランキングに反映されるポイントも他の日本の試合に比べて大きい。優勝すればさらにランキングが上がる。

日本人トップは17位の畑岡で、以下21位の古江彩佳、22位の山下、23位の笹生優花と続く。世界ランキングにもとづくオリンピックゴルフランキングで日本人上位2名に入ればパリ五輪日本代表の権利を得られるが、岩井はその権利獲得も射程にとらえている。

日本代表決定は来年の6月だが、今季の残り試合数と来季スタートから6月までの試合数を考えると、目の前の1試合1打1打を、より丁寧にこなしていく必要がある。

年間女王、そしてパリ五輪日本代表へ。ここで一息つくわけにはいかない。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。