WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 次週、今季メジャー第3戦の全英オープン(7月20日~23日/ロイヤルバークデールGC/イングランド)が開催されるが、ここまで過去7戦、メジャー大会は「初制覇」という状況が続いてい…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 次週、今季メジャー第3戦の全英オープン(7月20日~23日/ロイヤルバークデールGC/イングランド)が開催されるが、ここまで過去7戦、メジャー大会は「初制覇」という状況が続いている。

 皮切りとなったのは、2015年の全米プロ選手権。ジェイソン・デイ(29歳/オーストラリア)のメジャー初制覇だ。以降、2016年のマスターズはダニー・ウィレット(29歳/イングランド)が、全米オープンはダスティン・ジョンソン(33歳/アメリカ)が、全英オープンではヘンリク・ステンソン(41歳/スウェーデン)が、そして全米プロ選手権はジミー・ウォーカー(38歳/アメリカ)が勝って、それぞれ初のメジャー制覇を遂げた。

 さらに今季もその傾向は続き、マスターズを制したのは、セルヒオ・ガルシア(37歳/スペイン)。メジャー参戦74試合目にして、ようやく手にしたメジャータイトルだった。そして、松山英樹(25歳)が2位に入った全米オープンでも、ブルックス・ケプカ(27歳/アメリカ)がメジャー初優勝を飾った。

 連続するメジャー初制覇――この不思議なトレンドは、どうしてこんなに続くのだろうか?

「メジャー初制覇といっても、デイ、ジョンソン、ガルシアと、ビッグネームが続々と勝っている。しかし、1度(メジャーを)勝ったからといって、2勝目を挙げるのが決して簡単なことではないのが、メジャー大会の厳しいところだ」

 そう語るのは、2013年の全米オープンを制して初のメジャータイトルを獲得したジャスティン・ローズ(36歳/イングランド)。昨年はリオデジャネイロ五輪で金メダリストに輝き、今年のマスターズではガルシアと熾烈な優勝争いを演じて2位となったが、彼もまた、初制覇以来メジャー勝利からは遠ざかっている。

 やはりメジャー2勝目を挙げるのは、1勝目よりもさらに難しく、大変なことなのか。近年初めてメジャーチャンプとなった面々、とりわけ2勝目への期待も大きかった世界ランク上位選手が、その後のメジャーでどんな戦いをしてきているのか、まずは振り返ってみたい。

 デイは、その後も好調だった。2016年はマスターズで10位、連覇がかかった全米プロでも2位と健闘した。メジャー2勝目には手が届かなかったが、世界ランキング1位の座に就いて王者として君臨していた。

 だが、「世界一になるのが目標だったが、これがなってみると、エキストラのプレッシャーもあるし、責任も増えて、時間をやりくりするのが大変だった」と、デイは打ち明ける。

 そして今季は、母親の手術もあってなかなか調子を上げられず、マスターズは22位、全米オープンは予選落ちに終わっている。

 そのデイから世界1位の座を奪ったジョンソンは、昨年の全米オープンを勝ったあと、全英オープンでは9位とまずまずの結果を残したが、全米プロでは予選落ちを喫した。

 以降、今季序盤戦では3連勝を飾るなど、ツアーでは圧倒的な強さを見せながら、大きな期待がかかったマスターズでは試合前日に宿泊先の階段から落ちて負傷欠場。全米オープンでは予選落ちと、メジャー大会では存在感を示すことができていない。

 一方、ここ最近(2010年以降)のメジャー覇者で、初優勝から比較的すぐに2勝目を挙げることができたのは、マルティン・カイマー(32歳/ドイツ)、ロリー・マキロイ(28歳/北アイルランド)、バッバ・ワトソン(38歳/アメリカ)、ジョーダン・スピース(23歳/アメリカ)ら。

 カイマーは、2010年の全米プロでメジャー初優勝。2014年の全米オープンでメジャー2勝目を飾った。マキロイは、2011年の全米オープンで初のメジャー制覇を決めると、翌2012年に全米プロを制した(その他、2014年に全英オープンと全米プロで優勝)。ワトソンは、2012年のマスターズで初めてメジャーを勝って、2年後の2014年マスターズでも優勝した。

 スピースは2015年、タイガー・ウッズに次ぐ若さでマスターズを制すると、続く全米オープンも優勝してメジャー連覇を果たした。ちなみに、そのときは年間グランドスラムへの期待もかかったが、全英オープンは4位、全米プロは2位と、勝利にはわずかに届かなかった。

 言い換えれば、その間にメジャー初制覇を遂げた他の選手は皆、1勝止まり。メジャー2勝目の難しさがよくわかる。再び、デイが語る。

「メジャーを勝つには”幸運”も必要というのは本当だと思う。でも、運だけでは勝てない。勝つまで、何年もドアを叩き続けてきた。メジャー初制覇が続いているのは、それだけ力のある選手が多いからだ。その中で2勝目を挙げるには、またドアを叩き続けるしかない」



「初制覇」が続くメジャー。次なる候補は、松山英樹か

 はたして、メジャー初制覇の流れはこのまま続くのか。

 マスターズチャンピオンのガルシアは、「このトレンドをストップさせるのが目標」と、メジャー2勝目へ意欲を見せるが、デイが語るとおり、現在のツアーには実力者がズラリとそろう。その中には、メジャー未勝利の選手が数多くいる。

 世界ランキング2位の松山もそのひとり。今の流れが続くなら、最も優勝に近い選手であることは間違いない――そう思っているのは、今や日本のファンやメディアだけではないだろう。世界中が彼のプレーに注目しているはずだ。