7月14日。野球ファンなら、「オールスターゲーム! 楽しみですなぁ」といったところだろうが、同日、第88回都市対抗…

 7月14日。野球ファンなら、「オールスターゲーム! 楽しみですなぁ」といったところだろうが、同日、第88回都市対抗野球(東京ドーム)が開幕することをご存じだろうか。アマチュア野球最高峰の大会である。最高峰とは、どのくらいのレベルなのか。「プロの二軍といい勝負」というのが定説だが、個々に限っていえば、一軍でも十分以上に通用する。

 たとえば、だ。オリックスの新人・山岡泰輔。今季ここまで3勝6敗と勝ち星はともなわないものの、防御率2.54という内容が評価され、監督推薦でオールスターに出場する。昨年までは、都市対抗で「初戦も大事な場面も最後も山岡」(菊池壮光監督)というほどフル回転の、東京ガスのエースだった。昨年が瀬戸内高(広島)から社会人3年目で、ドラフト解禁となってプロ入りすると、いまやオリックスではローテーションの一角である。



社会人No.1の呼び声が高いJR東日本のエース・田嶋大樹

 昨年の山岡と同じように今年が高卒3年目で、今季のドラフト上位間違いなし……と言われているのが、JR東日本のサウスポー・田嶋大樹だ。佐野日大高(栃木)から社会人入りし、1年目から公式戦に登板。昨年は都市対抗初戦で先発を任されるなど、2年目でチームの大黒柱となった。このときは0対0の延長10回、王子に2失点して涙を飲んだが、今季はさらに成長した。球速は152キロに達し、もともと定評のあったカーブ、スライダーに加え、今季からはチェンジアップとカットボールで幅を広げた。

 東京の2次予選では、初戦から2試合を完投勝ち。NTT東日本に敗れた第1代表決定戦は5回で降板したが、中1日の第3代表決定戦ではセガサミーを7回コールドの1失点。昨年指摘されたスタミナ不足を解消し、チーム5試合中4試合に投げて3完投は文字通りのエースだ。田嶋は言う。
 
「局面に応じて強弱をつけられるようになったのは収穫です。入社してから2年間は都市対抗1回戦負けなので、チームを勝たせることが役割です」
 
 初戦は7月16日、相手は伏木海陸運送。勝ち進めば勝ち進むほど、プロへの視界が開けてくる。
 
 社会人からNPB入りしたルーキーでは、西武のショート・源田壮亮もオールスターに出場する。昨年は、トヨタ自動車の都市対抗初優勝に攻守で貢献。史上7度目の連覇がかかるそのトヨタで、源田のあとのショートを守るのが藤岡裕大だ。
 
 亜細亜大から入社した昨年は、高いレベルの競争でまずは出場を優先したため、大学時代の三塁手ではなく外野を守った。それでもスタメンに定着し、都市対抗では5試合で打率.381と非凡さを見せつけている。年頭に会ったときには、「源田さんが抜けたので、ショート一本で挑戦するつもりです」と宣言していた。大学時代にはプロ志望届を出し、指名が確実視されていたが、2015年ドラフトではまさかの指名漏れ。大卒2年目で解禁の今季、見返したい思いは強いだろう。

 同じトヨタでは、いまやミスター社会人といえる鉄腕・佐竹功年の投球も注目だ。今季も、優勝したスポニチ大会でMVPと元気なところを見せている。圧巻は昨年の都市対抗で、4試合に登板し、3完投(うち完封が2試合)の防御率0.30。決勝でも、創部100年目のⅤがかかる日立製作所を見事に完封し、文句なしの橋戸賞(MVPにあたる)に輝いた。
 
 昨年の決勝で、その佐竹からヒットを放ったのが日立の田中俊太と菅野剛士のルーキーコンビだった。トヨタの藤岡と並び、3人で若獅子賞(新人賞)を獲得する活躍で、今季も中軸を打つ。
 
 田中と菅野は、東海大相模高(神奈川)の同期として2011年のセンバツⅤに貢献。田中が東海大、菅野が明治大とそれぞれ進路は別れたが、日立でふたたびチームメイトとなった。2人は藤岡同様、大学時代はドラフト指名から漏れたクチ。だが田中は、JR東日本でプレー経験のある兄・広輔(現・広島)から、こう言われたという。
 
「『社会人でプレーして、やっぱりよかっただろう』と言われました。そして『会社や組織のために、自分がすべきことをしなさい』と。そうすれば、自ずと結果はついてくると思います」

 同じ日立では、国際武道大卒2年目の鈴木康平も、最速148キロと急成長している。北関東2次予選では、チーム最多の投球回を任され、ストレートとフォークを軸に防御率1.88の成績を残した。
 
 ちなみに小ネタながら、その日立と初戦で対戦する三菱重工名古屋のベテラン捕手で主将の安田亮太は、履正社高(大阪)でプロ注目のスラッガー・安田尚憲の兄だ。

 ここからは試合順に注目選手をピックアップしていくと、きらやか銀行のエース・小島康明がおもしろい。初出場だった昨年は、名門・パナソニックを8回までゼロに抑え、初戦突破に貢献。カーブ、チェンジアップに加え、右打者の内角をえぐる度胸が特長だ。東北2次予選では、先発した3試合を完投し、うち2完封の防御率0.33。四死球わずか3という制球力も出色だ。
 
 西部ガスと東京ガスのガス対決では、西部・山田義貴と東京・臼井浩というルーキー投手対決があるかに注目だ。亜細亜大出の山田は、戦国東都仕込みの大舞台での強さが持ち味。球速は140キロ前半でも、ツーシームとカットボールを織りまぜ、九州2次予選では2試合15回2/3を3失点にまとめた。
 
 一方、昨年の大学選手権で中央学院大の準優勝に貢献した臼井は、168センチと小柄ながら、147キロの速球とフォークにキレがある。東京2次予選では2試合に救援し、明治安田生命戦では、7回から延長18回までの12イニングで17三振を奪うドクターKぶりを発揮した。
 
 NTT東日本の西村天裕は、帝京大4年時の左ヒザ手術で昨年は出遅れたが、今季は救援で活躍。最速154キロのスピードが魅力で、東京2次予選では7回を7奪三振、無失点で抑えた。
 
 榎田宏樹が長く投手陣を支えてきた日本新薬は、2年目の西川大地がいい。もともと、右打者の内角を絶妙に突いていたが、今季は苦手な左打者対策にスプリットを覚えた。近畿2次予選では榎田を上回る25回2/3を投げて自責点0だから、なんとも頼もしい。

 西濃運輸の松本直樹捕手は、20打数0安打とまったく無名だった立教大時代から、新人の昨年、いきなり東京ドームでホームラン。嶽野雄貴投手も、日進高(愛知)時代は夏の大会未勝利で、名古屋学院大も愛知の下部リーグという雑草育ちだ。それがいまや球速152キロに達し、東海2次予選では救援で無失点。急成長で主軸となった松本と合わせて、なかなかの”シンデレラ・バッテリー”だ。
 
 ほかには、昨年ドームで自己最速の154キロをマークした高卒3年目の大器・鈴木博士(ヤマハ)が新日鐵住金東海REXの、昨年の日本選手権でノーヒット・ノーランを達成した猿渡真之(大阪ガス)がNTT西日本の、昨年の都市対抗で日立の準優勝を後押しした角田皆斗(SUBARU)が新日鐵住金鹿島の、それぞれ補強選手として出場。補強選手の活躍が優勝に直結することも多く、彼らのプレーからも目が離せない。
 
 かつて甲子園や神宮を沸かせたあの選手がここにいるかと思えば、元プロの出戻りも珍しくないのが社会人野球。その最高峰の戦いで、あなたのお目当ては……。