■吉納が殊勲の勝ち越し二塁打も「まだまだパワーが足りない」  早大は23日、東京六大学野球秋季リーグの明大1回戦に5-3で先勝し、今春まで3季連続優勝中の難敵から貴重な白星を奪った。小宮山悟監督の執念の采配が実った。  3-3の同点で迎…

■吉納が殊勲の勝ち越し二塁打も「まだまだパワーが足りない」

 早大は23日、東京六大学野球秋季リーグの明大1回戦に5-3で先勝し、今春まで3季連続優勝中の難敵から貴重な白星を奪った。小宮山悟監督の執念の采配が実った。

 3-3の同点で迎えた8回の攻撃。1死から熊田任洋内野手(4年)が左前打で出塁すると、小宮山監督はあえて4番の印出太一捕手(3年)にバントで送らせ、2死二塁として5番の吉納翼外野手(3年)に託した。「吉納は(練習拠点の)東伏見で練習している様(さま)を見ても、しっかりした打撃ができていました。もちろん印出に打たせるのもよかったけれど、1つでも先の塁へ進め、とにかく1点取れればという思いがありました」と指揮官は説明する。

 明大4番手の左腕・千葉汐凱投手(3年)に対し、勝負の左打席に入った吉納は、カウント1-1から真ん中低めのストレートをとらえた。打球は“逆方向”のレフトへ飛び、背走する左翼手の頭上を越え、勝ち越し適時二塁打に。値千金の殊勲打にも、吉納は「感触は、春のリーグ戦で同じ明治の左腕の石原(勇輝)投手(4年)からレフト方向へホームランを打った時と同じでした。まだまだパワーが足りないな、という感じです」と言い放った。愛知・東邦高2年生時に、下級生ながら主力として春の選抜大会優勝へ導いただけあって度胸満点だ。

8回裏 勝ち越し打を放った早大・吉納【写真:加治屋友輝】

 4番の送りバントだけではない。小宮山監督は明大の4季連続優勝を阻止するため、対戦前から「作戦を練りに練りました。連日レギュラー練習が終わると、過去になかったくらい監督室にこもり、明治の試合の映像を見ながら、どうすることが一番いいのか考えました。金森(栄治)助監督に2軍以下の練習を丸投げしてしまい、申し訳なかった」と明かす。

 その“打倒・明大作戦”の1つが、前週の東大2回戦に先発し5回2失点で勝利投手となっていた伊藤樹投手(2年)を、2点リードの9回に抑えとして起用したことだった。伊藤樹は抜群の球威を武器に、1番から始まった明大の最後の攻撃を3人で片づけた。「勝てる試合は拾わないといけないので、一番いい球を投げる選手に、最後のアウトを取る仕事をしてもらいました」と説明する。

 小宮山監督は宮城・仙台育英高出身の有望2年生右腕の伊藤樹を、「頭(先発)で行って、たくさんアウトを取ってくれる可能性もある。彼には『プロに行きたいのなら、投げたら休みなんていう投球ではいけない』と言ってあります」と鼓舞。早大在学中に通算52試合20勝、その後プロでも日米通算480試合117勝をマークした指揮官だからこそ、言えることだろう。2回戦以降に伊藤樹を先発で起用する可能性も十分ありそうだ。

9回を三者凡退で締めた伊藤樹【写真:加治屋友輝】

 一方、前週の東大戦2試合で8番を打った山縣秀内野手(3年)を2番に上げ、2番だった中村将希外野手(4年)を6番、6番だった島川叶夢内野手(4年)を8番へと打順を組み替えたが、これは選手たちのアイデアだった。「東大戦を受けて学生の方から、こういう形で臨みたいとリクエストがありました。よく頑張って、結果を出してくれました」。監督も選手も、それぞれ打倒・明大に必死だったのだ。

 早大にとっては総力を挙げてもぎ取った1勝だが、勝ち点を取れなければ、その価値も半減してしまう。明大の連覇阻止と6季ぶりの天皇杯奪回へ、正念場はこれからだ。

(Full-Count 宮脇広久)