AFCチャンピオンズリーグ(ACL)が始まった。日本からは4チームが参加して、アジアの頂点を目指す。その初戦を、サッカ…
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)が始まった。日本からは4チームが参加して、アジアの頂点を目指す。その初戦を、サッカージャーナリスト・大住良之が読み解く。
■タイミングの良い主力投入
浦和レッズはJ組の初戦をアウェーで武漢三鎮と戦った。前節のJリーグ、京都サンガF.C.とのホームゲームからは5人先発を入れ替えての試合。中国勢はコロナ禍により2021年からACLに消極的になり、辞退や出場してもユースチームという形が続き、2020年大会で北京国安が準々決勝まで進出したのを最後に、2021年、2022年と勝利なしが続いていた。久々にホームで迎えるACLの戦いに、熱狂的なサポーターに支えられて奮闘した。
前半10分に浦和の守備を崩してMF張暁彬が先制したが、浦和のマチェイ・スコルジャ監督は後半の立ち上がりからDFマリウス・ホイブラーテン、MF関根貴大、そしてDF明本考浩を投入して攻撃力を強化し、後半10分に右に回ったMF安居海渡のクロスをFWブライアン・リンセンが鮮やかなヘディングシュートで決めて追いついた。
VARの介入で後半17分にPKで勝ち越し点を奪われると、スコルジャ監督はFWホセ・カンテを、さらに後半36分にはFW興梠慎三を投入。以前川崎フロンターレで指揮をとった高畠勉監督が指揮をとる武漢は1点を守ろうと必死に守備を固めたが、アディショナルタイムにカンテが見事な同点ゴールを決め、2-2の引き分けにもちこんだ。
ヴァンフォーレ甲府も浦和も「ターンオーバー」しながらの戦いだったが、タイミングの良い主力の投入で流れを変え、勝ち点をもって帰る形となった。なかでも、前半の問題点をハーフタイムの3人の交代で解決し、45分間を圧倒的なボール支配のなかで進め、その後に切り札のカンテと興梠を投入したスコルジャ監督の手腕は特筆すべきものだった。
■川崎の強い意欲
さて、日本からのもうひとつのACL出場チーム、I組の川崎フロンターレは、Jリーグでは優勝争いに加わる望みがほぼないという現状からか、この大会への強い意欲を示した。鬼木達監督は、19日に行われたマレーシアのジョホール・ダルル・タクジムとのアウェーゲームに、前週末にFC東京を1-0で破ったのとまったく同じ先発メンバーを送り込んだのだ。
ジョホールは強力な攻撃陣をもつチームだが、川崎は持ち前のパスサッカーを遺憾なく発揮して優勢に試合を進め、MF瀬古樹の積極果敢なランニングで決定機をつくった。そして前半終了間際、右からMF家長昭博がペナルティーエリアに上げたボールを走り込んだ瀬古が頭で左に流すと、FC東京戦でも決勝点を決めたFWマルシーニョが鮮やかなオーバーヘッドキックで無人のゴールに送り込んで先制した。
後半は苦しい時間帯もあったが、GK鄭成龍(チョン・ソンリョン)の好守とともに鬼木監督が的確に送り出した交代選手たちの奮闘もあって1-0のまま逃げ切った。アウェーの初戦で勝点3を得たことは、アジアのタイトルを渇望するこのクラブにとって大きな価値のあることだった。
■目を引く韓国勢の勝負強さと西地区での波乱
東地区の第1節では、韓国勢の勝負強さが目についた。F組ではアウェーながら全北現代モータースが2-1で傑志(香港)を下し、G組では仁川がやはりアウェーで横浜FMに4-2で快勝、I組では蔚山現代がホームでパトゥム・ユナイテッド(タイ)に3-1で快勝、そしてJ組では浦項スティーラーズがアウェーでハノイに4-2で勝った。
西地区で気になるのは、今夏一挙に世界的なスターを補強したサウジアラビア勢の動向だろう。だが第1節では、圧倒的な強さを見せられたわけではない。A組のアル・ファイハはアウェーながらトルクメニスタンのアハルに0-1で敗れて大きな話題となった。C組のアル・イテハドはウズベキスタンのAGMKに3-0で快勝、E組のアル・ナスルも、アウェーで強豪ペルセポリス(イラン)に2-0で勝って貫禄を示したが、前大会準優勝のアル・ヒラル(D組)は、ホームでプレーオフから上がってきたウズベキスタンのナブバホールと対戦し、1-1で引き分けた。
この後、10月に2節、11月にも2節が行われ、12月の12、13日でグループステージが修了するACL。Jリーグの終盤戦と重なり、難しい局面になるかもしれないが、横浜FM、甲府、川崎、浦和がそろってグループを突破し、来年の2月から5月にかけて開催されるノックアウトステージで勝ち上がることを期待したい。