夏休み明けの角田裕毅は、よりいっそう精悍な顔つきになったように感じられた。表情だけではない──振る舞いや、体つきも。今シーズン開幕前に会って感じた"変わった感"が、デジャブのようにまたやってきた。角田裕毅の巻き返しが期待されるシーズン後半…

 夏休み明けの角田裕毅は、よりいっそう精悍な顔つきになったように感じられた。表情だけではない──振る舞いや、体つきも。今シーズン開幕前に会って感じた"変わった感"が、デジャブのようにまたやってきた。



角田裕毅の巻き返しが期待されるシーズン後半戦

「そうですか? そんなにいっぱいトレーニングしたわけじゃないんですけど、日焼けしてビールをいっぱい飲んだからじゃないですか?(笑)」

 カナリア諸島の火山島テネリフェに行って、非日常の自然環境を彼女とふたりで満喫してきたらしい。1週間を完全なオフとして過ごし、その後はオーストリアのザルツブルクにあるレッドブルの『アスリート・パフォーマンス・センター』で6日間のトレーニングに勤しんできた。

 きっとそれなりにタフなトレーニングのはずだ。だが、それを「そんなにしていない」と言えるくらい、今の角田は肉体的にも、そして精神的にも成長したということだろう。

 前半戦最後のベルギーGPで本来のリズムを取り戻し、シーズン序盤戦のような落ち着いたレースを見せることができたのも大きかった。

「ハンガリーではダニエル(・リカルド)を意識しすぎてリズムを失ってしまいましたが、ベルギーGPでは悪い雰囲気をシーズン後半戦に引きずりたくなかったので、いい結果を出すことが重要だと思っていました。

 あそこでチームに対して、自分がポイントを獲れるドライバーだということを示せたのはとても重要だったと思います。チームのみんながとても喜んでくれたのもよかった」

 ハンガリーGPのレースを終えて、リカルドがレース中の無線でどれだけ細やかなフィードバックをしていたかを知り、翌週のベルギーGPでその改善に取り組んだことが好結果につながった。

 その改善はこの夏休みの間にも続け、シーズン後半戦も続けていくという。

「彼はレース中のタイヤのフィードバックにすごく長けていて、僕の100倍くらいタイヤの状況をフィードバックしていたんです。スパ(ベルギーGP)ではそういうところを意識して、常にタイヤのフィードバックをするようにしました。それでもまだ足りていないんですけど。

 ただ、前よりもずいぶんフィードバックすることで、チーム側も状況を理解しやすくなりますし、戦略も組み立てやすくなります。まだ完全にはできていないんですけど、このサマーブレイクの間に、もっとこういうところが改善できるというところを見つけました。今後もさらにインプルーブしていきたいと思っています」

【課題はダウンフォース不足】

 自分がこれだけやれると、わかっていること。

 それをやるために、最大限の努力をしていること。

 そして実際に、結果につなげること。

 それが自信につながる──。夏休み明けの角田の表情や態度には、その自信がみなぎっているように感じられた。

 シーズン前半戦を通して、アルファタウリはフロアや前後ウイングなど様々なアップデートを投入してきた。だが、AT04を着実に進歩させることはできているものの、まだ足りていない部分もある。

「マシンバランスのキャラクター性と、ドラッグが少なくなってストレートスピードは少しよくなったなと思います。逆に足りていないのは、ドラッグ(空気抵抗の削減)と低速のダウンフォースですね。コーナーの進入から中間までのダウンフォースで、そこはシーズン序盤に抱えていた問題を完全には改善しきれていない状態です」

 第14戦オランダGPのザントフォールトは高速コーナーが多く、モナコとハンガリーに次いで最大ダウンフォース量がモノをいうサーキットだ。低速コーナーへのハードブレーキングはそれほど多くないものの、ダウンフォース量の乏しいアルファタウリは、特に予選で苦戦を強いられる可能性が高い。

 そしてオーバーテイクが難しいザントフォールトでは、誰もが予選に比重を置いて、より前方のグリッドを獲得しようと狙ってくる。

「ザントフォールトでは過去2回レースをしていますけど、去年はQ3に進めたものの、まだ一度も完走できていません。今週はそこをきちんとやりたいと思っています。

 すごく急なバンクつきコーナーだったり、特殊な要素があったり、低速と高速がミックスされたテクニカルなサーキットで僕は好きです。フィジカル的にもかなり厳しいサーキット。コース幅もすごく狭いですし、予選にかなり集中してレース週末を戦うことになりますが、ここまでのところ僕らは予選でかなり苦しんでいるので、そこがどうなるかですね」

 マシンのピークパフォーマンスが求められるザントフォールトでは、決してラクな戦いにはならないだろう。しかし、全車がマキシマムダウンフォースのパッケージで臨むからこそ、ドラッグの大きさはそれほど大きな不利にはならない。あとは、中高速コーナーでの挙動を、ドライバーの腕でなんとかする。

 今週末のオランダGPは、さらなる成長を果たした角田裕毅の実力を見せつける絶好の機会になりそうだ。