レース週末を通して寒々しい気候だったオランダから、わずか1時間半のフライトでミラノに降り立つと、一気に夏のような陽気になった。 モンツァにやって来た角田裕毅も、先週の悔しさを引きずることなく、晴れやかな表情を見せた。角田裕毅は晴れやかな表…

 レース週末を通して寒々しい気候だったオランダから、わずか1時間半のフライトでミラノに降り立つと、一気に夏のような陽気になった。

 モンツァにやって来た角田裕毅も、先週の悔しさを引きずることなく、晴れやかな表情を見せた。



角田裕毅は晴れやかな表情でモンツァ入り

「タイヤがラップごとにそこまで大きく落ちていくという感覚はなく、マシンバランスも悪くないので、最後まで行けるんじゃないかなという状況でした。チームとしても『ステイアウトで行ける』とのことだったので、僕もそれに賛成しました。

 ペース自体はそこまでよくなかったし、余裕でトップ10に入れる感じでもなかった。なので『何かに賭けなければいけない』ということで、賭けに出てステイアウトしたんです」

 オランダGPの戦略はうまくいかず、8位を走行しながら、ポイントには手が届かなかった。

 為す術なく次々と抜かれていく姿にファンの憤懣(ふんまん)も募った。しかし角田の語るとおり、タイヤのデグラデーション(性能低下)が小さいと読んだチームの判断ミスだった。

 実際にはグリップ低下もペース低下もあまりなかったのだが、それは路面コンディションが雨からどんどん改善していくことで得られた効果であって、実はタイヤ自体は性能がどんどん低下していた。その読みを反映できなかった結果、アルファタウリのレースシミュレーションは誤った戦略を提示し、チームはそれを信じて選んでしまったのだった。

 アルファタウリのトラックサイドエンジニアリング責任者のジョナサン・エドルスはこう語る。

「我々はランド・ノリス(マクラーレン)よりも先にピットインすることを検討していたし、ソフトタイヤに交換したドライバーたちのペースも見ていた。しかし、シミュレーションツールへの入力に問題があったため、間違った答えが弾き出されていたんだ。

 それが問題だった。自分たちのデータを見れば、結果的にはもう一度ピットストップすべきだったのは明らか。シミュレーションツールが間違った答えを我々に提示していた」

 すでにそのツールは修正を施したため、今後のレースシミュレーションは改善されるという。

【モンツァ用リアウイングとの相性は悪くない】

 チームと角田自身、全員で選んだこの戦略が間違いだったことは確かだ。

 しかし、ここから学んでさらに成長することが重要である。前半戦最後のベルギーGPから大きく変わった角田のアプローチが、さらにいいかたちで結果につながるまでには、もうしばらくこうした試行錯誤がいることだろう。

 今週末のイタリアGPは、言わずと知れた超高速サーキットのモンツァで行なわれる。

 このモンツァに対し、角田は自信を持っていると言う。

「コーナー自体は自信あります。縁石だったりバンピーなところでは、メカニカル的に僕らのクルマはけっこう良い。縁石に乗ったときの振動も少ないですし、クルマの挙動が変わりにくい。

 僕らのクルマは、高速コーナーではとてもうまく機能すると思う。マシンに合っているのではないかと思います。夏休み前のスパでもローダウンフォース仕様で走った時、マシンバランスはとてもよかったですし」

 ベルギーGPでは最高速を稼ぐため、モンツァ用のリアウイングを装着して走った。しかし、マシンは思いのほかフィーリングがよく、第4戦アゼルバイジャンGP以来の入賞を果たした。

 その一方で、不安もある。もちろんストレートスピードだ。

「心配なのはストレートスピードですね。クルマのドラッグが多くてストレートが伸びないんですが、ここは特にストレートスピードが重要なので、そこだけがちょっと心配です。

 そこはFP1を見て、どうなるかですね。どのチームも最も低いダウンフォースレベルで走るので、ものすごく速くて、シケインへのブレーキング、特にターン1へはハードブレーキングでトリッキーです」

 AT04は依然としてライバルよりもドラッグ(空気抵抗)が大きく、ストレート車速が伸びない。ライバルたちも薄いリアウイングを装着してくるモンツァで相対的な競争力がどうなるか、そこが心配というわけだ。

 ただし、同様の特性を持つアゼルバイジャンGPでも長いストレートで十分にライバルたちと渡り合えているのだから、モンツァでも戦える可能性はありそうだ。

【アルファタウリは久々の凱旋レースに気合十分】

 チームにとって、ここは地元グランプリ。今年はファクトリーのあるファエンツァから最も近いイモラのエミリア・ロマーニャGPが豪雨でキャンセルとなっただけに、このイタリアGPにかける思いは強い。

 角田としても、チームリーダーとしてここで力強いレースを見せ、チームに大きな喜びをもたらすことの重要さをはっきりと認識している。

「チームにとってはとても重要なレースです。特に今年は一番ホームに近いイモラがキャンセルになってしまったので、チームの誰もが今週末のレースに向けてワクワクしています。特にイタリア人スタッフはそうですね。とにかく、今週末はいい結果が獲得できればと思っています」