イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3〜16日/グラスコート)は大会13日目、最終日を迎えた。 大会期間中は、午前7時30分からコートキーパーたちが細心の注意を払い、試合開始前に神聖なるウィンブルドンのコート管理の業…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3〜16日/グラスコート)は大会13日目、最終日を迎えた。

 大会期間中は、午前7時30分からコートキーパーたちが細心の注意を払い、試合開始前に神聖なるウィンブルドンのコート管理の業務に努めている。

 数十人の作業員たちがオールイングランド・クラブのいたるところでテニスコートの芝刈り、水取り、ラインを引くなどの作業に従事している。

 その日の日程終了後には専用掃除機を使用し、コート上にある異物を取り除き、スプリンクラーを用いて、芝の硬さ、天候に応じて水の散布を行い、最後にコートにカバーをかける。

 これは、通常の芝を管理する方法とは異なる。ロジャー・フェデラー(スイス)などの選手たちがセンターコートに足を踏み入れたときに好まれる状態に完全に仕上げるため、専門的な手法で整備されているのだ。

「私たちは芝の状態を完璧に仕上げて、足を踏み入れたときに皆を驚かせたい。プレゼンテーションのようなものです。私は寝るときも芝のことを考えていて頭から離れないのです」と言ったのは、競技場管理部門長のグラント・キャンティン氏。

 フェデラーとノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、今年のウィンブルドンのコートの状態について疑問を抱いていた。

「すべての選手に意見を言う権利はあります。私たちはコートの状態がすべて同じになるように努めてはいますが、これまでにない暑さにより、芝の管理をいつものようにすることが難しくなっています。全体的には、この芝の状態に満足しています。これからまたコートの状態を見てきます」と、この業務に携わって今回が16度目のウィンブルドンとなったキャンティン氏は言った。

 ジョコビッチは試合後に主審に対し、コートに穴のようなものがある、と指摘した。そのほかにもクリスティーナ・ムラデノビッチ(フランス)とアリソン・リスク(アメリカ)の双方が、18番コートでの2回戦の最中に滑って転倒した。その原因として挙がったのが、例年にない異常な暑さと乾燥した天候により、芝が枯れたような状態となっていたこと。通常、大会後半にこのような状態が見られるが、前半に見られることはこれまでなかった。

 このような状況は、ハードコートや赤土のコートで行われるそのほかのグランドスラム大会で起こることはない。

「ここはウィンブルドンなんだから、できる限りコートはベストの状態になっていると思う。だけど、今年は芝がすり減ってくると、何かいつもと違うんだよ。何かいつもよりも滑りやすい感じがする。ボールのバウンドもいつもと違う。試合でその部分の対応が必要になってくる」と、第26シードで出場したスティーブ・ジョンソン(アメリカ)は言った。

 コート管理のための重要な作業のひとつである芝刈り作業においては、昨年までのガソリン使用の芝刈り機に代わって、今年から採用された電動式芝刈り機は、芝の長さをより正確に8mmの長さに維持して刈ることができる。

「これを容器のようなものに入れて販売できると思うんですよね」と、芝刈り機から取り出した芝を見てキャンティン氏は言った。

 芝刈り機を使用し芝を正確に刈る作業員、モップを用いてコート上のラインに細心の注意を払いながら芝の水切りをするモッパーと呼ばれる作業員、コート上のラインを引くぺインターと呼ばれる作業員の巧みな技術により、ウィンブルドンのコートは管理されている。チャレンジ・システムによるビデオ判定のために使用されるホークアイのシステムの誤検知を防ぐためにも、これらの作業が重要であるとキャンティン氏は語っている。

 オールイングランド・クラブのすべてのコートが同じ工程で作業が行われる。

「ウィンブルドンのセンターコートは世界でもっとも有名なテニスコートではありますが、芝の状態に関して言えばどのコートも同じですよ」とオールイングランド・クラブのコート管理の責任者であるニール・スタッブリー氏は答えた。

 午前9時50分に作業道具を持った作業員が、仕事を終えてコートから出てきた。

「ゲートが開く午前10時30分には、私たちは仕事を終えて帰ります」とキャンティン氏は言った。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「ウィンブルドン」のグラスコートにラインを引くぺインター。毎日、多くのコートキーパーたちが細心の注意を払い、コートを管理している。(写真◎Getty Images)

Photo: LONDON, ENGLAND - JULY 12: Groundsmen working on the outside courts at Wimbledon on July 12, 2017 in London, England. (Photo by Ashley Western - CameraSport via Getty Images)