イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の女子シングルス準々決勝。 ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)の母は、微笑んでいた。彼女は、37歳の娘が、10度目のウィンブルドン準決勝進出を果たすのを目…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の女子シングルス準々決勝。

 ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)の母は、微笑んでいた。彼女は、37歳の娘が、10度目のウィンブルドン準決勝進出を果たすのを目にしたところだった。それらすべてが、少し信じがたいことでもあった。

「彼女は、『自分の仕事が大好き!』と言うの。本気でそう思っているのよ。彼女はある意味で、ボクサーのようなのだと思うわ。人々は、彼女は年をとりすぎているから、もうやめるべきときが来たのだと考えている。ところが、彼女はリングに戻り続けるの。そして、かなりうまくやっているようだわ。これは本当に驚くべきことよ」

 ビーナスの母オラセーン・プライスは、雨のために屋根を閉じたセンターコートから去る前に、こう言った。

 エネルギーを消耗する病に対処しながらも、30代半ば過ぎに、キャリアの復活を謳歌しているビーナスは、8本のエースを産んだ強力なサービスを放ち、リターンとコートカバーリングの能力で相手を圧倒すると、全仏チャンピオンのエレナ・オスタペンコ(ラトビア)に6-3 7-5で打ち勝った。彼女はオールイングランド・クラブ(ウィンブルドン)での6度目のシングルス・タイトルに向け、また一歩近づいた。

「大会は人を成長させ続ける」とビーナスは言った。「大会にかかわり続けたかったら、試合を追うごとに、よりよくなっていかなければいけないわ」。

 どういうわけか、37歳にしてビーナスはそれをやってのけた。これは彼女にとって20回目のウィンブルドンでの100番目の試合だ。このグラスコート大会で彼女は最初のトロフィを2000年に獲得した。そして今、彼女は3試合連続で、1997年生まれの選手を倒した。1997年は彼女がグランドスラム大会でデビューを遂げた年だ。

「初出場は20年前?」と、プライスは目を見開き、笑いながら言った。「本当にずっと前のことね」。

 とはいえ、これは目新しいことというわけではない。ビーナスはここ6度のグランドスラム大会のすべてで4回戦に進出した唯一の女子プレーヤーであり、いま彼女は、この2年で3度目の準決勝に進もうとしている。彼女は昨年のウィンブルドンでもベスト4入りし、1月の全豪オープンでは決勝で妹セレナに敗れていた。

「彼女の走力が落ちた?」とビーナスのコーチ、デビッド・ウィットは言った。「私の目には、かなりいいように見えるけどね」。

 ビーナスは2011年に、自分がシェーグレン症候群と診断されたことを明かした。これは活力をしぼりとり、関節痛を引き起こす、自己免疫疾患の一種である。時間が経つにつれ、特にグランドスラム大会での度重なる1回戦負けのあとには、彼女が引退するのでは、との問いが横行した。しかし彼女は進み続け、ここ最近は成功をおさめており、もし今週優勝するようなことになれば、6年ぶりに世界ランキング・トップ5に返り咲くことになる。

「私はいつもトライし続けたいと感じていたの」とビーナスは言った。彼女はこの日、時速110km程度のオスタペンコのセカンドサービスに対して、繰り返しつけ込んだ。「私がやりたいと感じていたのは、それだけだった」。

 彼女にとって9度目のウィンブルドン決勝進出のために、第10シードのビーナスは木曜日、第6シードのジョハナ・コンタ(イギリス)に勝たなければならない。コンタは1978年に準優勝したバージニア・ウェード以来の、ウィンブルドンにおけるイギリス人準決勝進出者となった。

「間違いなく年齢は論点ではないと感じているわ」と、コンタはビーナスについて言った。「彼女は素晴らしいチャンピオンよ。私はすごく謙虚な気持ちを覚えているし、ふたたび彼女と同じコートをシェアすることに、すごくわくわくしている」。

 1977年ウィンブルドン優勝者のウェードがロイヤル・ボックスから見守る中、コンタは第2シードのハレプを6-7(2) 7-6(5) 6-4で破り、ハレプがナンバーワンとなることを阻んだ。この試合の結果、2回戦ですでに敗れていた第3シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)が、4回戦負けした第1シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に代わり、来週のWTAランキングで1位となることが決まったのだ。

 そのほかの準決勝は、第14シードのガルビネ・ムグルッサ(スペイン)と87位のマグダレナ・リバリコバ(スロバキア)という顔合わせになる。

 2015年ウィンブルドン準優勝者で、2016年全仏優勝者のムグルッサは、第7シードのスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)を6-3 6-4で倒した。

 2008年以来、もっともランキングの低いウィンブルドン準決勝進出者となったリバリコバは、第24シードのココ・バンダウェイ(アメリカ)を6-3 6-3で退けた。この試合は、第2セット2-2となったところで驟雨のため中断され、1番コートから、屋根を閉じたセンターコートへ場所を移して終えることになった。

 リバリコバは、これ以前の35回のグランドスラム大会出場経験の中で、一度も3回戦以上に進んだことはなく、その中には2008年から2014年まで連続7回のウィンブルドン1回戦負けも含まれる。彼女は手首と膝の手術のあと、昨シーズンの後半を棒に振り、ランキングを400位以下にまで落としていた。

「本当に厳しいときを過ごしたわ」とリバリコバは言った。「そして今、私はここにいる。すべての努力が報われたのよ」。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「ウィンブルドン」で、全仏覇者のエレナ・オスタペンコ(ラトビア/右)を倒し、大会10度目となる準決勝進出を決めたビーナス・ウイリアムズ(アメリカ/左)(撮影◎小山真司/テニスマガジン)