デビューイヤーの今季、4月のフジサンケイレディスでツアー初勝利を飾ってブレイク中の神谷そらが、20歳にして日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(長崎県・パサージュ琴海アイランドGC)でメジャー優勝も遂げた。「優勝した実感がなくて、ソワソワし…

 デビューイヤーの今季、4月のフジサンケイレディスでツアー初勝利を飾ってブレイク中の神谷そらが、20歳にして日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(長崎県・パサージュ琴海アイランドGC)でメジャー優勝も遂げた。

「優勝した実感がなくて、ソワソワした、不思議な感覚です」

 すべてのセレモニーを終えた神谷は、素直な気持ちを吐露した。

 というのも、昨年の日本女子プロ選手権の頃はプロテストに備えて練習場にいて、同い年の川﨑春花の初優勝をテレビで見届けていた。ちょうど1年後、自分が川﨑と同じ立場になったことが現実とは思えなかったのだ。

「はるちゃんの優勝を『すごいなぁ』と最初は思ったんだけど、次第に『悔しいなぁ』になって、『じゃあ、私も頑張ろう』となった(笑)。プロ生活のなかで、一度はメジャータイトルを獲りたかった。それを、ルーキーイヤーで獲れて本当によかった」



日本女子プロ選手権を制した神谷そら

 3日目を終えて、首位に立った小祝さくらと2打差の3位で最終日を迎えた神谷は、1番パー5で2オンに成功。6mのイーグルパットこそ外したものの、"おはようバーディー"発進を決めた。9番パー5でこの日3つ目のバーディーを奪って小祝に追いつくと、インに入ってからも難関ホールの10番パー4でスコアを伸ばして単独首位に立つ。

「スタート時は、緊張感はなかったです。昨日も最終組で回って、『頑張れた』と自己評価していた。今日は『69』を目標にしていました」

 前日は熱中症にも苦しめられたが、その後、たっぷり10時間の睡眠をとって体調は回復。最終日のコンディションに不安はなかった。

 一時は小祝との差を3打に広げたものの、「優勝を意識しはじめた」という16番でボギーを叩き、一方の小祝は17番パー3でバーディーを奪い、最終ホールを1打差で迎えた。

「(小祝の追い上げは)ドキドキしていました。17番のティーショットで(小祝は)あの緊張感のなか、ピンに絡むショットを打っていた。16番でも私が外したパーパットを同じようなところから入れたり。ぜんぜんレベルが違うなと思いながらプレーしていました」

 それでも逃げきった。

「自信につながってくれるとうれしい」

 神谷はフジサンケイレディスの優勝後、ちょっとした苦境も味わっていた。

「優勝して生活が変わって、夏のはじめには優勝争いにも絡めなくて、予選落ちしたり、やりきれない試合があって後悔したりして、モヤモヤした日が多かった」

 それを振り払ったのは、神谷の武器である飛距離だ。最終日にはドライバーであわや300ヤード越えのショットもあった。

「小さい頃から飛んでいて、小学3年生の時には200ヤード飛んでいた。当時入っていたスクールが大人(対象)のスクールで、ジュニアの子が他にいなかった。練習場では成人男性の方と一緒で、コンペも一緒に回っていた。

 そこで(大人たちに)なんとか追いつこうと思って(クラブを)振っていたのが、今の飛距離につながっているのかな。それを生かして(今後も)攻めのゴルフを貫いていきたい」

 フジサンケイレディスで初優勝して以来、海外の強豪選手が集まる11月上旬のTOTOジャパンクラシックで戦うことを、ひとつの目標に据えている。それが、遠い未来の夢につながると神谷は考えているからだ。

「いずれは海外に行きたい。アマチュアの大会で海外に行くことはこれまでもあったけど、USLPGA(の試合)はまだ出場したことがない。同ツアーで戦う方たちが来る場で、どこまで自分が通用するのかを確認したいんです」

 同大会でもし優勝すれば、米ツアーのメンバーにもなれる。

「はい、知ってます(笑)」

 だが、まだその時期ではないことも理解している。

「1年目で優勝争いに加わる回数も少ないですし、技術的にも足りない。TOTOに出られたら、今の自分の現状がわかるので、そこからコーチと相談して、いつかは......」

 期待の新星は、しっかり足もとを固めて将来を見据えている。

神谷そら(かみや・そら)
2003年4月18日生まれ。岐阜県出身。2022年にプロテスト合格。同年のQTで7位に入って2023年ツアーから本格参戦を果たす。ルーキーイヤーながら、4月のフジサンケイレディスでツアー初優勝を飾り、日本女子プロ選手権でメジャー制覇も遂げる。9月10日現在、メルセデス・ランキング11位。ドライビングディスタンス1位。身長167cm。血液型AB