世界が認めるラグビー王国・ニュージーランドを代表する“オールブラックス”と、全英とアイルランドの一流選手が結束した誉れ高きドリームチーム“ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ”による、威信をかけた伝統の戦いは、引き分けに終わった。 1…

 世界が認めるラグビー王国・ニュージーランドを代表する“オールブラックス”と、全英とアイルランドの一流選手が結束した誉れ高きドリームチーム“ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ”による、威信をかけた伝統の戦いは、引き分けに終わった。
 1勝1敗で迎えた最終戦は、7月8日にオークランドのイーデンパークでおこなわれ、15-15でノーサイドの笛が鳴った。ライオンズは1971年以来のオールブラックス戦勝ち越しとはならなかったが、テストマッチ以外の戦いを含めて5勝2分3敗という成績で今回のニュージーランドツアーを終えた。

 最終決戦は序盤から緊張に包まれた。
 前半2分、オールブラックスの名キッカー、SOボーデン・バレットがポスト正面のPGを失敗。
 対するライオンズは12分、15フェイズを重ねてゴールに迫ったが、右へのパスをボーデン・バレットにインターセプトされて好機を逃す。黒衣軍はSOバレットをサポートしたCTBンガニ・ラウマペが力走して大きくゲインしたものの、赤いジャージーのCTBジョナサン・デーヴィスが追いつきトライを許さず、イーデンパークは早くも興奮のるつぼと化した。

 スコアボードが動いたのは14分だった。ライオンズの反則によりアドバンテージをもらって敵陣深くで攻めたオールブラックスは、中央のSOボーデン・バレットが右外にいた弟のFBジョーディー・バレットへクロスキックを放つ。身長196センチのFBバレットは空中戦に競り勝ってサポートに来ていた仲間の方へボールを落とし、拾い上げたCTBラウマペがインゴールに飛び込み、最初の得点が刻まれた。

 その後、ライオンズにPGを2本決められ1点差に詰められたオールブラックスだが、35分にはセットピースから得点。ラインアウト後にボールを回して、CTBラウマペからオフロードパスをもらったCTBアントン・レイナートブラウンが中央突破、そしてFBジョーディー・バレットへつなぎ、チーム2本目のトライが生まれた。20歳のFBバレットと24歳のCTBラウマペはともに、この試合が代表2キャップ目の新鋭。負傷者や出場停止処分を科された仲間の代わりにスターターとして抜擢され、指揮官の期待に見事応えた。

 12-6でハーフタイムとなる。

 追うライオンズは後半早々、WTBエリオット・デイリーが自陣から50メートル以上のPGを決め、3点差に詰めた。

 そして49分(後半9分)、オールブラックスのFLジェローム・カイノが相手LOアラン=ウィン・ジョーンズへの危険なタックルでイエローカードとなり、10分間の一時退出を命じられる。14人になったオールブラックスは、数的不利での戦いを余儀なくされ敗れた第2戦の悪夢がちらついたか。

 ライオンズはこの好機を逃すまいと、59分にCTBオーウェン・ファレルがPGを決め、12-12と追いつく。

 その後、15人に戻ったオールブラックスが66分にスクラムでPGチャンスを得て勝ち越せば、ライオンズは77分、ハーフウェイ付近中央で相手の反則によりショットチャンスとなり、ファレルがねじ込んで再び同点とした。

 そして、このあと、論争になりそうなシーンが生まれる。
 リスタートのキックオフ直後、ライオンズにノックオン・オフサイドの反則があったかに思われた。その通りなら、オールブラックスにPGの勝ち越しチャンスだった。しかし、レフリーは一旦はペナルティの笛を吹いたものの、冷静にTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で確認し、両主将にスクラムでの試合再開を告げる。

 残り時間、両チームは死力を尽くし、互いに譲らない。フルタイムの80分を過ぎてオールブラックスがゴール前右に迫ったものの、ライオンズが懸命に守って外に押し出し、直後、ノーサイドの笛が鳴ったのだった。

 約6週間におよぶツアーを戦い終えたブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの選手たちは、やがて解散を迎える。
 一方、オールブラックスの選手たちは各所属チームに戻ってスーパーラグビーの戦いを再開。そして8月19日からは、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)が始まる。