AFCチャンピオンズリーグ(ACL)が始まった。日本からは4チームが参加して、アジアの頂点を目指す。その初戦を、サッカ…

 AFCチャンピオンズリーグACL)が始まった。日本からは4チームが参加して、アジアの頂点を目指す。その初戦を、サッカージャーナリスト・大住良之が読み解く。

■横浜FMの「総力戦」

 Jリーグはいよいよ終盤にさしかかり、横浜F・マリノスヴィッセル神戸と激しい首位争いを展開している。ただどちらも相手を突き放す勢いがあるわけではなく、8月以降、数節ごとに首位が入れ替わる状況で、サガン鳥栖戦を迎えたときには首位神戸が勝ち点52、追う横浜FMは50。鳥栖戦も仁川ユナイテッドとのホームゲームも勝つために、ケヴィン・マスカット監督が選んだのが「総力戦」だった。

 その結果、仁川戦の先発の攻撃陣が、西村を除くと、右ウイングがFW井上健太(25歳)、センターFWが植中朝日(21歳)、ボランチに吉尾(25歳)と、Jリーグでは出番の少ない選手が並ぶことになった。彼らは十分持ち味を出し、試合はマスカット監督の狙いどおり、ボールをしっかり支配してのものとなった。だが2-2で折り返した後半のもっと早い時間に、マスカット監督は勝負に出るべきではなかっただろうか。もちろん、アンデルソン・ロペスとエウベルの投入である。

■引き分け狙いがあだとなる

 しかしまだ2-2の状況だった後半20分に行った横浜FMの最初の交代は、DF松原健、DF加藤聖という両サイドバック、そして左ウイングのFW宮市亮を引っ込め、DF村上悠緋(右サイドバック)、MF南泰熙(ナム・テヒ、ボランチ)、そしてFWヤン・マテウス(左ウイング)の投入だった。試合は横浜FMがボールを完全に支配していた状況だった。マスカット監督は、勝ちきるのは大変かもしれないが、少なくとも2-2のまま試合を終わらせられると考えていたのだろうか。ただ、5バックで守る相手に、決定的なチャンスをつくれていたわけではなかった。

 しかしわずか10分後、仁川が勝ち越し点を挙げる。前半横浜FMの守備を悩ませたFWステフェン・ムゴシャ(モンテネグロ)とFWジェルソ・フェルナンデス(ギニアビサウ)に代えて後半半ばに投入されていたFWエルナンデス・ロドリゲス(ブラジル)とFWポール・ジョゼ・エブンゲ・ムポク(コンゴ民主共和国)のコンビが躍動し、ムポクのパスを受けたロドリゲスが抜け出して後半30分に勝ち越しゴールを決めたのだ。

■消極的な交代策

 このゴールの直前にマスカット監督は4人目の交代、左サイドバックに回っていた吉尾海夏に代えてDF永戸勝也の投入を決めていたが、失点してもその交代は実施された。これで横浜FMの交代は4人になり、アンデルソン・ロペスとエウベルという「切り札」を併せて投入することはできなくなった。そして後半34分にはロドリゲスにもう1点をゆるし、2-4になって投入されたのはMF喜田拓也に代えて同じボランチのMF渡辺皓太だった。

 こうした交代になった背景には、選手のコンディションの問題など、さまざまな要因があったに違いない。しかしこの暑さを考えれば交代は主として攻撃的な選手に使うのが定石ではないか。5人の交代のうち4人をDF(両サイドバック)とボランチに使ってしまったのでは、最後に勝ちきる力は出ない。この試合のマスカット監督の采配には、大きな疑問が残るのである。

■自信を得た甲府

 一方、翌20日に登場したヴァンフォーレ甲府浦和レッズは、定石どおりの選手交代でまずまずの結果を残した。H組の初戦、オーストラリアのメルボルン・シティとのアウェーゲーム、甲府の篠田善之監督は、前週末のJ2リーグ東京ヴェルディ戦から先発全員を入れ替えた「完全ターンオーバー」を選択。しかし後半にはFW宮崎純真、FW三平和司、そしてFWピーター・ウタカと主力の攻撃陣を投入し、優勢のまま試合を終始させて0-0の引き分けにもちこんだ。

 相手はオーストラリアの強豪である。しかし甲府はキャプテンのMF鳥海芳樹を中心にひるむことなく持ち前の攻撃的サッカーを展開、シュート数で18-7と大きく上回った。もう一歩で勝点3はならなかったが、クラブ史上初めてのアジアの戦いで自分たちのサッカーが十分以上に通じることで大きな自信になったのではないだろうか。

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