「ドリーム・オン・アイス」に出演した島田麻央●課題の表現力を高めるプログラム 6月30日〜7月2日にコーセー新横浜スケートセンターで開催された「ドリーム・オン・アイス2023」。 初日の開幕公演、前半第1部第9滑走者として登場した島田麻央(…



「ドリーム・オン・アイス」に出演した島田麻央

●課題の表現力を高めるプログラム

 6月30日〜7月2日にコーセー新横浜スケートセンターで開催された「ドリーム・オン・アイス2023」。

 初日の開幕公演、前半第1部第9滑走者として登場した島田麻央(14歳、木下アカデミー)は、レディー・ガガが歌う新ショートプログラム(SP)の『Americano(アメリカーノ)』を初披露した。

「皆さんに見てもらうことをすごく楽しみにしていたので、いい演技を見せられてうれしいです。お客さんもいて緊張する雰囲気のなかでも、すごく楽しめたのがよかったかなと思います」

 島田はそう話して笑顔を見せた。

 これまでの島田のプログラムとは雰囲気がまったく違う曲だ。振り付けは、元アイスダンスカナダ代表で、世界選手権は銀1銅2、グランプリ(GP)ファイナルを2回制したケイトリン・ウィーバー氏に依頼。「振り付けの先生にこの曲ならズボンのほうがいいと言われた」と、衣装は白いシャツに黒のパンツ姿だった。

 プログラム初披露の場でもあるこのドリーム・オン・アイスでは、まだ完成前でジャンプのレベルを落としていたり、ミスが出たりする選手が多い。

 だが、そうしたなかでも島田は「ジャンプも予定どおりに跳んだ」。フラメンコ風ギターの音色のなかで柔らかな動きで滑り出すと、最初のダブルアクセルを余裕を持って決める。そして、次に3回転フリップ+3回転トーループを跳び、最後の3回転ルッツは両手を挙げたジャンプで成功させる。3種類のスピンもスピード感あふれる回転でキレを見せる。ノーミスの演技だった。

「今日(6月30日)は表現力を見せるのがテーマだったので、それを意識して楽しくやれました。ステップも上半身の動きが入っているので、そこを見せたくて。そのステップでイメージしたのは強い女性で、彼氏に対しても少し上から目線というか、偉そうにしたり笑顔を見せたりして、『私は絶対に捕まえられないぞ』というような感じを表現したいと思っていました。

 ウィーバー先生は表現も一緒につけて教えてくれるので、自分も表現力を勉強できました。昨シーズンまでは表現といってもただ笑うだけだったけど、今季はにらむようなところもあるプログラムなので、笑顔とともににらむというのを教えていただいた。自分は表現をつけるのが苦手だったので、振り付けの練習はすごく難しかったです」

 この曲はウィーバー氏が選んだという。「怒っているところや笑顔のところを使い分けるのがテーマです」と島田は説明。滑り出しからの動きのなかでの両手の振りなど、これまでとは違った複雑でしなやかなものして、「挑戦」が伺えるプログラムだ。

●常に見据える将来の世界での戦い

 ジュニアデビューした昨季はジュニアカテゴリーの試合は全勝し、初出場だったGPファイナルと世界ジュニアでも優勝。特に世界ジュニアで出した224.54点は、シニアのイ・ヘイン(韓国)や坂本花織(シスメックス)に肉薄するシーズン3位の高得点だった。さらにシニア勢と戦った全日本選手権も初出場で3位と、資質の高さをアピールした。

 だが年齢制限の変更もあって、このあと3年はジュニアで戦わなければいけない立場だ。そんな島田は新シーズンの目標を、ユース五輪に出場すること、そして昨季からフリーに取り入れるトリプルアクセルと4回転トーループの精度を上げることだという。取材には冷静な話しぶりで、焦りは感じさせない。

 その先には世界ジュニア連覇という目標もあるが、ジュニアで過ごす時間も自分のスケートを着実に進化させていくための時間にしなければいけないと考えている。彼女の視野の先には、現状の世界での戦いだけではなく、いずれ復帰してくるはずのロシア勢の姿も見えているからだ。

 今はまだジュニアで実績を積み上げることを目標に設定するが、それも「シニアに上がった時に、世界でしっかり戦える力をつけておきたい」という気持ちが強いゆえだ。

 苦手意識のあった表現力の向上も含め、着実に実力を高めている島田。昼に行なわれた土曜日の第2公演と日曜日の第4公演では、転倒はしたものの冒頭のアクセルでトリプルに挑んだ。

 唯一のシニアとの真剣勝負の場でもある全日本選手権は、昨季の3位以上の結果を意識しているはずだ。そんな彼女は今季も、日本のシニア勢にとっては無言の脅威を与え続ける存在になりそうだ。