J1リーグで、ヴィッセル神戸が首位に立ち続けている。原動力のひとりが大迫勇也だ。前節の川崎フロンターレ戦では決勝点もマ…
J1リーグで、ヴィッセル神戸が首位に立ち続けている。原動力のひとりが大迫勇也だ。前節の川崎フロンターレ戦では決勝点もマーク。日本代表からは離れているが、いまだ成長を続けるFWをサッカージャーナリスト・後藤健生が分析する。
■大迫の新しい武器
CBの大南を失った川崎は、高井幸大を投入せざるを得なくなり、MFの橘田健人がピッチを離れる。
大迫が直接FKを決めたのは、Jリーグでも、日本代表でもこれが初めてとのことで大きな話題となった。吉田監督は、居残り練習をしていた成果だと説明し、「練習を続ければ、何歳になってもうまくなれる」と語った。
大迫と得点王争いを演じている横浜F・マリノスのアンデルソン・ロペスも、同じ日に行われたガンバ大阪戦で1ゴールを決めたが、大迫はこのFK弾で17点目となり、トップの座をキープすることになった。
大迫が「直接FK」という新しい武器を手に入れたとすれば、これからさらにゴールを量産できるようになるだろう。
■2人のポストプレー
大迫の直接FKはもちろん大きな話題だったが、僕はあのFKを生み出した大迫のポストプレーの方に注目したい。
あのFKが生まれる直前の32分に、川崎の山田新もポストプレーを見せた。
川崎の下部組織出身で、桐蔭横浜大学を経由して、今シーズンから川崎に復帰した新進気鋭のFW。いわゆるCFタイプの選手だ。
ハーフウェーラインを越えて相手陣内に入ったあたりで鄭成龍からのボールを後ろ向きで受けて、相手DFのプレッシャーに耐え、倒れながら山根視来につないだ。山根から前の瀬古樹につながり、瀬古が左サイドに長いサイドチェンジのボールを蹴り込んだが、惜しくも瀬川祐輔には届かず、ゴールキックとなった。
パスが山根につながった瞬間に西村主審はプレーオンの合図を送っていたから、山田はファウルを受けていたのであろう。それでも、しっかりと相手DFを背負って味方につないだ見事なポストプレーだった。
僕は「ほうっ、山田もあんなポストプレーができるようになったのか」と感心していた……。
そうしたら、その直後に大迫がポストプレーからビッグチャンスを演出して、その格の違いを見せたのだ。
■2人を無力化
大迫が受けたのは、川崎が攻め込み、神戸のペナルティーエリア内でDFの本多勇喜が倒れながらクリアしたボールだった。パスではない。たまたま、クリアしたボールが誰にも当たらずに、グラウンダーでセンターサークル付近にいた大迫まで届いたのだろう(もし、本多が狙ってパスのつもりで蹴っていたのだとしたら、それ自体がすごいプレーだ)。
そして、大迫には川崎のCB2人(大南と山村和也)が付いていた。大迫が、普通にDFを背負うような形でボールを受けていたら、いかにポストプレーのうまい大迫でも容易にはパスをつなげなかったはずだ。
そこで、大迫はDFのマークから逃げるように、かなりのスピードで走りながら、ボールを処理したのだ。
だから、大迫が本多からのボールをタッチした瞬間には、ほんの少しだがDFとの間に距離ができており、ほとんどフリーと同じような感覚で処理することができた。そして、ツータッチ目でジェアン・パトリッキの前のスペースにパスを供給した。
大迫をマークしていた大南が、慌てて反転して後ろからジェアン・パトリッキを追いかけた。その結果、相手を倒してしまうのである。
「ポストプレー」というと、屈強なDFを背負って後方から上がってくる味方に落とす作業だというイメージが強い。そう、32分に山田が行ったプレーが、まさに典型的なポストプレーである。
だが、大迫は横に走ることで相手DFから離れてボールを処理した。そして、ボールを落とすのではなく、前線のスペースに流し込んだのだ。
まさに、引き出しの数というか、バリエーションの豊かさというか、一言でポストプレーと言っても、その奥の深さを見せてもらったような気がした。