8月5日、J1リーグが2週間を超える中断期間を経て再開となる。シーズンは残り3分の1。優勝争いは、ここからが本番だ。「…
8月5日、J1リーグが2週間を超える中断期間を経て再開となる。シーズンは残り3分の1。優勝争いは、ここからが本番だ。
「群雄割拠」。順位表は拮抗している。中断直前、首位に躍り出たヴィッセル神戸だが、2位の横浜F・マリノスとは1ポイント差。横浜F?と3位の名古屋グランパスは4ポイント差で、名古屋と4位の浦和レッズは2ポイント差。連勝あるいは連敗で順位はひっくり返る。7位の川崎フロンターレも首位と12ポイント差だが、逆転優勝を諦めていない。
中断を経て、走り出すのはどこか?
戦力的には、初優勝を狙う神戸が安定している。すでに構想外になっていたアンドレス・イニエスタを筆頭に、セルジ・サンペール、ステファン・ムゴシャを放出したが、主力の海外移籍などがなく、戦力を維持できている(補強面で、手薄の中盤を補強できなかったツケを払う可能性はあるが......)。
直近の川崎戦でも2得点を決めた大迫勇也は、シーズンを通じて獅子奮迅の働きを見せ、存在感は傑出している。単純にボールを収められるし、外し、運び、展開してゴールを突き刺せる。「戦術・大迫」が猛威を振るう。
チーム戦術よりも「個」の色が強い。前線からのプレッシングで押し込み、リトリートしての各ラインの守備からのトランジションと、簡潔な戦い方だが、運用する選手の能力が高いために優位に立っている。大迫を筆頭に、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳、齊藤未月の5人は今季のJリーグベストイレブン候補だろう。イニエスタと決別してまで選んだ道である。「初優勝=大迫MVP」を成し遂げられるか。
一方で連覇を目指す王者、横浜F?は中断前に川崎に敗れ、首位の座から引きずり下ろされている。
「他のチームは休めるが、自分たちはなかなかない機会に成長する」
ケヴィン・マスカット監督は中断期の過ごし方をそう話していたが、スコットランド王者セルティックを6-4と撃ち合いの末に制し、欧州王者マンチェスター・シティには3-5で敗れるも、真っ向勝負で確実に収穫はあった。
【マンチェスター・シティ戦で得た自信】
「(シティは)めちゃくちゃ強かったです。でも、しり込みして、べた引きはしたくなった。ビルドアップはできるだけチャレンジした」
シティ戦後、キャプテンである喜田拓也は誇らしげに語り、手応えが伝わってきた。
「プレスは向こうのクオリティの高さは感じました。でも、それを体感するために自分たちらしくいった。恐れずにいったからこそ、ひっかけてチャンスも作れました。何より、『点数をとる』というのが自分たちのチームカラーなので」
最強チームと戦って得た自信は相当なものだ。

横浜F・マリノス連覇のカギを握るひとり、宮市亮
「J1を連覇できるだけのクオリティを感じた」
シティのジョゼップ・グアルディオラ監督も、太鼓判を押すほどだった。リップサービスはあるにせよ、お世辞を使う人物ではない。
「ウィンガーがカイル(・ウォーカー)を抜いた場面があって、いつもとは違う場所でプレーし、啓発させられるところがあった。日本サッカーのことを今も下に見るような人間は、実際に知らないからだろう。日本人選手は三笘(薫)のようにプレミアリーグにも好プレーヤーを輩出し、プレーの質は疑いようがない」(グアルディオラ監督)
セルティック戦、シティ戦の布陣は、横浜F?のひとつの正解かもしれない。
水沼宏太が先発で右に入ることで、幅を取って深みを作れる。サイドバックやボランチとの連係も盛んになって、ボールを運び、展開。リズムに変化を作り出せるし、必殺の右足クロスもある。
アンデルソン・ロペス、エウベル、ヤン・マテウスの3トップはJ1屈指のスピード&パワーを誇る。ただし、それ故に攻め急ぎも出て、単調になりやすい。左利きのヤン・マテウスは右からカットインのシュートはあるが、幅を取った攻撃は得意ではなく、川崎戦でも決定的な右足シュートを外していた。
優勝の切り札は宮市亮か。後半の勝負どころで投入されると、爆発的スピードで相手を仕留める。セルティックを完全に凌駕していたし、シティの選手と対峙しても引けを取らなかったほどだ。
また、トップ下に元韓国代表のナム・テヒが加入したことは朗報だろう。シーズン途中の移籍でどこまでフィットできるか。まずはマルコス・ジュニオール、ケガから復帰の西村拓真との競争になる。
中盤は藤田譲瑠チマがベルギーへ移籍も、山根陸の台頭に期待したい。周りを生かすプレーセンスで言えば、パリ五輪世代で屈指。試合を重ねることで逞しさを身につけたら、大化けする可能性がある。
優勝争いの伏兵は名古屋だろう。だが、攻撃をけん引していたマテウス・カストロのサウジアラビア移籍は痛手だ。長谷川健太監督らしい「守備の堅牢さ」は健在で、一定の勝ち点は計算できるが......。
優勝予想の大穴は川崎である。中断直前の横浜F?、神戸戦でも地力を見せた。戦術的な仕組みは見えるし、選手の技術も高い。家長昭博以外に「個」で局面をひっくり返せる選手が出てくると、連勝街道を突っ走ることができるだろう。たとえば、センス抜群の宮代大聖が覚醒し、シーズン15得点を超えたら。
最後にJ1のサプライズとして、サガン鳥栖の名前を挙げたい。川井健太監督が作り上げた戦いの回路は、すでにピッチに立つ選手につながっている。選手が次々に目覚めつつあり、たとえば右ウィングバックの枠に収まっていた長沼洋一はウィング、サイドバック、トップ下などで躍動、さらにストライカー的な資質も発見された。残り3分の1が楽しみなチームだ。