250人超のアスリート、140社超のスポンサー『Athlifes』(アスライフス)はアスリートとスポンサーが直接交流できるオンラインのコミュニティだ。スタートからまだ3年ほどだが、すでに250人を超えるアスリートが参加し、140社を超えるス…

250人超のアスリート、140社超のスポンサー

『Athlifes』(アスライフス)はアスリートとスポンサーが直接交流できるオンラインのコミュニティだ。スタートからまだ3年ほどだが、すでに250人を超えるアスリートが参加し、140社を超えるスポンサーとの協業を進めている。2020年9月にコミュニティを立ち上げ、運営に携わっている青沼広己代表に、立ち上げに至った思いや今後のビジョンなどについて語ってもらった。
 
「職業はアスリートです」
 アスリートが胸を張ってそう言える状況を作り出していくことが青沼代表の目標だ。
「『アスリート』という職業を作りたい、という思いが根本にあって、アスリート活動で収益があがるような形を作っていこうというのがこのコミュニティのテーマです。他の仕事やアルバイトをしながら競技を、というのではなく、アスリートだからできることを仕事にする。それによって『職業=アスリート』にしていくことができるんじゃないかと」


『Athlifes』は基本的に、スポンサーが月額を支払し、参加アスリートにそのスポンサー料が還元される形で成り立っている。決められた月額のスポンサー料を支払うと、参加しているアスリート(特定ではない)のスポンサー料の原資に充てられる。また、アスリート自らが新規にスポンサーを獲得してコミュニティに参加してもらうことができた場合、スポンサーの支払う月額の半分程度がアスリートに渡される。
 スポンサー企業の新商品やサービスを、参加アスリートがアンバサダー、インフルエンサーとして宣伝にひと役買うということも『Athlifes』が手がける協業の1つだ。これによりスポンサーの売り上げが上がれば、アスリートにも利益がシェアされる。陸上競技・走高跳の三橋大輔はインソールの会社のアンバサダーを務め、力士の北勝富士、北勝栄の2人はフットケアの会社とタイアップし、実際に施術を受けて自身のメディアで紹介するなどしている。
 さらには、スポンサー企業のイベントや、『Athlifes』が仕掛けたイベントで収益があがれば、イベントに参加したアスリートに還元される。
 

アスリートとジョギングをしながらゴミ拾いをするイベント(右が青沼代表)

ソサイチ日本代表として国際大会に出場

 青沼代表自身もコミュニティに参加するアスリートの1人だ。ソサイチという競技をご存じだろうか。ブラジル発祥の7人制のサッカーで、フットサルコートの3倍ほどの広さのコートで行われる。青沼代表は、ソサイチの日本代表として国際大会に出場経験もあり、40歳になった現在も現役プレーヤーとしてピッチに立っている。

 4歳からサッカーを始めた青沼代表は、柏レイソルジュニア-浦和レッズジュニアユースと小・中学生時代はJリーグの下部組織でプレーし、高校は千葉の東海大浦安高へ進学。ポジションは攻撃的MFだった。高校3年の秋には千葉県大会ベスト4進出を果たしている。東海大進学後はフットサルに転向。大学卒業後はアパレル関係の仕事などに就きながら、フットサル、ソサイチを本格的にプレーしていた。
 

40歳になった現在でも現役ソサイチプレーヤーとしてピッチに立っている

アスリートとして収益をあげる方法を模索

 もっと競技に打ち込みたい。アスリートとして上を目指したい。世界で戦いたい。
 そう思っても、競技による収入だけで生活が成り立っている者はほんの一握りと言ってよいだろう。仕事と競技を両立させるのではなく、アスリートとして収益をあげる方法はないものだろうか。競技に、仕事にと忙しい毎日を送っていた2020年、春先から新型コロナウイルスの感染が拡大し、国内外のスポーツイベントは軒並み中止、自粛を余儀なくされた。

「時間ができたので、いろいろなことを考えまして。オンラインを使って、全国どこにいても、海外にいてもできる形で、なおかつアスリートだからできる仕事を作れないかなと」

 その中で思いついたのが、アスリートとスポンサーがオンラインでつながるコミュニティだった。青沼代表は、自身と同じように競技と仕事との両立に悩むアスリートに声をかけ、コミュニティへの参加を呼び掛けた。同時に、協力してくれるスポンサー探しに乗り出した。コロナ禍によりオンラインでコミュニケーションを取るツールが急速に普及したことが追い風になった。

「自分ひとりでは発信力が強くないですし、何かいい方法はないかなと考えたときに、アスリートがたくさん集まって、それが規模の大きいものになれば仕事を作ることができるんじゃないかと思って。声がけをして、メンバーになってくれるアスリートが増えて、入ってくれたメンバーが、さらに他のアスリートを紹介してくれて、メンバーは順調に増えていきました。アスリートの人数が増えるにともなって、スポンサーがまた増えてというふうにいい循環ができて、少しずつ形になって、できることが増えてきました」
 

フットサルのイベントにて。参加者、アスリート全員で記念撮影

子供たちがアスリートへの憧れを持ち続ける社会を目指す

 アスリート個人だけではなく。チームとして『Athlifes』と提携しているところもある。ACミランアカデミー千葉のソサイチチーム、フットサルのファイルフォックス八王子(東京)、3人制バスケットボールのサクラ(千葉県船橋市)などがスポンサー企業との協業を進めている。ACミランアカデミー千葉のソサイチチームは、青沼代表が所属しているチームだ。
 チームのスポンサー集めを『Athlifes』が代行営業したり、チームと『Athlifes』とでイベント共同開催するなどしている。
 現在進めている事業の他に、今後はマネジメント部門を設け、アスリートのマネジメントにも力を入れてゆく方針だ。

 さらには、中学校の部活動への指導者派遣にも乗り出している。教員の負担を減らすため、文部科学省は公立中学校部活動の地域団体や民間スポーツクラブなどへの委託を進めているが、なかなかうまく進んでいないのが現状だ。「中学校の部活の地域移行が進む中、アスリートが部活指導を担当するような形が作れないかという話を今進めつつあります」と青沼代表は展望を語る。
 現在の青沼代表自身のように、競技に関連する仕事で生活できるアスリートを100人ぐらいに増やすこと。それが目標だ。

「アスリートだからできる仕事で生活している人が、うちの中に100人いると、ちょっと違った波を起こせると思うんです。まずはそこを目指しています。自分は人には恵まれていると思います。メンバーになってくれたアスリートのみなさん、支えてくれているスポンサーのみなさんには本当に感謝です。それゆえに、このコミュニティの『価値』をもっと高めなければいけない。今も試行錯誤の毎日です」
『Athlifes』のホームページのトップには『子供たちがアスリートを目指せる社会の実現』が謳われている。アスリートがアスリートとしての仕事で収益をあげられるようになれば、保護者も安心してスポーツに打ち込む子供たちを見守ってあげられるはず。そうなったとき、この国のスポーツ文化は大きく変わるだろう。青沼代表はそんな社会の実現を目指している。
(写真提供/『Athlifes』 取材・文/小川誠志)
 

「スポンサーのみなさん、アスリートのみなさんには感謝です」と青沼代表