ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<10>ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)前編 ワーナー・ディアンズ、21歳──。9月に開幕するラグビーワールドカップに向けて強化を進めるラグビー日本代表において、…
ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<10>
ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)前編
ワーナー・ディアンズ、21歳──。9月に開幕するラグビーワールドカップに向けて強化を進めるラグビー日本代表において、チーム最高身長202cmを誇る「ラグビー王国ニュージーランド」出身の若きLO(ロック)だ。
NECグリーンロケッツ東葛のコーチとなった父とともに14歳で来日すると、強豪・流通経済大柏に進学。「花園」で大いに活躍したことにより、卒業後の進路は大きな注目を集めた。本人が選んだ選択は......大学に進学せず、東芝ブレイブルーパス東京へ。
そして、リーグワンでプレーする前に日本代表に選ばれて初キャップを得ると、そこからはさらに才能が開花。母国オールブラックス戦でも躍動し、日本代表の中軸となるまで成長した。憧れのラグビーワールドカップ出場まであと一歩と迫った、若きホープの思いとは──。
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ワーナー・ディアンズ●2002年4月11日生まれ・ニュージーランド出身
── 昨年の活躍によって、ワーナー選手はすっかり日本代表の主力となりました。
「昨年はウルグアイ代表戦1試合とフランス代表戦2試合、オーストラリアA戦の3試合とニュージーランド代表戦も出て、欧州遠征でイングランド代表とフランス代表とも対戦。今季のリーグワンにも15試合出たので合計24試合ですね。だいぶ自信は出てきたけど、まだまだです」
── 今後、伸ばしたい点や課題などは?
「ワークレイト(仕事量)はあんまり悪くないと思うんです。だけど、ジェイミー(・ジョセフ/日本代表HC)にも言われていることですが、ワンプレーしたあとの動きがやっぱり遅い。
リーチさんはめっちゃ速いですね! それがもっと速くなったらすごくいいワークレイトになると思うから、それを意識して試合に出ています。もう少し経験を積んだら、それもどんどん上がっていくかなと」
── フィジカルの数値も上がってきました?
「ベンチプレスは160kg。スクワットは腰が痛くなるからあまりやらないんですけど、デッドリフトは240kgまで上がります」
── 昨年の日本代表戦のなかで印象に残っている試合は?
「昨年7月に東京(国立競技場)で対戦したフランス代表との2戦目です。勝てそうな試合(15-20)で65分くらい出場して、ぜんぜん負けてない感じだったから自信になりました。
あと、10月のオーストラリアAとの1試合目はボロ負け(22-34)で、チーム自体もいいパフォーマンスじゃなかったけど、自分的にはキャリーで相手に負けてないって思いました」
── 10月末には、母国であるオールブラックスとも対戦してトライを挙げました。
「そうですね、ちょっと変な感じ......なんか不思議でした。子どもの頃からずっと見ていたチームに、日本代表の一員として対戦したので。
この試合も勝てそう(31-38)でしたが、ギリギリ勝てなかった。ただ、メンバー外の選手が選ぶベストプレーヤー「プレーヤーズプレーヤー」とゲームMVPに選ばれました。うれしくてビールを2本、一気に飲みましたね(笑)」
── オールブラックス戦では、誰とジャージーを交換したんですか?
「地元ホークスベイの英雄で、ずっと憧れていたLOブロティー・レタリックと交換しました。レタリックは試合でレッドカードになったけど、最後にちょっと会えて『久しぶり!』と挨拶できたので、ジャージーを交換してもらいました!」
── またオールブラックスと対戦してみたい?
「次はワールドカッでやってみたいですね!」
── 日本代表での活動について聞かせてください。ワーナー選手は社会人1年目、リーグワンでプレーする前に日本代表に呼ばれました。
「はい。東芝ブレイブルーパス東京で練習試合に2試合出たあと、日本代表合宿に呼ばれました。合宿は10日間くらいの日程で、すごく練習がきつかったのを覚えています」
── そして2021年11月のポルトガル代表戦、19歳で初キャップを獲得。
「5分しか出ていないし、何もできていなかったので、初キャップをもらえて不思議な感じでした。試合後のロッカールームで、初キャップをもらったらビールを1本飲む通例があるんですけど、(当時は19歳だったので)飲めなかった(笑)。
ニュージーランドにいる両親は喜んでくれました。初キャップのジャージーは母に『持ってこい』と言われたので、去年ニュージーランドに戻った時に持っていったら、そのまま取られました(笑)。たぶん、フレームに入れて飾ってあると思います」
── ワーナー選手の祖父はイギリス人ですよね。イングランド代表やニュージーランド代表にもなれる資格があるなか、日本代表を選ぶことに悩んだりしませんでしたか?
「あんまり悩まなかったです。中学2年から日本にいるし、日本のトップリーグ(現リーグワン)でラグビーをやりたい、日本代表にもなりたいと思っていましたから。母からは『オールブラックスになれ!』とずっと言われていたんですが(苦笑)、決断するのにそれほど考えることはなかったですね」
── リーグワン1年目はルーキーながら主力として15試合に出場しました。
「1年目はまだ自信もなく、レッドカードをもらって試合に出られなかった時もありました。でも、開幕戦から試合に出られたことで、シーズンを通して徐々に自信をつけていきました」
── そして今季もリーグ戦で15試合出場。
「今季はラインアウトのコーラー(サインを出す選手のこと)をやったんです。初めてのことで最初はちょっとぎこちなかったですが、いい経験になりました。日本代表のコーラーは昨年、LOジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)でした。日本代表ではプレッシャーになるからやりたくないです(笑)」
── 現在の日本代表について、チーム状況をどう見ていますか?
「昨年のテストマッチはウルグアイ代表戦しか勝ってないですけど、どこにでも勝てるという感じはあります。フランス代表にもニュージーランド代表にも勝てそうだった。秋のイングランド代表戦はうまくはいかなかったけど、フランス代表との再戦もいい感じでした」
── ワーナー選手自身の調子はどうですか?
「練習は楽しくないですが(笑)、試合に出るとすごく楽しい。もっと試合に出たいなと思うし、ほかの日本代表選手の方からもいろいろ学べるし」
── ワールドカップという舞台への思いは?
「ワールドカップはラグビーを始めた子どもの頃にフランス(2007年)でやっていて、それを見てから『プレーしたいな』と目標にしていました。だから、すごく楽しみにしています。
でも、自分は考えすぎるところがあるから、あまり考えると逆にプレッシャーを感じてうまくいかない(笑)。だからワールドカップ直前に行なわれるパシフィック・ネーションズカップでの3試合やイタリア代表との試合で多く試合に出て、いいパフォーマンス出せたら自信になると思います」
── 2019年の日本で開催されたワールドカップの時、ワーナー選手は高校2年生でした。あれから4年の月日を経て、今度はご自身が日本代表として出る可能性も出てきました。
「2019年のワールドカップは、お父さんとスタジアムに見に行ったり、高校の友だちとプロジェクターで見たりしていました。それに自分が出るなんて......不思議な感じです」
── もし出場できたら、ワールドカップではどんなプレーを見せたいですか?
「まずは自分の仕事をちゃんとこなし、チームにいいパフォーマンスをもたらしたいです。ラインアウトやモール、キックオフ(キャッチ)もそうだし、ラックでもしっかりオーバーしたい」
── 日本代表はワールドカップの予選プールで、チリ代表、イングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表と対戦します。どの試合が楽しみですか?
「アルゼンチン代表はいつもオールブラックスと試合していて、すごくフィジカルなチーム。何をやってくるかわからない。LOのふたりもデカくて強いので、対戦が楽しみです。あと、イングランド代表と昨年対戦した時は、FL(フランカー)で出ていたマロ・イトジェのワークレイトがすごく高かったので、もう1回やりたいですね!」
── ファンにはワーナー選手のどこを見てほしいですか?
「フィジカルで、デカい選手やスター選手を相手に負けないところを一番見てほしいですね!」
(後編につづく)
高卒でプロ入り、21歳の夢は「世界一のロック」
【profile】
ワーナー・ディアンズ
2002年4月11日生まれ、ニュージーランド・ウェリントン出身。元ラグビー選手の父のNEC(現・NECグリーンロケッツ東葛)コーチ就任に伴い14歳で来日。流通経済大柏高校を卒業後、2021年に東芝ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス東京)に加入する。日本代表歴は2021年11月のポルトガル戦で初キャップを獲得。ポジション=LOロック、FLフランカー。身長202cm、体重122kg。