今季開幕から上々のスタートを切ったかに見えた湘南ベルマーレが一転、泥沼にハマっている。 湘南はJ1第18節、ホームにサ…
今季開幕から上々のスタートを切ったかに見えた湘南ベルマーレが一転、泥沼にハマっている。
湘南はJ1第18節、ホームにサガン鳥栖を迎えた一戦で0-6の大敗。これで直近のリーグ戦11試合で勝利がなく、その間の成績は5連敗を含む7敗4分けと、惨たんたるものだ。
シーズン序盤はひと桁だった順位も急降下。鳥栖戦に敗れたことで、ついには最下位へと転落してしまった。

サガン鳥栖に0-6と完敗を喫した湘南ベルマーレ
「選手は焦っているのかなというのは、立ち上がりにあった。(前半の)2失点ともいいことをしようとして、それがミスになって失点に直結した」
湘南の山口智監督がそう振り返ったように、特に前半は、勝利が遠い現状を象徴するかのような内容だった。
前半2分、自陣の深い位置で鳥栖のプレスを受けながらも前につなごうとしたボールを失い、最後はFW小野裕二に決められ、まず1失点。同30分には、右サイドでボールを奪われてカウンターを受けると、再び最後は小野に決められ、あっさりと追加点を許した。
さらに言えば、後半開始直後の49分にも、自陣でパスをつなごうとしてボールロスト。ドリブルで独走されたMF長沼洋一をペナルティーエリア内で倒してPKを献上してしまい、やらずもがなの3点目をいともたやすく与えている。
つまるところ、マイボールをつないで攻撃しようとするところで、次々にパスミスが発生。それがことごとく失点に直結してしまったわけだ。
「選択肢を増やすなかで判断させて、プレーさせるというのが、僕のやり方。答えを伝えていないと言えば、伝えていない」
そう語る山口監督の下、今季の湘南は残留争いに甘んじるチームから一段階レベルアップすべく、うまくチーム作りが進められているように見えた。
従来の湘南は、運動量とスピードで相手を上回り、ボールを奪ったら相手ゴールへ向かって一気に攻める。ボールを失っても、すぐに守備に切り替えて、また奪い返せばいい。そんな愚直なスタイルが、よくも悪くも"らしさ"だった。
だが、今季の湘南は、持ち前のハツラツとしたプレーを失うことなく、それに加えて、落ち着いてボールを動かしながら局面を打開し、相手ゴールへと向かうシーンを確実に増やしていた。シーズン序盤、今季の湘南はひと味違うと感じられたのは、そうした新たな一面が見えたからだ。
しかし、物事には表があれば、裏がある。
プレーの選択肢を増やし、そのなかで最良の判断をしようと思えば、当然、相応のリスクを負うことなる。仕方のないこととはいえ、「僕が言いすぎて、(選手が)意識しすぎてしまうという反省は常々ある」という指揮官の言葉どおり、リスクが大きくなり過ぎることでミスが増え、自分で自分の首を絞めているというのが、今の湘南なのだろう。
山口監督が口にした「"トライ"と"無謀"の整理をしないといけない」という言葉が、湘南の現状を端的に表している。
とはいえ、湘南の厳しい現状にも、明るい兆しがまったく見えていないわけではない。
大敗を喫した鳥栖戦を振り返っても、湘南には数多くの決定機があったからだ。FW町野修斗も、「決めるところを決めていたら、逆の展開もありえた」と話していたが、その言葉は敗者の強がりとばかりは言い切れない。
「僕らはプロで、結果がすべてだが、(負けてもなお)やり続けないといけないポジティブな部分は絶対にあるし、それを身につけなければいけないというものは必ずある。そういう意味では(チャンスを数多く作っていることを)ポジティブにとらえたい」
そう語る山口監督が具体的に挙げたのは、こんなシーンだ。
「大橋(祐紀)が決定機を迎えて(シュートを打ち)、山田(直輝)が横で『(パスを)出せ!』と怒っていたが、そういうのが出てきたのはいいことだと僕自身は思っている」
山口監督が慎重に言葉を選びながら、「ただ、そういうの(チャンス)を外していると、ゲームのなかではやっぱり流れがある。守備の仕方とかっていうところでは現状が出てしまっている」と話す様子からは、結果として大敗を喫している以上、単純に前向きにはなりにくい。そんな逡巡が見てとれる。
だが、試合後の一連の話を聞く限り、指揮官は必ずしも試合内容を悲観的にとらえているわけではなさそうだ。
実際、試合を見ていても、致命的なパスミスが続いたのは確かだが、うまくパスがつながり、鳥栖のプレスをはがした時には、相手ゴール前まで入っていくことが何度となくできていた。そんな湘南の戦いぶりに、スコアほどの悪い印象はなかった。
ゲームキャプテンを務めたDF杉岡大暉も、「ゴール前だったり、決め切るところだったり、勝負のキモの部分で差が出た。いい形も作れていたし、やっている僕たち自身ももどかしさはすごくある」と言いながら、こう手応えを口にする。
「(第11節の)柏レイソル戦(1-2)だったり、5連敗の前半の時のような、中途半端で一番弱かったというか、よくなかった時期は越えていると思う。あの時は『本当につないで大丈夫なのか?』『蹴ってもいいのか?』という判断が曖昧になっていたが、今はポジティブにやれている部分もたくさんある。前には進んでいると思う」
内容は悪くないのに勝てないのは、ある意味で、内容が悪くて勝てないよりもタチが悪い。
いわば成長途上ゆえの痛みを味わっている湘南にとっては、だからこそ、早く結果がほしいところだろう。
ひとつの勝利で潮目は変わる。その可能性は十分にある。