<大相撲九月場所>◇十二日目◇21日◇東京・両国国技館 大相撲九月場所十二日目。ここまで7勝4敗同士で勝ち越しをかける北勝富士と阿武咲の一番において、熱戦を期待する館内にどよめきと困惑が広がった。立ち合い力なく立って動きを止めた両力士の様子…
<大相撲九月場所>◇十二日目◇21日◇東京・両国国技館
大相撲九月場所十二日目。ここまで7勝4敗同士で勝ち越しをかける北勝富士と阿武咲の一番において、熱戦を期待する館内にどよめきと困惑が広がった。立ち合い力なく立って動きを止めた両力士の様子に不成立か…といった空気が館内に流れたが、実際には手がついており成立。元白鵬の宮城野親方が「集中していない。雑な立ち合い」と苦言を呈する場面が見られた。一方、館内のざわめきが収まらない中、敗れた北勝富士が見せた潔く、深い一礼に対して称賛する一幕があった。
前頭六枚目・阿武咲(阿武松)が前頭筆頭・北勝富士(八角)を送り出しで下して勝ち越しを決めた一番は、立ち合い、ふわっと立った両者。互いの体が正面から力なくぶつかった瞬間に北勝富士が動きを止めたが、実際には立ち合いは成立しており、先に動き出した阿武咲が送り出して今場所の勝ち越しを決めた。一方、北勝富士は5敗目。十三日目以降に勝ち越しをかけることとなった。
この一番、取組を中継したABEMA実況の高橋大輔アナウンサーも立ち合いの瞬間に「ん?」と反応。直後に「あ、立ち合い成立。ふわっとした立ち合いになりました。送り出して阿武咲の勝ち」と困惑気味に実況を続けた。
勝ち越しをかけた実力者同士の一番に熱戦を期待していた館内は立ち合いの瞬間に静まり返ると、勝負が決した直後には一転して落胆の声。さらに何とも言えないどよめき、ざわめきがじわじわと広がっていった。
高橋アナが「二人が呼吸が合わなくて、立ち合いを止めました。ただ立ち合いは成立しておりまして、最後は送り出し」と状況を整理すると、納得がいかない様子の館内のファンとは対照的に「いま、北勝富士が深々といつものように礼をして土俵を下ります」と述べ、勝ち越しがおあずけとなった北勝富士の振る舞いに言及した。
一方、勝ち越しの勝ち名乗りを受けた阿武咲に対する拍手は少なく、コメントを求められた宮城野親方は「やっぱり阿武咲が集中してないんですね。雑な立ち合いをしてるんですね」とひと言。その後、リプレー映像を確認した宮城野親方は「手ついてますね」と立ち合いの成立を改めて確認した。
ABEMA視聴者からは「変な立ち合い」「なんで緩めた」「勝手にやめたらダメ」「行司が止めないと」「力を抜くのが悪い」「しっかり手をついてる」「成立なのか…」「ほっくんが可哀そう」など様々な声が寄せられた。
その後も館内のざわめきが収まらない中、高橋アナは再度、惜しくも敗れた北勝富士について「私、いま北勝富士が深々と礼をしたと申し上げたのですが、宮城野部屋の力士の皆さんは礼が深いと思うのですが」と親方に投げかけた。
すると、宮城野親方は「はい、そうなんですよ」と短く応じた後に「礼に始まり礼に終わる。とくに負けた時に、やっぱり人間は礼が浅くなりますから。悔しいから。そういう風に(弟子たちには)3月から伝えてます」と明かした。
さらに「よく気付きましたね」と親方が驚いたように投げ返すと、高橋アナは「私もそうかなとは思っていたのですが、元前頭・石浦の間垣親方に宮城野親方にお伝えするうえで何かありませんか? とうかがったら『宮城野部屋の力士は礼が深いですねと伝えると、ニヤッとしてお話ししてくれると思います』と言われました」と種明かし。これには宮城野親方も「びっくりしました」と笑顔を浮かべた。(ABEMA『大相撲チャンネル』)