7月30日(日)、札幌競馬場で3歳以上牝馬によるGⅢクイーンS(芝1800m)が行なわれる。前走のシンザン記念を勝利し…
7月30日(日)、札幌競馬場で3歳以上牝馬によるGⅢクイーンS(芝1800m)が行なわれる。

前走のシンザン記念を勝利したライトクオンタム
このレースは以前、3歳限定戦として中山で行なわれていたが、2000年から札幌の古馬戦となり、2000年トゥザヴィクトリー、2011年アヴェンチュラ、2017年アエロリット、2018年ディアドラなど、多くのGⅠ馬(後にGⅠ勝利した馬も含む)が勝利している。2005年10番人気2着のヘヴンリーロマンスが、14番人気で同年の天皇賞・秋を勝つなど、敗れた馬がその秋のGⅠで激走する例も少なくない。
そんなレースを血統的視点から分析していきたい。圧倒的な強さを誇るのはディープインパクト産駒で、過去10年で出走馬がいた7年のうち、2014年のキャトルフィーユ、2019年のミッキーチャーム、2021、22年のテルツェットと4勝。そのほか、2021年はマジックキャッスルが2着、2014年にスマートレイアーが3着と、勝率21.1%、複勝率31.6%という高い数字を誇っている。
今年は2頭のディープインパクト産駒が出走するが、その中で筆者が本命に推したいのがライトクオンタム(牝3歳、栗東・武幸四郎厩舎)だ。
同馬はディープインパクトのラストクロップ(死亡した種牡馬の最後の子馬の世代)の1頭で、今年1月のGⅢシンザン記念(中京・芝1600m)の勝ち馬。GⅠ桜花賞は8着、GⅠオークスは17着と敗れたが、桜花賞は揉まれる競馬となったのがこたえたようで、オークスは距離が長かったのだろう。1800mなら巻き返せると見る。
血統を見てみよう。母イルミナントは米GⅠゲイムリーSの勝ち馬。同レースは芝9F(=約1800m)で、クイーンSとはほぼ同距離だ。イルミナントはこのレースを2番手追走から4角で先頭に立ち、押し切るという走りを見せている。ライトクオンタムは新馬戦(東京・芝1600m)で逃げ切っているように先行力もあるので、母のような競馬を見せることも可能だろう。
母の父クオリティロードは、米クラシック2戦目の米GⅠプリークネスを勝ったナショナルトレジャーや、昨年のGⅠサウジCを勝ったエンブレムロードを出す名種牡馬。その父イルーシヴクオリティの産駒オールウェイズウィリングは、ディープインパクトとの間にGⅠ阪神ジュベナイルフィリーズのショウナンアデラを出しており、ライトクオンタムにはGⅢ1勝で終わらないさらなる活躍が期待できそうだ。
もう1頭もディープインパクト産駒のグランスラムアスク(牝4歳、栗東・矢作芳人厩舎)を推す。本馬は前々走の胎内川特別(2勝クラス、新潟・芝1800m)、前走の弥彦S(3勝クラス、新潟・芝1800m)を勝ってここに臨む上がり馬だ。
重賞は初挑戦で、全4勝が左回り。今年3月末から約1カ月半の間に5走するハードなローテーションを組まれるなど、ちょっと厳しいと思える面もあるが、血統が魅力的だ。
全兄カイザーバローズはGⅢ新潟大賞典2着と重賞実績があり、祖母の兄には米GⅠBCクラシック連覇のティズナウがいる名門牝系の出身。そして、ディープインパクトと母の父ストームキャットの組み合わせは、キズナやダノンキングリーなど、国内外で9頭のGⅠ馬が出ているスーパーニックス。そのうちの2頭、リアルスティールとラヴズオンリーユーはグランスラムアスクと同じ矢作芳人調教師が管理していた。
さらに、矢作芳人厩舎所属だった三冠馬コントレイルは祖母の父がティズナウで、曽祖母の父がストームキャットのため本馬とは非常に似た血統構成となる。2021、22年の勝ち馬テルツェットはリアルスティール、ラヴズオンリーユーの姪で、祖母の父がストームキャットだった。血統的魅力という点では、メンバー中で一番と言ってもいいくらいだ。
レースが行なわれる7月30日は、2019年にこの世を去ったディープインパクトの命日。命日にJRAの平地重賞が行なわれるのは初となる。ディープインパクトは北海道安平町の社台スタリオンステーションに眠っている。そこから最も近い競馬場で開催される重賞だけに、産駒のライトクオンタム、グランスラムアスクの激走に期待したい。