フルトン陣営のクレームにも難なく対応して、圧倒した井上。そのパフォーマンスを米老舗誌の編集長が称えた。(C)Getty Images 日本人戦士が歴史を紡いだ瞬間だった。去る7月25日にWBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者ステ…
フルトン陣営のクレームにも難なく対応して、圧倒した井上。そのパフォーマンスを米老舗誌の編集長が称えた。(C)Getty Images
日本人戦士が歴史を紡いだ瞬間だった。去る7月25日にWBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)を打ち破り、4階級制覇王者となった井上尚弥(大橋)だ。
下馬評ではフルトンを有利と見る声もあった。しかし、井上はそうした風潮を自らの拳で打ち消した。21戦無敗を誇る“難攻不落の王者”をリング上でフラフラにし、8回TKOで締めた圧倒的なパフォーマンスは、日本が生んだ怪物への声価をより一層、高めた。
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そうしたなかで、小さくない話題となったのは、米老舗誌『The Ring』が試合後まもなくして発表したパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングだ。
創刊101年を誇る同誌は、史上初となる2階級での4団体統一を果たしたテレンス・クロフォード(米国)を1位に選出した。井上の試合から4日後に実施された世界ウェルター級4団体王座統一戦で、3団体統一王者エロール・スペンスJr.(米国)から3度のダウンを奪った35歳のベテランを高く評価したのである。
クロフォードのパフォーマンスも圧巻の一語だった。ゆえに同誌によれば、「テレンス・クロフォードこそがふさわしい男だった。議論はなかった」という。しかし、そんな編集部のなかで唯一、井上に1位票を投じていたのが、編集長を務めているダグラス・フィッシャー氏だった。
なぜフィッシャー氏は井上を「世界最強」としたのか。現地8月31日に米YouTubeチャンネル『3 Knockdown Rule』に出演した本人が、その理由を説明した。
「イノウエの何が素晴らしいかってのを話すといろいろとある。あの試合(フルトン戦)で言うと、彼は試合前にフルトン陣営にバンテージの巻き方を見られていて、それに対して『これでいいか? これが君たちの望む形か?』って全てを飲み込んでいたんだ。そのうえで圧勝したんだよ。あれだけ万能な優れた選手に対してね。
フルトンはまさに全盛期にあって、全戦無敗、それに無敗の選手を何人も倒してきてるんだ。さらにイノウエにとってあの試合はスーパーバンタム級で初めての試合だった。これこそPFPにふさわしいってことさ」
相手陣営からの“難癖”にも動じず、王者となった井上の堂々たる振る舞いを評価したフィッシャー氏は「イノウエよりもクロフォードが上だと言うこともできた」と吐露。そのうえで、「でも、僕はスペンスよりもフルトンの方がより万能だと思っているんだ」と強調し、改めて“モンスター”への賛辞を語っている。
「自分が少数派なのはわかっているけど、僕はクロフォードのそれよりもイノウエの勝利の方がより印象的だと思った。今でも『モンスターこそがPFP1位だ』と考えているよ。ただ、どちらが1位でも間違いではない。クロフォードを選ぶ人たちを否定はしない。だから、『クロフォードとイノウエ、そして他の選手たち』っていうのが僕の意見だ」
年内にマーロン・タパレス(フィリピン)との4団体統一戦を実施する見込みとなっている井上。クロフォードに続く2階級での4団体統一王者となれば、フィッシャー氏が“少数派”とは言えなくなりそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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