スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額215万2690ユーロ/クレーコート)の準決勝で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)は第6シードのブノワ・ペール(2…

 スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額215万2690ユーロ/クレーコート)の準決勝で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)は第6シードのブノワ・ペール(22位/フランス)を6-3 6-2のストレートで下し、3年連続の決勝進出を決めた。

 錦織は24日の決勝で、第1シードのラファエル・ナダル(5位/スペイン)と対決する。錦織が優勝した2014年と2015年の大会ではナダルが決勝前に敗れていたため、同大会でのふたりの決勝対決は初となる。

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 フォアハンドのリターンが沈み、ペールが両足の間から打ったトリックボレーをネットにかけた瞬間、錦織は試合終了の握手をするため、そのまま軽やかにネットに走り寄った。

 終わってみれば、この大会のここまでの歩みで、もっとも危なげない試合だった。その印象の理由は、特に第1セット、錦織のサービスゲームが脅かされることが、ほとんどなかったためだろう。そして反対に錦織のほうは、たびたびブレークチャンスを手中にした。

 「今日はリターンがよかった。あれだけブレークできたのもリターンの調子がよかったおかげ。相手のファーストサービスがあまり入っていなかった中で、しっかりセカンドサービスを攻めて有利に試合を進めることができた。それに加えて自分のファーストサービスの確率がよかったこと。彼のリターンがいいことも知っていたので、なるべくファーストサービスを入れてプレーするようにした」と試合後、錦織は勝因を分析した。

 互いにサービスをキープし、2-2から迎えたペールのサービスゲーム、ドロップショットの切り返しと、2本のいいリターンのおかげで、錦織はこの試合、最初のブレークポイントをつかむ。15-40からサービスエースで1ポイントを返されたが、次にペールがドロップショットをネットにかけ、錦織は力まずしてブレークに成功。そして5-3からの第9ゲームでは、錦織のバックハンドのダウン・ザ・ラインのリターンエース2本と、ペールの2本のダブルフォールトがあいまって、2度目のブレークが実現した。

 「いくつかの厳しい局面もあった。例えば、第2セットの2-0から彼がカムバックし始めたとき。彼はいいリターンを入れ始め、よりアグレッシブになっていた」と錦織が言ったように、試合の残りにまったく波風がなかったわけではない。第2セットで錦織がストロークのウィナーとパッシングのエースによって、第2ゲームで早々にブレークを果たしたあと、ペールはネットに出てプレッシャーをかけ始め、即座のブレークバックに成功した。

 しかし、ペールの反撃は真の脅威となるにはあまりに断続的すぎた。続く自分のサービスゲームで攻撃的ないいプレーを見せつつも、ミスすべきではない場面で唐突にミスをおかし、自らゲームを献上した。

 錦織が5-2リードからのペールのサービスゲームでは、ドロップショットあり、パッシングあり、ボレーあり、アンフォーストエラーありの華やかなプレーで会場を沸かせたが、それは必ずしもゲームに直結するプレーにはならなかった。最後はペールがセカンドサービスからネットをとると、錦織が沈めてきたフォアハンドのリターンを股下からボレーし、これがネットにかかった瞬間、錦織の3年連続の決勝進出が決まった。

 「昨日より、いいテニスができていた。自分で攻めてポイントを取れていたし、(相手の弱点の)フォアハンドだけをつくのではなく、両サイドにしっかり振り分けてプレーすることができた。今日もこの相手にこのスコアで勝てたというのは、サービス、リターン、ストロークと、全部がしっかりとできている証拠だと思う」と試合後の錦織は満足感を覗かせた。

 一方のペールは試合後、悪びれる様子もなく、「ああ、あのマッチポイントは、いいトライだっただろう?(笑) 最後のゲームでは結構いいショットが出たね。試合中、ちょっとストレスを感じていたので、ああやって少しリラックスしようとしたんだよ。トリッキーなショットはうまくいったよ。肝心な試合には負けてしまったけどね」と笑顔で話した。

 昨年、錦織に2勝していたペールだが、勝った試合との違いについては「彼のリターンがよく、僕の側は今日、望んでいたほどいいサービスを入れることができなかった。そこで違いが生まれたと思う」とし、冒頭の錦織の見解に同調した。

 「僕のサービスがよくなかったから、彼は僕のセカンドサービスをアグレッシブに攻めてきた。それに彼は世界4位(※実際には現在6位)なんだから、ときどき彼が僕を倒したって、別に不思議じゃないよ。彼には昨年2度勝ったけれど、USオープンでは5セット、東京(楽天ジャパンオープン)では3セットと、決して楽に勝ったわけじゃなかったしね。今日は彼のほうがいいプレーをしたってことだよ」

 反対に、より真剣な面持ちで錦織について話したのは、第10シードのフィリップ・コールシュライバー(ドイツ)を6-3 6-3で下して決勝に進出した、ラファエル・ナダルだった。ナダルは試合後、決勝の相手を次のように評価した。

 「錦織は倒すのが難しい相手だ。俊敏で動きがよく、(コート内に踏み込み、早いタイミングで打つので)ポイント間に多くの時間を与えてくれない。彼は今季、間違いなくいいプレーをしている。メンフィスで勝ち、インディアンウェルズでもいい大会を送り、マイアミ、そして今ここバルセロナで決勝に至ったわけだからね。彼はまた、世界最高峰の才能を持つ選手のひとりでもある。決勝は厳しい戦いになるだろう」

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)