ピースサインで喜びを表現する久米詩【実力トップクラス21選手が争う】 久米詩が5月のガールズケイリン特別レース「ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ」(平塚競輪場)に続き、再び特別レースの「ガールズケイリンフェスティバル2023…



ピースサインで喜びを表現する久米詩

【実力トップクラス21選手が争う】

 久米詩が5月のガールズケイリン特別レース「ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ」(平塚競輪場)に続き、再び特別レースの「ガールズケイリンフェスティバル2023」(7月15日~17日、函館競輪場)のタイトルを手にした。

 このガールズケイリンフェスティバルは、2014年から行なわれており、今年で10回目の開催となる。出場できるのは実力トップクラスの21選手のみ。選考基準は2022年11月~2023年4月までの6カ月間で、ガールズケイリン特別レースで優勝した選手のほか、優勝回数上位者などから選抜される。

 今開催も例年通り3日間で行なわれた。1日目、2日目は、それぞれ順位によってポイントが加算され、3日目の決勝にはポイント上位7選手が出場できる。この開催が重要視されているひとつの理由は、獲得賞金が大きいことだ。

 今年からガールズケイリンではGⅠ開催が新設されている。全部で3開催あるGⅠは6月のパールカップ(岸和田競輪場)、10月のオールガールズクラシック(松戸競輪場)、11月の競輪祭女子王座戦(小倉競輪場)で、その優勝者は12月29日に開催される年間女王決定戦「ガールズグランプリ2023」(立川競輪場)の出場権を獲得することができる。

 すでに終了しているパールカップでは児玉碧衣が優勝し、ガールズグランプリへの出場を一番乗りで決めた。ガールズグランプリに出場できるのは7選手のため、残り6枠のために、今後控えるGⅠ開催での優勝、もしくは獲得賞金ランキングで上位に入る必要がある。そのため、優勝賞金300万円を獲得できるガールズケイリンフェスティバルは大きな意味を持っていた。

【初日4着、2日目2着も決勝で戴冠】

 成長著しい久米は、ここまで賞金ランキング1位と好調をキープ。今開催でも初日から好結果が予想されていたが、初日はまさかの4着。2日目も2着とトップに立つことができなかった。2日目のレース後、その後のレース次第で決勝に残れないことも想定されたため、「(決勝を走れるかどうか)ギリギリですよね」と表情も曇りがちだったが、何とか決勝に駒を進めることができた。

 裏を返せば、賞金ランキング1位でも楽に勝てるレースはなく、実力が拮抗していたと言える。決勝に臨む7選手の調子を見ても、久米の存在は霞んでいた。話題の中心は2日目にガールズケイリン史上最速で通算500勝を達成した児玉。初日、2日目とも圧倒的な強さで1着に入り、弱点を見つけるのも苦労するほどの好調ぶりだった。さらに2日間とも1着で決勝に進んだ石井寛子と山原さくらも、自信がみなぎっており、充実感を漂わせていた。

 そんな状況であっても、久米はまったく諦めていなかった。

「以前なら負けても次に向けて練習して頑張ればいいかと考えていましたが、今はこんな立場ではありますが、勝ってやるという気持ちを持って挑みました」

 久米はスタート直後こそ後方に下がるも、途中で2番手に入り込むなどして、虎視眈々と上位を狙った。そして最終周回で児玉が加速したところですぐに追走し、2番手につけた。これは久米が最も望んでいた状況で、「絶好の展開で緊張のあまり脚がガクガクしていた」というほどの好位置。バックストレッチでも児玉に離されないようについていった久米は「ゴール前で勝負したいと考えていた」と、第4コーナーで一気に抜きにかかり、見事決勝線(ゴールライン)をトップで切ることができた。



決勝線に向けて疾走する久米(緑・6番車)

「お祭りのような歓声をいただけた」と久米は満面の笑み。決勝出場選手のなかで最も若く、全21選手のなかでも2番目に若い23歳の久米が、持ち前の勝負強さを発揮し、ガールズケイリンフェスティバルで初の栄冠に輝いた。

【ガールズグランプリも視野に】

 久米は昨年まで特別レースで優勝した経験はなかったが、今年に入って2度の頂点に立った。また賞金ランキングも昨年は15位だったが、今年は現在首位。昨年の獲得賞金13,740,400円をすでに抜き、17,752,000円と2位に500万円近い差をつけて独走状態に入った。

 この好調の要因を「いろんな人のアドバイスをたくさん試して少しずつかみ合ってきた」と語る。久米の父・康徳氏は元競輪選手で現在日本競輪選手養成所の教官。そんな父に疑問に思ったことはすぐに聞いているという。また現在はナショナルチームの練習にも参加させてもらっており、さまざまな意見を聞ける環境に身を置いている。さらに、柔軟な気持ちで人の言葉に耳を傾けることを大切にしているという姿勢も、彼女の成長を後押ししている。



ガールズグランプリ2023への意欲も語った

 狙っていたGⅠ開催のパールカップで児玉の後手を踏み、実力差を痛感することはあったが、その差も「縮まっていると思う」と手ごたえを掴みつつある。「今年はいい結果を出しているし、去年より成長している」と右肩上がりの状態を実感できている。

 この好調を維持していけば、ガールズグランプリ2023への出場も見えてくる。本人もすでに意識しており、「グランプリでは出場するだけで終わらず、しっかりと優勝を狙えるように準備したい」と意気込みを語る。

人気・実力ともに申し分のない久米。まだ発展途上の彼女が、これからのガールズケイリンを引っ張る存在になっていくのではないだろうか。

【Profile】
久米詩(くめ・うた)
1999年9月3日生まれ、京都府出身。高校まで硬式テニスに励み、卒業後に競輪学校(現:日本競輪選手養成所)に入学。2019年7月にデビューし、同年10月に初優勝を飾る。2020年にはデビュー2年未満の選手で競うガールズ フレッシュクイーンで優勝。2021年に初めて特別レースのガールズケイリンコレクションに出場し、2023年5月の同大会で初優勝。7月のガールズケイリンフェスティバルでも栄冠を手にした。