イギリス・ロンドンで開催された「ウィンブルドン」(7月3~7月16日/グラスコート)。 女子シングルスの決勝でビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)を倒した少しあと、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、オールイングランド・クラブのメンバーにな…

 イギリス・ロンドンで開催された「ウィンブルドン」(7月3~7月16日/グラスコート)。

 女子シングルスの決勝でビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)を倒した少しあと、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、オールイングランド・クラブのメンバーになったという印である紫と金の丸いバッジを与えられた。これは大会優勝者に与えられる名誉会員のステータスなのである。

「うれしくて、すぐに身に着けるわ、という気分だった」とムグルッサは言った。

 そんなわけで彼女は、その手に入れるのが非常に難しいピンを、ジッパーのついた白いジャケットの胸の少し上あたりにつけ、何人かの記者と話している間、それを指で弄んでいた。

 ムグルッサは、2015年のウィンブルドン決勝でビーナスの妹セレナに敗れたあとには、もちろん同じような扱いは受けなかった、と言い添えた。準優勝者は、この有名クラブのメンバーシップも、その特権も得ることはできない。

「すべて得られるか、何もないかなのよ」とムグルッサは言った。「だから余計に、今年、ついに私はやってのけたんだわ、と実感したわ」。

 このビーナスに対する7-5 6-0の勝利と、昨年の全仏決勝でのセレナに対する勝利のおかげで、23歳のムグルッサは、グランドスラム大会決勝でウイリアムズ姉妹の双方を破った唯一の女子プレーヤーとなった。そのことだけでも、ムグルッサを、テニスというものを変えたふたりの女性の跡継ぎ候補とみなす、正当な理由になるだろう。

 ムグルッサの勇敢でアグレッシブなプレースタイル、大舞台で強いという類似性に加え、彼女は間違いなく、ほかの何よりもやりたいと望んでいることをやり続けられる人物であるように見える。そのやりたいこととは、グランドスラム大会で優勝することだ。

 例えば、それはランキングで何位か、ということ以上に、彼女にとって重要なことなのである。彼女は世界15位の選手としてウィンブルドンに至ったが、月曜日には5位に浮上することになる。彼女のキャリア最高ランキングは2位だが、そういったことはムグルッサにとって大きな関心事ではないようだった。

「ナンバーワンになったらどんな感じがするものなのかはわからないわ。いつの日か世界1位になれたらいいけれど----そうなれば、その感じを比べられるから」と彼女は言った。「でも今のところ、私は世界10位でグランドスラム大会優勝を果たせるほうが、世界1位でいることよりよい、と感じている」。

 彼女自身と他の者が同意しているキー・ポイントは、より安定性を身につけることだろう。ビーナスに対する土曜日の決勝は、ムグルッサにとって2016年全仏オープン以来の決勝だった。

 言っておくが、2016年以来のグランドスラム大会決勝というだけでなく、すべての大会を含めての、一年数か月ぶりの決勝だったのである。

 真のエリートの中に自分の場所を確立するために、彼女はもっともストレスのかかる状況で見つけることのできているパワーと正確さを、より頻繁に発揮する必要があるだろう。

「もう少し一貫性、安定性を保てるといいのだけれど」とコンチタ・マルチネス(スペイン)は言った。スペイン・フェドカップ監督であるマルチネスは、ムグルッサの通常のコーチであるサム・ シュミクが、子供の誕生に際し休みをとっていたため、このウィンブルドンの間、ムグルッサのコーチを務めていた。

「カギは、ルーティーンの練習を、ハードワークを続けることよ」とマルチネスは言った。「そして、プレーするすべての大会で集中することも重要だわ」。

 また、注目し続ける価値のあることがひとつある。ムグルッサが、この最新の栄光の余波に、どう対処するかということだ。

 ムグルッサは、自分の最初のグランドスラム大会優勝にともなった期待に対処することは、非常に重く厄介なことだったと認めた。それは、今季の23勝13敗という成績をはじめ、昨年の全仏オープンの優勝以降、このウインブルドン開始時までの彼女の成績が、あまりよくなかった要因のひとつでもある。

「非常にいいプレーをしていて、その調子を続けたいのにそうならないというのは、辛いことだわ。『どうして私は毎週いいプレーができないの?』と自問したくなる」と彼女は言った。

 先月のロラン・ギャロス(全仏)で、ムグルッサは4回戦負けを喫した。彼女はその試合後の記者会見で、タイトルを防衛しようと努めることのプレッシャーについての質問から、ついに逃れることができてうれしい、と言いつつ、涙にむせんだ。

「今、私は似たような問題を抱えることになるわね。でもそれは、素敵で贅沢な問題でもある」とムグルッサは言った。「(全仏に負けたあと)ただ、本当に素早くページをめくったの。数日間は悲しかった。でも『ただ忘れるのよ』と自分に言い、それで大丈夫だった、私は忘れたのよ」。

 チャレンジは、昨年のパリでの特別な2週間と、今年のロンドンでの特別な2週間にやってのけたプレーを、どうやって生み出すかをより頻繁に思い出すことだ。

 もしそれをやってのけられるなら、彼女が勝ち獲れるグランドスラム・タイトルがいくつになるか、誰にもわからない。(APライター◎ハワード・フェンドリック)(翻訳◎テニスマガジン)

※写真は「ウィンブルドン」でビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)を倒し、2016年全仏オープンに続く、グランドスラム2勝目を挙げたガルビネ・ムグルッサ(スペイン)。(写真◎Getty Images)

Photo: LONDON, ENGLAND - JULY 15: Garbine Muguruza of Spain looks on in victory after the Ladies Singles final against Venus Williams of The United States on day twelve of the Wimbledon Lawn Tennis Championships at the All England Lawn Tennis and Croquet Club at Wimbledon on July 15, 2017 in London, England. (Photo by David Ramos/Getty Images)