RIZINファイター・皇治がCEOを務める団体NARIAGARIと、総合格闘技団体DEEPとの対抗戦「DEEP vs NARIAGARI」(7月23日、東京・ニューピアホール)が決定し、6月16日の記者会見で発表された。 対抗戦の内容は、…

 RIZINファイター・皇治がCEOを務める団体NARIAGARIと、総合格闘技団体DEEPとの対抗戦「DEEP vs NARIAGARI」(7月23日、東京・ニューピアホール)が決定し、6月16日の記者会見で発表された。

 対抗戦の内容は、MMA3試合とキック2試合の計5試合。この対抗戦はDEEPの公式戦の中で行なわれ、大会のメインカードは北岡悟vs大木良太で決定している。試合はDEEPのケージが使用され、ニュースアプリ『SmartNews』で無料ライブ配信される予定だ。

 16日の会見で、自身がリングに上がる可能性も口にした皇治。その後の単独インタビューでは、対抗戦の狙いとNARIAGARIの今後、自身のMMA転身について語った。



DEEP vs NARIAGARIの会見に臨んだ皇治

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――NARIAGARIは vol.2を今年9月に開催することを発表しています。その前にDEEPとの対抗戦を挟むことになった経緯を教えてください

「いきなり決まった感じです。もともとは俺がDEEPに出る予定だったんですよ。イチからMMAができたらいいなと思って。そんな時に、お世話になってるRIZINとの話でそれがなくなって。でも、すでにDEEPは会場を押さえてくれていたんですよ。じゃあ、その会場で何か一緒にできたらということで、ウチ(NARIAGARI)とDEEPで勝負しましょうとなったんです」

――NARIAGARIに出ている選手たちに、皇治選手からアドバイスすることもあるんですか?

「うちのジムに練習にくる時などに話すこともありますよ。エンタメの部分、大会の盛り上げ方、といった部分も教えますね。いつも言っているのは、『アンチを恐れるな』ということ。批判を恐れて縮こまっているようではプロではやっていけない。プロとして表に出るなら、批判はつきものやから。

 それをマイナスに考えることはないし、全部背負えるヤツだけが残る世界だと思う。それがしんどいならハナから出ないほうがいい、この世界で飯食うのは大変な事ということはずっと伝えています。『とことんやりきれ』と」

――対抗戦の記者会見に臨んだNARIAGARIの選手たちとは、会見後に何か話をしましたか?

「会見が終わって、満足感に浸っている選手もいましたし、後悔や反省している選手もいましたね。どちらにせよ俺が『いいな』と思ったのは、ああいう会見が大事だということを、みんなが理解していること。うまくいったかどうかはともかく、そういう意識を持って臨んでいることがよかったなと思います」

――反省している選手に対しては、どんな声をかけたんですか?

「そういう気持ちになるよなって(笑)。俺も、何回もそうなってきたから。そこは場数だと思うんです。会見も何回もやっていれば慣れていくと思いますし。いや、今でも俺は後悔しますね。『うわ~、あれ言っときゃよかった』とか(笑)。

 でもホンマ、そこも頑張らないとダメなんですけど......俺はRIZINでなかなか勝てなかったりして、『口だけ』とかいう人もいますけど、よく考えてください。俺は26歳からK-1に出て、今は34歳。知名度を上げ続けてきて、その後もこの世界に生き残っているということは、最低限の実力があると証明してこれたと思っているんですよね」

――「最低限の実力」という言葉の意味は、大きいですね。

「俺は実力が飛び抜けているわけでもないけど、最低限のことはやってきた。ISKAの世界のベルト(ISKA世界ライト級王者)、他の団体のベルトも2本(元TRIBELATEスーパーフェザー級王座、初代HEATキックルールライト級王座)も獲りました。そういう下積みをして、そこにエンターテインメントをプラスしていって。あとは、勇気を持っていた。K-1に違約金も払ってRIZINに移籍したり(笑)。

 目先のお金ばかり求めるんじゃなくて、先のことを考えてやっていくことが大事だと思ってます。だから、武尊選手や(那須川)天心選手じゃなくても、『ここまでなれる』ということを見せられているんじゃないかと思ってますし、これからももっと見せていきたい。MMAへの挑戦もそのひとつですね」

――話題が先行しすぎて実績がなかったらダメ、ということですね。

「ここ最近は、エンタメが流行りすぎていると思う。エンタメだけの選手って消えていってますよね。BreakingDownも入れ替わりが早いじゃないですか。『ちょっと名前が売れていたあの選手、どこ行った?』みたいな。そうなってるのは、実力が伴っていないということ、そこはNARIAGARIの選手にも強く言ってます。ポッと出て名前を売っても、一瞬の稼ぎで終わっちゃう。稼ぎ続けるには、最低限の実力をつけろと」

【朝倉未来のBreakingDownとの対抗戦は「全然あり」】

――今後、修斗やパンクラスといった、他のMMA格闘技団体との対抗戦や交流戦も考えていますか?

「いや~、今の俺の中ではDEEPが一番だと思ってるんで、現時点では考えてないですね」

――朝倉未来選手がCEOを務める「BreakingDown」との交わりを期待するファンも多いと思います。

「NARIAGARIは、さっきも言ったように実力とエンタメの両方を取りにいこうと思っているから、今回は実力を示す為にDEEPとの対抗戦をやる。そこでしっかり勝ったら、次はエンタメ。だから、エンタメ色が強いBreakingDownとの対抗戦は全然ありだと思いますよ」

――NARIAGARIが実力とエンタメの2つを手にした場合、その先にあるのは?

「日本ならRIZINとやるしかないですよね。それが俺の格闘技界への恩返しかなと。RIZINに知名度だけの選手を送っても、そこでつまんない試合をしたらRIZIN側が長持ちしなくなる。今はK-1からRIZINにくる選手が増えて、RIZINを盛り上げてますよね。実力もあってエンタメもわかっている選手たちが盛り上げてますけど、NARIAGARIでもそんな選手が育っていったらいいなと思います」

――対抗戦の発表会見では、皇治選手のサプライズ出場もあるとコメントしていましたね。

「DEEPの佐伯繁代表が『出場してくれ』と言ってくれて。自分が出ることで盛り上がるんやったらいいかな、とも思いつつ、やっぱりRIZINに出るまでは見せたくないっていうのもあるし。俺がMMAのグローブをして表に出る時には、本気の試合を見せたいですから。だからエキシビションとか非公式戦じゃなくて、ちゃんとMMAの公式戦に挑む姿を見せたいんです」

――会見で佐伯代表は、「上がりますよ」とおっしゃっていましたが?

「そら金になりますもんね(笑)。まだどうなるかわからないんですよ。佐伯さんも、いらんことばっかりしゃべるから!」

――そこはお楽しみに、という感じですね。NARIAGARIは、青木真也選手(元ONEライト級世界王者)が協力していますね。青木選手が協力してくれていると、大会の説得力が増している感じです。

「弟(=皇治が呼ぶ青木真也の愛称)は、NARIAGARIにすごく関わってくれている。『NARIAGARIでMMAをやりたい』とも言ってくれてますし、これからもどんどん手伝ってもらおうと思ってます(笑)。

 俺はこれまで立ち技だけやってたんで、MMAをやろうにも、試合をどう組んだらいいのかというところからわからなかった。そういうところで青木さんが協力してくれるという話があって。本当にありがたいですよ」

【格闘技は「体が滅びるまでやる」】

――NARIAGARIの最終目標はRIZINとのことですが、皇治選手自身の最終目標は?

「"マルコメ(皇治が呼ぶフロイド・メイウェザーの愛称)"ですかね(笑)。とにかく、自分の体が滅びるまでやろうと思ってます。ボロボロになってリングに上がれなくなるまでやるのも"美学"かなと。

 逆に昔は、26歳で引退するって決めてたんですよ。26歳でK-1に出られなかったら引退するって周りにも言ってました。そしたら、たまたま26歳でK-1に出られて、そこから続いて今に至るので、みんなのお陰でこうなれたから、みんなの前で闘えなくなるまでの自分を見せるのが、俺の宿命かなとも思ってます」

――身も心もすり減るまで闘い続けると決意した理由は?

「やっぱり今の生活というか、まだまだ稼がないと。まったく満足してないですし、ライバルはソフトバンクの孫正義さんなんで(笑)。まぁ冗談はいいとして、俺は格闘技界の選手としては、わりといい暮らしができるようになったと思うんですよ。ホントに格闘技のお陰なんで、今後は格闘技界に貢献できたら。それが闘い続ける理由ですね」

――皇治選手が達成したいことは、物質的なものではなく、より精神的なものなのかもしれませんね。

「そうかもしれないです。『仲間のためにダサく生きる』というのが、最近ハマってる言葉で。もっと仲間を裕福にさせたいんですよ。今の俺くらいの暮らしが仲間もできるようになった時には、俺自身はもっと上にいけるはず。そういう意味で、まだまだ足らんなと思ってます」

【プロフィール】
■皇治(こうじ)

1989年5月6日生まれ。大阪府出身。
日本拳法の師範であった父の影響を受け、4歳から始めた日本拳法、空手の大会でも好成績を残す。プロ転向後、初代HEATキックルールライト級王座、ISKA K-1ルール世界ライト級王座を獲得。2016年より主戦場をK-1に移して人気選手に。地元・大阪での2018年12月の大会では、メインイベントで武尊と壮絶な殴り合いを演じた。2020年7月、RIZIN参戦を発表。2023年4月の「RIZIN.41」で芦澤竜誠に敗れ、試合後の記者会見では「引退」を口にしていたが、その後、引退撤回とMMA挑戦を表明した。