ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会で「ベスト4以上」を目標に掲げるラグビー日本代表(世界ランキング14位)は、現地9月10日に予選プール初戦を迎えた。 開幕戦の相手・チリ(同22位)はワールドカップ初出場国。ただ、今回の予選ではワ…
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会で「ベスト4以上」を目標に掲げるラグビー日本代表(世界ランキング14位)は、現地9月10日に予選プール初戦を迎えた。
開幕戦の相手・チリ(同22位)はワールドカップ初出場国。ただ、今回の予選ではワールドカップ常連のカナダやアメリカ代表を粘りのラグビーで倒して出場権を獲得しており、十分に実力のあるチームだ。
日本の選手たちも声を揃えて「初戦のチリ戦が一番難しい」と言っていただけに、どのようにして試合の主導権を掴んでいくかに注目が集まった。
リーチマイケルは攻守にわたってチームに貢献
しかしながら前半6分、大応援団の声援に背中を押されたチリに日本ディフェンスの隙をつかれ、いきなりワールドカップ初トライを許してしまう。
ただ、日本はこの状況でも、至って落ち着いていた。
「どんどん相手ゾーンに入っていって、スコアを狙いにいくというプランだった」(SO松田力也)と言うように、相手の反則後にPG(ペナルティゴール)を狙わず、タッチに蹴ったりスクラムを選択したりするなど積極的にトライを求め、プレッシャーをかけていく戦略を取った。
※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)
その後はチリの激しいディフェンスにプレッシャーを受けてミスする場面もあったが、新星LOアマト・ファカタヴァが2トライ、エース格に成長を遂げつつあるWTBジョネ・ナイカブラが1トライを挙げて、前半を21-7で折り返すことに成功した。
後半は中盤からキックをうまく使ったことで、試合のペースを完全に握ることができた。
終盤はチリの動きに疲れが見えてきたこともあって、さらに3トライを奪取。松田がゴールを6本全部成功させたことも功を奏し、終わってみれば42-12で快勝した。しかも「4トライ以上」のボーナスポイントを加え、勝ち点5を獲得できたことは次に向けて大きい。
【リーチマイケルの豊富な国際経験が表れた試合】
この試合でひと際輝いていたのは、やはりFLリーチ マイケルだろう。前半は力強いランからチャンスを作り、後半13分には相手を突き放す4トライ目を奪取。守備面でもジャッカルやタックルを15回も試みるなど、34歳とは思えぬ力強さでまったく衰えを見せなかった。
過去2大会、リーチはキャプテンとして臨んだ。しかし今大会は「自分のプレーに集中したい」と特別役職に就かなかった。初戦から出色の出来を見せたのは、それもあるだろう。
ワールドカップ4大会目の出場となるリーチは、このチリ戦で通算14試合目。「鉄人」トンプソン ルークの持つ記録と並んでトップタイとなった。また、通算81キャップは「うなぎステップ」で名を馳せたWTB小野澤宏時と並んで歴代2位タイ。次のイングランド戦に出場すれば、通算試合数はトップに、通算キャップ数は2位となる。
ただ、当のリーチ本人は「(数字は)数えていなかったし、考えていなかった」とまったく気にかけていない様子。それより、チリの大応援を受けて「予想していなかったのは(チリ代表の応援の)観客の熱さ。アウェー感があった」と語り、「80分間通して相手にプレッシャーをかけ続けることができて、勝ちきれたことはよかった」と安堵の表情を見せた。
先制トライを許したことには「すぐに切り替えられた」と語り、自身のトライシーンについては「狙いどおり!」と語気を強めたリーチ。彼の豊富な国際経験が表れた試合となった。
また、懸念されたキャプテンNo.8姫野和樹の直前での欠場についても、リーチは冷静に状況を見つめている。「本人は(初戦から)いけると言っていたが、ここで試合に出てケガしたら、来週(イングランド戦)迷惑をかける。来週、姫野が爆発してくれることを期待したい!」。
今夏の強化試合では1勝5敗と、日本は調子の上がらないままワールドカップ本番を迎えた。しかし、大事な初戦でチリに快勝したことで、リーチも「勢いに乗れると思います!」と声を弾ませた。
【過去0勝10敗のイングランドに勝利するカギは?】
いよいよ9月17日の第2戦は、予選プールDで唯一ワールドカップ優勝を経験している「ラグビーの母国」イングランド(同8位)と対戦する。
イングランドは初戦でアルゼンチン(同6位)と対戦し、キックオフ早々にレッドカードを受けてひとり退場という状況に追い込まれた。だが、司令塔のSOジョージ・フォードがDG(ドロップゴール)を3本、PGを6本決める大活躍で、ノートライながら27-10で初戦を制した。
昨年11月、日本は敵地でイングランドと対戦し、13-52で大敗を喫している。リーチは「前回の対戦ではアタックができなかった。ハイボールの処理もできなかったので、戦うエリアがカギになると思います」と分析した。
これまでの成績は、日本の0勝10敗──。イングランドには過去一度も勝てていない。しかし、前々大会、前回大会と何度もアップセットを起こしてきた「ブレイブブロッサムズ」だけに、次の決戦の地ニースでも再び奇跡を起こしてくれることを期待したい。