17歳の高校3年生トリオが躍動し、ワールドカップに弾みをつけた。 7月8日(土)、神奈川県・小田原市の城山陸上競技場で、「サクラフィフティーン」こと15人制のラグビー女子日本代表(世界ランキング14位)が、香港代表(同23位)とアジア…

 17歳の高校3年生トリオが躍動し、ワールドカップに弾みをつけた。
 7月8日(土)、神奈川県・小田原市の城山陸上競技場で、

「サクラフィフティーン」こと15人制のラグビー女子日本代表(世界ランキング14位)が、香港代表(同23位)とアジア選手権の1試合目を戦った。この試合は、8月9日にアイルランドで開幕する女子のラグビーワールドカップ(W杯)に向けた、国内最後の試合となった。




8日の試合に出場した(左から)小西、津久井、加藤の女子高生3人

 ワールドカップメンバー28名(プラス2名のバックアップメンバー)は30日(日)に発表されるため、15日(土)のアウェーでの試合を含めたこの2試合は、セレクションマッチという位置づけもある。そんな大事な試合に17歳の高校生3名がベンチ入りし、後半途中から出場して58-0の快勝に貢献した。

 実力でメンバー入りを勝ち取ったのは、スクラムハーフ(SH)の津久井萌(東京農業大二高3年)、プロップ(PR)の加藤幸子(中部大春日丘高3年/名古屋レディース)、ロック(LO)の小西想羅(そら/国学院栃木高3年)だ。

 3人の中で最もワールドカップに近いのは津久井だ。ボールさばきのよさに有水剛志HC(ヘッドコーチ)が惚れ込み、昨年11月のW杯予選では、16歳で9番をつけて代表デビューを果たしてW杯出場権獲得にも寄与した。さらに、6月の欧州遠征でも3試合(うち1試合先発)するなど、17歳ながらバックスの中心選手のひとりへと成長した。

 今回の香港との試合にも後半10分から出場。得意の球さばきだけでなく、SHの位置からの正確なハイパントを何度も蹴り、さらに、大きな相手の上半身にタックルして倒すなど非凡なところを見せた。津久井本人は「練習していたキックはいい当たりでした。状況判断はまだまだ」と述べたものの、有水HCは「野田夢乃(立正大2年/アルカス熊谷)といい意味で競争している。今日のゲームに関しても、津久井のいいところが出た」と手放しで褒めた。

 5歳でラグビーを始めてからSH一筋。身長152cmとチーム最小の津久井が憧れるのは、男子の日本代表で、初のスーパーラグビープレーヤーとなったSH田中史朗だ。パナソニックワイルドナイツは群馬県太田市に練習場を構えるため、「地元が同じ(群馬)ということもありますし、田中選手のようになれるように頑張ります!」と笑顔を見せた。

 一方の加藤と小西の2人は、嬉しい日本代表のデビュー戦となった。2人とも昨年11月のW杯予選メンバーに選ばれていたが、試合に出場することは叶わず、6月の欧州遠征はケガのため参加できなかった。そのため、この試合が2人にとって初の国際試合となった。

 共に体幹が強く、タックルやボールキャリアの能力が高いFWの選手で、ほぼ試合が決まった後半26分から出場した。PRやLOは、スクラムやラインアウトといったセットプレーを安定させることが大きな仕事のひとつだが、有水HCは「セットプレーはなかなか日本代表の試合以外で経験することはできませんが、(加藤と小西の2人は)代表の合宿などで経験を積めました。(目標とする)W杯ベスト8という意味ではレベルアップしないといけないものの、一定のスキルは体現できたと思います」と及第点を与えた。

 しかし、初キャップを果たしてチームは快勝したにもかかわらず、加藤と小西に笑顔はなかった。

 スクラムの要である右PRとして出場した加藤は、初めての国際試合で気負ってしまった部分もあったようで、「早く押してしまう反則を取られてしまったし、(ミスが多かった)ラインアウトも課題です」と振り返った。小西も「短い時間だったので、自分のプレーが出し切れなかった。ディフェンスの上がりやセットするスピードを早くしたい」と、十分に力を発揮できなかったことを反省し、次戦での奮起を誓った。

 昨年のリオデジャネイロ五輪から7人制ラグビー(セブンズ)が正式に採用され、「サクラセブンズ」と呼ばれた女子7人制日本代表に世間の耳目が集まった。一方で、女子も男子同様に、7人制だけでなく15人制でプレーする選手も多い。そんな女子ラグビー選手にとって、1991年から行なわれているW杯は、オリンピックと並ぶ大きなターゲットとなっている。
 柔道やソフトボールの経験もある164cm、78kgの加藤や、166cm、77kgで同じく柔道もやっていた小西は、運動量やスピードの求められる7人制よりも15人制向きの選手といえよう。実際に、2人とも

「(タックルなど)コンタクト(身体的接触)がたくさんできる15人制が好き」と話している。また、津久井も「自分のパスでトライにつながったら嬉しいので、今は(7人制よりも)15人制の方が楽しい!」と声を弾ませる。

 3人がなぜ、17歳ながら日本代表になれたのか──。もちろん、個々の能力とラグビースクールでの鍛錬によるところも大きいが、3人とも現在通う高校で、激しいコンタクト以外は男子ラグビー部員と練習している影響も多分にある。しかも、それぞれの高校は「花園」こと全国高校ラグビー大会の常連校であり、指導面でも恵まれている。
「小さい頃から男子と一緒に練習をやっていますが、スピードの面でも全然違います。世界を意識するにあたって、男子部員とやれているのはありがたい。FWのスキル面は(元日本代表の)浅野(良太)先生に教えてもらっています!」(国学院栃木高の小西)

 8月9日に開幕するW杯に4大会ぶりに出場するサクラフィフティーンは、予選プールでフランス代表(世界ランキング4位)、アイルランド代表(同5位)、オーストラリア代表(同6位)と対戦する。3人がW杯最終メンバーに残ることができるかは分からないが、17歳の若い力が台頭すれば、競争が増して選手層が厚くなり、チームの活性化につながるはずだ。
「先輩が多くて、いろんな声が聞こえるのでやりやすいです。出場したら、チームにいい流れができるように最初から全力でやりたい」(津久井)
「年下が頑張って、チーム全体の底上げしていきたい」(加藤)
「尊敬はしつつ、遠慮はせずに先輩を追い越せるようになりたい」(小西)

 このように意気込む3人は、サクラフィフティーンが目標に掲げるベスト8進出の原動力となれるのか。17歳の高校生トリオが、アイルランドの地で世界へ羽ばたくために前進を続ける。