サッカー女子日本代表が女子ワールドカップ準々決勝まで勝ち進んだ。ラウンド16までの戦いと、ベスト8以降の道のりへ、サッ…

 サッカー女子日本代表が女子ワールドカップ準々決勝まで勝ち進んだ。ラウンド16までの戦いと、ベスト8以降の道のりへ、サッカージャーナリスト・後藤健生が目を凝らす。

■組み合わせの幸運

 この大会、日本は組み合わせにも恵まれている。

 グループCにはFIFAランキング6位のスペインはいたものの、1、2戦目のザンビア、コスタリカは明らかな“格下”。この2戦を乗り切れば、グループリーグ突破を決めた後にスペインと楽な気持ちで対戦できる。

 さらに、ラウンド16ではグループAの1、2位と対戦することになっていたが、開催国ニュージーランドが入ったグループAはいずれも日本よりFIFAランキングが下の国ばかりだった。

 もちろん、ランキング11位の日本が6位のスペインに完勝しているのだから、ランキングが上のチームが必ず勝つというわけではない。

 だが、それでもグループAのいずれの組も日本にとって怖さを感じるような相手ではなかったことは事実だ。実際、ノルウェーよりも日本の実力は上だったし、ノルウェーもそのことを認めたからこそ“大型バス”を並べてきたのだ。

 さらに、大会はグループAの開幕戦から始まって、グループCは早めに初戦が組まれるため、大会後半には相手より休養日が多い有利な状態で戦えることが多くなる。

 日本は8月11日の準々決勝でスウェーデンと対戦することが決まったが、この試合も日本は中5日で戦うのに対して、スウェーデンは中4日しかない。

 しかも、ノルウェー戦の翌日に準々決勝の会場であるオークランドに移動して準備に入った日本に対して、スウェーデンがアメリカと戦った会場はオーストラリア南部のメルボルンだったのだ。メルボルンからオークランドまでは飛行時間が3時間かかる。休養日の少ないスウェーデンには長距離移動も伴うのだ。おまけに、スウェーデンはアメリカ相手の延長戦を強いられ、120分を戦っており、コンディション的には明らかに日本が有利ということになる。

■これまでのW杯との違い

 いずれにしても、日本代表は少なくともラウンド16の段階まで参加36チーム中でも最高のパフォーマンスを示したチームであり、今では現地メディアでも「優勝候補」と言われ始めている。ノルウェー戦の翌日、日本の選手たちがオークランドへの移動のためにウェリントン空港に姿を現すと、周囲のニュージーランド人から大きな拍手が送られた。

 今後の戦いがどうなるかはもちろん誰にも分らない。だが、ワールドカップという舞台で日本代表が優位に立った戦いを続け、“必然の勝利”で勝ち進むのは男女を通じてもちろん初めてのこと。画期的な出来事であると言っていい。

 女子のワールドカップでは2011年と2015年に2大会連続で日本は決勝に進出した。男子のワールドカップでも、日本は2018年のロシア大会と2022年のカタール大会で2大会連続でラウンド16進出に成功している。

 だから、ワールドカップという舞台で日本チームが勝利するのは、ある意味で見慣れた風景になっている。

 しかし、明らかに日本が優位に立つ試合を続け、それを認めて対戦相手が守備を固めてくる……。こんな勝利の仕方を僕はこれまで見たことがなかった。

■思い出されるU-20W杯

 唯一、思い出すのは2018年のU-20女子ワールドカップ・フランス大会だ。

 この大会、日本はグループリーグではスペインに敗れたものの、準々決勝でドイツに3対1、準決勝ではイングランドに2対0、そしてスペインとの再戦となった決勝戦も3対1と、ヨーロッパの強豪3チームを相手に複数得点差でいずれも攻め勝ったのだ。

 そして、その決勝戦のスペイン戦に出場していた選手のうち7人が、今回のなでしこジャパンの主力選手として現在戦っている。

 従来、日本選手は年代別大会の時点ではテクニック面でヨーロッパ選手を上回っており、優位に戦えるが、その後、ヨーロッパの選手が各国リーグで高い強度のプレーを経験し、年齢制限のない代表同士の試合になると、フィジカル面を含めて日本は劣勢に立たされると言われていた。

 だが、2018年のU-20日本代表だった選手の多くが20歳過ぎの若いうちからヨーロッパやアメリカのクラブに移籍して経験を積んできたのだ。そして、そこにさらに年齢が上の経験豊富な選手。そして、2022年のU-20代表(2大会連続で決勝に進出したが、スペインに敗れた)の若手が加わったのが今大会の日本代表なのだ。

■日本が示したチームの力

 そして、その2018年のU-20日本代表を率いていたのが、現在のなでしこジャパン監督の池田太監督だった。

 つまり、現在の女子代表チームは2018年から5年の年月をかけて作られたチームなのである。しかも、日テレ・ベレーザや浦和レッズレディースでのプレー経験のある選手が多いために、クラブチームでのコンビネーションも加わって、「まるでクラブチームのようなコンビネーションだ」という評価につながっている。

 大会前には多くのメディアで「注目の選手」が紹介されていたが、日本人選手はほとんど取り上げられていなかった。アメリカやヨーロッパの強豪国の選手。女子のチャンピオンズリーグや女子EUROで活躍した選手。さらには、コロンビアのリンダ・カイセドといったフィジカル面も含めて個人能力の高い選手に注目が集まっていた。

 だが、日本の組織は世界の強豪国を上回ったかに見える。

「サッカーというのはチーム・スポーツなのだ」。そのことを示したのが、大会開幕から圧倒的な4連勝を飾った日本代表だった。

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