元日本代表・城彰二氏への直撃インタビューの第4回。今年6月に刊行され、7万5000部のベストセラーとなっている、三笘薫…

 元日本代表城彰二氏への直撃インタビューの第4回。今年6月に刊行され、7万5000部のベストセラーとなっている、三笘薫選手の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』。同書を読んで同じFWとして城氏が感じた凄さとは? さらに、自身の経験から未来のサッカー日本代表を担うサッカー少年への提言も!

――三笘薫選手の初の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』を読んだ感想を教えてください。

「三笘選手ほどの実力のある選手が、現役中に、ここまで自分の秘密をさらけ出しているのかと素直に驚きました。一方で、三笘選手は現在進行形で進化しているので、全てをオープンにしても平気だ、自分はさらにその先へ行けるといった自信も感じましたね。それにしても、ここまで言ってもいいのかな、相当ぶっちゃけてくれたなって印象はありますけどね(笑)」

――城さんの目から見て、『VISION』のどの項目に惹かれましたか?

「やっぱり、ドリブルの技術論ですね。彼の一番の特徴でしょうし、そのドリブルを習得するために、相当な練習量を重ねてきたんだなと。また、タイミングなどの感覚だったり、どういう意識、考えで練習していたなど、本人にしかわからない部分もしっかり記されていたので、すごく参考になりました。

 一方で、三笘選手のドリブルの難しさ、僕たちには持っていない感覚があるなと気づかされた部分もありました。正直、次元がちょっと違いますね。みんながみんなリオネル・メッシ選手になれるかって言えばなれないように、みんな三笘選手になれるかと言えばなれない。でも、彼の頭の中、体の仕組みなどが垣間見えるし、 サッカーを上達するためのヒントがこの本にはあるような気がします」

■「基礎技術がないと、何も積み重ねられない」

――今回のインタビューで、三笘選手の武器に、視野の広さと、ファーストタッチの正確さを上げていました。三笘選手の著書『VISION』の中では、それらを得るための基礎技術として“止める・蹴る”という考え方を挙げています。

 城さんが考える、フォワードに必要な技術、または、自分が現役だった時に大切にしていた技術や、次世代のフォワードに求める技術があれば、教えてください。

「同じく、ボールを止める・蹴る。この基礎技術がないと、何も積み重ねられないんですよ。僕は、これまでいろんなタイプの選手を見てきました。中には、足先でボールを動かしながら、ポンポンって軽やかに相手を交わしていく選手もいて、上手だなと思ったりもするんですが、そういうタイプの選手って長く持たないんですよね。せいぜい、1年、2年の活躍で終わっちゃう。
 『VISION』に書かれているように、止める技術、そして正確にパスを出す技術が大切で、それがしっかりしている選手は長続きします。その良い例が、遠藤保仁選手で、彼は40歳を超えてもボールコントロールの技術は衰えていない。だから、いまだに高いレベルでプレーができているんです。

 なので、自分の思ったとこに止められる、自分が思ったところに蹴られる。その技術を習得するための練習を積み重ねないとダメだと思います。それも、ハイプレッシャーの中で。相手の圧がないフリーな状況で、ボールの扱いがうまくても意味がないですからね。そういうタイプの選手って、日本人に多いんですよね」

――すると、プレッシャーの中で技術を磨くには、実戦を重ねるしかない?

「もちろんそうですし、練習も試合に近い意識でやる必要があります。

 海外に所属している日本人選手って、海外選手の足の長さだったり、独特な間の取り方とか、当たりの強さとかを練習でも感じられるんですよ。だから、トップレベルのチームに所属して、そこの練習に参加するのはとても重要。そこらへんで、国内組と海外組の成長に差が出ている部分があると思います」

■「セルフケアの知識を学んで、自分で体を管理しないとダメ」

――では、国内の川崎フロンターレユースで育った三笘選手が、イギリスのプレミアリーグですぐに活躍できたのはすごい?

「そうですね。でも、彼は大学時代からボールコントロールが抜群でしたし、独特のリズムのドリブルがあったので、今の活躍はなんら不思議ではないですけどね」

――三笘選手のドリブルの特徴とは?

「ドリブルは、体の前にボールを置いて運ぶというのが基本とされています。でも、三笘選手は体を前にして、ボールを後ろに置いてドリブルをするんです。体を先行させながら、ボールを後ろで運ぶような、すごく独特なんですよね。そして、このドリブルの仕方って、フットサル選手がよくやるんですよ。

 そして、ブラジル代表ネイマール選手も、実は、三笘選手と同じタイプのドリブルをするんです。彼は、小さい頃にフットサルをやっていたので、自然とそういった形になったんだと思います。先ほど述べたように、僕らのころは、体の中心、もしくは体の前にボールを置いて運びなさいというのが常識だったので、三笘選手とネイマール選手のドリブルは、新しいと思いました」

――『VISION』の中では、三笘選手流の食事術も載っています。先ほど、日本人選手の海外リーグ挑戦の難しさという部分で、体をいかに休められるかという点を挙げていましたが、城さんが現役時代に実践されたリカバリー術があれば、ぜひ教えてください。

「著書を読んでみて、僕らの時代とは大きく違うなと思いましたね。僕らの子どものころは情報やモノが、今ほど充実していなかったので、今の子たちの参考になる部分は少ないと思います。

 でも、基本的な考え方として、試合が終わったあと、練習が終わったあとの30分から1時間以内に、しっかり栄養を補給すること。そうすると、回復能力が段違いなんです。特に、これから成長期で体を作る子どもたちは、しっかり補給してほしいですね。

 トレーニングをすると、筋肉が壊れて、その壊れた筋肉が再生することで、より強い体になります。その過程で、栄養補給が必要不可欠。なにも食べないと筋肉の回復が遅れたり、回復が不十分になったりして、体に疲れやダメージが蓄積します」

――なにを食べるのがよいでしょう?

「定番のバナナでもいいですが、自分で調べて、自分に必要な栄養を補給するのが一番。プロのように、すべてチームが用意してくれる環境は稀ですから、セルフケアの知識を学んで、自分で体を管理しないとダメです。

 僕も、ラリーガ時代は、チームの方針で、試合の3時間前に脂身の少ないステーキを食べさせられたし、だいぶ苦労しました。試合でエンジンがかかるなんて言って食べさせられましたが、消化が間に合わなくて、胃が重たいときもあったり(笑)。今では笑い話ですが、やっぱり正しい食事をしなくちゃダメですね」

城彰二(じょう・しょうじ)
1975年6月17日北海道生まれ。鹿児島実業高等学校3年時の高校サッカー選手権大会でベスト4に入るなど、プロ入り前から活躍し、高校卒業後にジェフユナイテッド市原に加入。デビュー戦を含め4試合連続でゴールを決めるなど、若くして注目の選手となる。その後、横浜マリノスへの移籍などステップアップを続け、A代表として1997年、フランスW杯アジア最終予選に参加。悲願の本選初出場を決めたチームにおいて、エースストライカーとして活躍する。現役引退後は、解説者として活躍。現在はユーチューブチャンネル『JOチャンネル』での動画配信など、サッカーの魅力を発信し続けている。

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