サッカー日本代表が、9月の活動を終えた。ヨーロッパへと乗り込み、ドイツ、トルコという強国にともに4得点で快勝。この初秋…

 サッカー日本代表が、9月の活動を終えた。ヨーロッパへと乗り込み、ドイツ、トルコという強国にともに4得点で快勝。この初秋の実りはどれほどの価値があり、この先の蓄えになっていくのか。ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が徹底的に語り合った。

■トルコ戦で見えた課題

――連係に関しては、これまでも一緒にプレーしてきたドイツ戦のメンバーに比べて、トルコ戦に先発した選手たちはハンディがあったと言ってもいいでしょうか。

大住 その点は、トルコも一緒なんだよね。今回のシリーズの初戦となるEURO予選のアルメニア戦に出ていなかった選手を使っていたようだから。それに、トルコの方が圧倒的に選手層は薄いし。

後藤 アルメニアからの移動も大変だっただろうね。

大住 前半のチーム同士の戦いでは、圧倒的に日本が上回った。でも、トルコが主力選手を次々入れてきたら、流れは全然変わってしまった。チームとして、トルコ戦は課題が多く残る試合だった。

後藤 ドイツ戦と守備面を比べると、個人の力の差もあるけど、スペースをつくっちゃってラインとラインの間に簡単にパスを通されたりしていたね。

大住 そうなんだよ。なんでそこをフリーにしちゃうの、というのはあるし。

後藤 やはり、ちょっとラインを上げるのにタイミングが合わなかったり、というのが多かったね。

大住 それでも前半は捕まえられていたんだけど、後半になったら相手の判断とパスのスピードが1段階完全に上がったら、まったく追いつかなくなった。良くて1対1、悪ければフリーにしてしまう。フリーで打たれたシュートが、後半だけで2、3本あったからね。

後藤 確かにふだん一緒にやっていないメンバーだったからしょうがないことではあるけど、明らかにドイツ戦とは違ったね。前線は人が入れ替わっても、ほとんど質を落とすことなくできたけどね。

■頼れるセンターライン

大住 試合中に急に相手のプレーが良くなるというのは、すごく難しいんだよ。どう対応しようか考えているうちに畳みかけられちゃうから。最後までその修正をできないままだったなという感じはした。

後藤 最後は遠藤航冨安健洋入れたら、たちまち問題は改善されちゃったんだけどね。CBの冨安と板倉滉、中盤で遠藤が元気だったら、守備はばっちりだよ。

大住 今回、再認識したけど、冨安はとにかくすごい選手だね。ボールを取って、最初に出すパスなんて、まったく質が違うよね。判断がものすごく的確で、ちゃんとパスを通せるんだから。

後藤 それに、あれだけの強さと高さがある選手が、あのスピードで走るんだもんな。昨季からケガが多くて心配だったけど、素晴らしかったよね。

大住 板倉もドイツを相手にしても、本当に堂々プレーできる。あの2人がそろっていれば鉄壁だよね。

後藤 どちらか1人がいてくれれば、谷口彰悟がいるから。

大住 伊藤洋輝という手もあるし。中盤に関しては、遠藤と同じタイプの選手が他にいないというのが気になるけどね。

後藤 藤田譲瑠チマが早く成長して出てこないかな。

■奮闘した新顔

――まだ出場機会が少ない新顔も奮闘していました。

後藤 一番びっくりしたのは毎熊晟矢だね。デビュー戦で、いきなりあれだけできたわけだから。先日、久々にJリーグの試合で生で見て、「うまくなったな」と思ってびっくりしていたら、日本代表に入った。昔のイメージしかなかったから、本当に驚いたよ。

大住 走り方に、力が入っている気がする。ランニングのコーチをつけたら、もっと速くなりそう。その辺りを改善したら、ヨーロッパでも通用する選手になるかもしれないよ。

――トルコ戦で代表初得点を記録した伊藤敦樹はどうでしたか。

大住 前半は相手のインテンシティが低かったから、プレッシャーがない中では余裕があったよね。すごく視野が幅広くて、選択肢を常に変えられる頭脳を持っているから、ボールを取られそうな形になっても取られない。常に何かしらの解決策を見出して味方につなぐプレーができる。ゴールになったシュートは素晴らしかったけど、後半に上がった試合のスピードの中で、少し消えてしまったね。なかなかボールも取れなかったし、もう1段階、国際試合に慣れていく必要があるかな。

後藤 あのポジションは競争相手のレベルが高いから、なかなか大変だよね。久々に呼ばれた田中碧の調子はどうかなと思っていたけど、彼もやはりレベルは高かったもんね。終盤には、かなり疲れていたけどね。

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