日本のサッカースタジアムは、世界でも最高級に治安が良いと言っていい。海外では暴れん坊も多く、厳しい監視の目が注がれてい…
日本のサッカースタジアムは、世界でも最高級に治安が良いと言っていい。海外では暴れん坊も多く、厳しい監視の目が注がれている。だが、時には思わぬ人物が、その警備網を突破することがある。これは、サッカージャーナリスト・後藤健生の実験レポートである。
■メキシコで出会った笑顔
1986年メキシコ・ワールドカップの開幕戦は前回優勝のイタリアとブルガリアという顔合わせでした。最近は、開幕戦には開催国が登場しますが、当時は前回優勝国は予選免除で出場権が与えられて開幕戦を戦うことになっていました。
ただ、前回優勝国は予選免除だったので厳しい戦いを経験できず、世代交代が遅れるケースが多かったのでいつも開幕戦で苦戦していました。メキシコ大会のイタリアも、開幕戦も2戦目のアルゼンチン戦も1対1の引き分けに終わり、最終戦で韓国を振り切ってなんとか2位通過しましたが、ラウンド16でミシェル・プラティニのフランスに敗れてあっさりと姿を消しました。
さて、その開幕戦の時のことです。試合が始まってしばらくしたら、記者席の大きなデスクの向こう側に、5、6歳のかわいい男の子が顔を出したのです。
こう見えて、僕はけっこう子ども好きで、子どもの顔を見ると笑いかけたり、「バアー」とかついつい相手をしてしまいます。こちらが相手をすると、子どもは喜んでまた顔を出します。そんなわけで、開幕戦では90分間その子の相手をしながら試合を見ることになりました。
■誰かのカノジョさん?
しかし、なんで記者席に子どもがいるのでしょう? おそらく、記者の誰かが子どもを連れてきたに違いありません。
そう思って、周囲を見回すと記者ではなさそうな(アクレディテーションカードを持っていない)人が、何人も座っています。大会ボランティアのような人が記者席に座っているのは普通のことですが、ケバい化粧のお姉さんも座っています。で、別に仕事をしているわけでもなさそうです。
もしかして、記者の誰かのカノジョさんかな?
もちろん、本来はアクレディテーションなしでは記者席に入ることはできないはずなんですが、どうやら、セキュリティーはかなり緩そうです。しかし、本当に子ども(やカノジョさん)はノーチェックで記者席まで入れるのでしょうか?
■いざイタリアへ
4年後のイタリア・ワールドカップで、僕は4年間ずっと疑問に思っていた“子ども問題”を確かめてみました。自分の子ども(当時7歳)を連れて行ったのです。
子ども連れで行ったのは、準々決勝のイングランド対カメルーン戦。会場はナポリのスタディオ・サンパオロでした。
当時、ワールドカップでヨーロッパ、南米以外の国がグループリーグを勝ち抜くことはほとんどありませんでしたが、カメルーンは開幕戦で前回優勝のアルゼンチンを破って波に乗り、グループBを首位通過。ラウンド16ではコロンビアを破ってベスト8に進出して旋風を巻き起こしました。
日本でも、アルゼンチン戦で決勝ゴールを決めたフランソワ・オマン=ビイクや当時48歳だった大ベテランのロジェ・ミラが一躍有名になりました。
さて、スタディオ・サンパオロのメディア・センターの入口にやって来ました。当然、アクレディテーションカードのチェックがあります。しかし、実際に子どもはノーチェックであっさりとゲートを通過しました。