■同じ轍は踏まないはずだった仙台だが… 前節の教訓を生かせなかった。 7月5日に開催されたJ2リーグ第24節で、ベガル…
■同じ轍は踏まないはずだった仙台だが…
前節の教訓を生かせなかった。
7月5日に開催されたJ2リーグ第24節で、ベガルタ仙台は清水エスパルスとホームで対戦した。伊藤彰監督が率いる仙台は、1日の「みちのくダービー」でモンテディオ山形に1対4の大敗を喫している。開始5分に自分たちのミスで先行され、追いかける展開のなかで大胆さを発揮しきれなかった。
主将のDF小出悠太は、「清水戦にはチームとして相当な思いで臨んだ」と言う。同じ轍は踏まないとの意識は強かったはずだが、この日も11分に先制されてしまうのだ。
19分にはまたもミス絡みで失点してしまう。自陣からのビルドアップで、小出がボランチへ斜めのパスを通そうとするが、これが相手FW北川航也へのパスになってしまうのだ。北川からMF乾貴士につながれ、絶妙なシュートで2点目を決められてしまった。
チームトップの6得点をあげているMF郷家友太、同2位の5得点を記録しているFW中島元彦がメンバー外の仙台は、2試合連続得点中のFWホ・ヨンジュンにFW山田寛人、MF氣田亮真らが絡んでいくが、相手陣内深くへ入り込めない。
前半のシュートは1本だけだった。それも、左CKからのヘディングシュートである。流れのなかから得点の予感が漂わないまま、ハーフタイムを迎えた。
■「1点取れば景色は変わる」のか
後半開始とともに、伊藤監督が交代カードを切る。ホ・ヨンジュンを下げて、MF遠藤康を投入する。しかし、次の1点目も仙台ではなく清水に入るのだ。54分、カルリーニョス・ジュニオにこの日2点目を決められた。
伊藤監督はその後も交代カードを切る。60分過ぎにはMF梁勇基とFW中山仁斗をピッチへ送り込む。
遠藤が中山の後方やサイドでボールを引き出すことで、前半よりも深い位置まで侵入できるようになった。しかし、清水は前節のV・ファーレン長崎戦で2対0から2対2に追いつかれたことを教訓として、守備の局面でスキを見せない。
チャンスは最終盤に訪れた。90分、遠藤がゴール正面ミドルレンジから左足を振る。バウンドしたシュートをGK権田修一がセーブすると、セカンドボールを中山が左足で狙う。しかし、ゴールマウスをとらえることはできなかった。
5分のアディショナルタイムが終了する直前には、右サイドからのクロスに梁が飛び込む。至近距離からのシュートだったが、バーを越えていった。直後、終了の笛が鳴り響いた。
試合後の伊藤監督は「ハーフタイムに先に1点取れば変わるという話をしましたけど、取られてしまったことで、そこでゲームの決着がついてしまった」と振り返った。選手たちの姿勢については、前向きに評価している。
「最後まで1点をもぎ取りにいこうという姿勢を見せてくれた。これは、まだまだベガルタ仙台は死んでねえぞ、というものを見せてくれたと思います」
取材エリアでマイクを向けられた遠藤は、「前節ダービーで負けて、みんなでホントに強い気持ちで臨んだのですが、いい結果を届けられず、申し訳ない気持ちです」と頭を下げた。サポーターについて問われると、「平日で、ナイターゲームで、雨が降って、これだけ多くのサポーターが来るチームはなかなかないと思う」と話した。そう話す表情には、サポーターへの申し訳なさがにじんでいた。
この試合に訪れた観衆は9124人だった。今節の全11試合で、ダントツの数字である。
試合前のウォーミングアップから、仙台のサポーターの声援はスタジアムに響いていた。先制されても、2点目を取られても、3点目を奪われても、終了の笛が鳴り響くまで、声援は途絶えなかった。
仙台はこれで5試合勝利なしとなった。順位は12位から13位に後退した。J1昇格プレーオフ圏との勝点差は「9」である。
伊藤監督は「次のゲーム、ひとつのゴールで景色が変わる。ひとつの勝利で雰囲気が変わると思います」と話す。このままボトムハーフが定位置になるのか。それとも、巻き返しをはかるのか。はっきりしているのは、J1昇格がどんどんと厳しくなっているということだ。