7月9日に、J2の頂上対決が実現した。首位のFC町田ゼルビアと、2位の東京ヴェルディが激突したのだ。会場となった国立競…

 7月9日に、J2の頂上対決が実現した。首位のFC町田ゼルビアと、2位の東京ヴェルディが激突したのだ。会場となった国立競技場には多くの観客も入り、試合は盛り上がった。この緊迫の一戦のポイントを、サッカージャーナリスト・後藤健生が探る。

■東京Vの逆襲

 こうして、町田が圧倒的に有利な展開となったのだが、後半に入って東京Vがさらに攻撃の圧力を高めてチャンスを作り始める。

 大きな転機となったのは、66分に新井悠太が投入された瞬間だ。

 前橋育英高校出身の新井は東洋大学在学中だが、特別強化指定選手として東京Vに加わり、4日前のV・ファーレン長崎戦(第24節)でJ2リーグデビュー。そして、その試合で早くもゴールを決めていた。

 その新井が、ドリブルで町田のペナルティーエリアの深い位置まで進入し、さらに自らもシュートを狙って町田のゴールを脅かし始めた。

 さらに、東京Vはそれまでインサイドハーフとしてプレーしていた染野唯月のポジションを上げてセカンドストライカーとする。

 そして、73分に右サイドバックの宮原和也のクロスを染野がヘディングで豪快に決めて1点を返すと、83分には切れ込んだ新井のクロスを再びニアに走り込んだ染野が決めて、あっと言う間に同点に追いついたのである。

 鹿島アントラーズ所属の染野は昨シーズンも期限付き移籍で東京Vでプレーし、今シーズンは鹿島に戻っていたが、再び東京Vに期限付き移籍を決めたばかり。町田戦が今季のJ2リーグ初出場だった。

 つまり、新井と染野の新戦力2人が東京Vの決め手となったのだ。染野の決定力というのは、これはもうJ2レベルを大きく超えている。

■難しかった交代のタイミング

 ただ、2人とも新戦力だっただけに「どのポジションで、どのタイミングで起用するのがベストなのか」、城福浩監督にとっても難しい判断だったことだろう。

 それでも、流れの中で交代やポジション変更という形で“新戦力”をうまく生かしたことが鮮やかな同点劇につながった。

 一方、町田の黒田剛監督は染野に1点目を決められた直後にカルロス・グティエレスを投入してスリーバックに変更した。「ミッチェル・デュークの出場停止で守備の局面で高さが足りなかったからだ」と言う。

 もちろん、これは結果論なのだが、もし、もう5分ほど早くスリーバックに切り替えていれば、東京Vの同点劇はなかったかもしれない。

 両監督の交代カードの切り方と、そのタイミングのズレが生んだ同点ゴールだったとも言える。

 町田には「守備が堅い」というイメージが強いはずだ。「『ウノゼロ』の勝利を目指している」と、黒田監督自身も語っている。

 実際、第24節までの失点数はわずか15で守備力の高さは数字にも表れていた(2番目に失点が少なかったのが東京Vで、第24節までで16失点)。

 ただ、町田は開幕から第7節までは7試合で失点がわずかに1と、文字通り堅守が光っていたのだが、その後、第24節までの17試合ではクリーンシートは5試合しかない。2失点する試合も次第に増加しており、7月1日の第23節では最下位に低迷する大宮アルディージャ相手に最後は3対2と逆転したものの、大宮にいきなり2点を奪われてしまって慌てる場面もあった。

 そして、5月13日に行われた味の素スタジアムでの東京Vとの対戦では1対0と東京Vを完封していたが、国立での2戦目では2点を失って引き分けに持ち込まれてしまったのだ。

■町田に見え始めた方程式の綻び

 つまり、堅い守りで失点を最小に抑え、エリキとミッチェル・デュークという強力ツートップとセットプレーを生かして勝利するという町田の(黒田監督の)勝利の方程式に、最近は綻びが生じ始めているようだ。

 相手を研究し、相手の良さを消して相手の嫌がることをする……。そんな、勝負にこだわった試合が多いのはJリーグの、いやJ2リーグの大きな特長でもある。町田の守備の弱点を突いて中盤での競り合いを避けながら、サイド攻撃に徹する。そのような工夫を必ず相手は仕掛けてくるのだ。

 従って、勝点10の差をつけて首位を独走している町田だが、このまま一気に優勝まで走り切るのはやはり難しいのかもしれない。

 細かなポジション取りについての約束事が守備の堅さにつながっているのだが、当然、そのためには運動量も要求されるので、これからの夏場をどうやって乗り切るのか。それも、大きな課題となるだろう。

 ただ、その町田を追う2位グループは大混戦となっていて、圧倒的な強さを持つ挑戦者が不在なのは事実。東京Vにしても、大事な町田との首位決戦を前に、第24節では新井悠太が一矢を報いただけで長崎に完敗してしまっていた。

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